第56話 試行
「ロ、ロボット・・・?」
ニーナが困惑した表情でつぶやく。
一瞬静寂が流れたものの、レオは我慢することが出来なかった。
「・・・ぷっ。ふふっ。あははははっ」
「ちょっと」
「すいません。まさか、ニーナがそんな冗談を言うとは思わなかったので」
レオは謝りながらも、いまだ口元はカーブを描いている。
「冗談じゃない」
「っと。失礼しました」
ニーナの冷たい瞳に、レオの顔がいつもの調子を取り戻す。
「造られたと言っても、そういうことではなくてですね。バーサーカー計画、というのを知っていますか?」
「バーサーカー計画?」
「ええ。昔、この国の軍の一部で行われていた残酷な計画です。孤児を集めて、幼いころから戦闘ばかりを教え込む。つまり戦闘人間を造ろうというわけです。余計な感情がなければ、いざという時、躊躇しなくてすみますからね」
「そんなの、王様が許すわけ・・・」
レオはいつの時代かを正確には言わなかったが、その時の国王が誰にせよ、秩序と平和を愛する王族がその計画を許すわけがない。
「だから、一部だと言ったでしょう?」
その言葉は、王族の関与しないところで、秘密裏に行われていたことを指していた。
「その計画に副隊長が?」
「今日はよく喋りますね、ニーナ。その通りです。私の心には、感情がないんですよ。いざという時、仲間が相手でも非情になれるようにね」
レオは笑顔で剣の先を仲間であるニーナに向けた。ニーナは微動だにせずに、レオを顔を見つめ返す。
「副隊長に私は殺せないよ」
「そんなに自分の腕に自信がありますか?」
レオはニーナの腰に下げた銃をうかがう。ニーナに戦う意思は見られない。
「違う。仲間だから」
「私の話を聞いてました?」
「聞いてた。だから、知ってる」
「どういう・・・」
「コアで過ごした時間は、造られたものじゃない」
レオの眉が少しだけ上がる。
「あなたが、戦闘に必要なものだけを向けられて育ってきたとしても、コアに入ってから向けられたものは、それとは正反対のものだと思う。その中で、あなたの中に感情が育たないと思わない」
「ニーナ・・・」
レオがつぶやいたと同時に、部屋の扉が開いた。
「おーい、レオいるか? って、お前、また!」
部屋に入ってきたセッカは、レオがニーナに剣を向けている状況を見て目を見開く。
「ふっ。くくっ。あはははっ! 良いタイミングで入ってきますね、セッカさん。ニーナ、あなたの勝ちです」
レオは大笑いをしながら、剣を下げた。それを見たセッカはため息を吐く。
「別に、勝ち負けの話じゃない」
「ったく、何してんだよ。仲間同士で」
セッカが二人のもとに来て、レオを小突いた。
「お前、試すようなことはやめろって言ってるだろ」
「どういうこと」
ニーナの責めるような視線が、レオに突き刺さる。レオはいつもの柔和な笑顔で応えた。
「少しだけ、昔話をしましょうか」
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