第51話 三者三様
ヒバリがジパニックに戻りアスカと話すのは初めてである。
「お前、今俺のこと、ヒバリって」
アスカはアリステルにいる時、ヒバリのことをラークと呼んでいた。それは、ヒバリが兄だと知った後も、変わらなかった。
「ヒバリ、でいいんだよね。隊長に聞いたんだ。ヒバリが四聖将だったって。ヒバリはもう、ジパニックの人間だから」
アスカは、ヒバリに真実を聞いた後も、認めたくないという思いを持っていた。しかし、タイヨウを父上と認めた以上、ヒバリのことも目を逸らすわけにはいかない。ヒバリは、親友である以上に、家族なのだ。
「もう、真実から目を背けるのはやめるよ。タイヨウ様は僕の父上だし、ヒバリは僕の兄だ。だから、話しをしに来た。家族と」
アスカは、タイヨウとヒバリの目を真正面から捉えた。
ヒバリは、アスカがアリステルでラークと呼ばないことに気づいていた。何も言わなかったのは、アスカを騙していた罪だと思っていたからだ。
「アスカ。改めて俺はジパニック軍、四聖将が1人、ヒバリだ。お前の腹違いの兄だ。よろしくな」
アスカがヒバリのことを家族と認めてくれた以上、ヒバリがこれ以上自責の念を負う必要はなかった。
タイヨウは、身を守るためとはいえ、アスカをイオリに任せたことをずっと後悔していた。ヒバリがアリステルに行く時も、付いて行きたいと思ったくらいだ。
「父上。僕は、イオリさんのこともお父さんだと思っています。でも、父上が僕の身を守るためにお父さんと一緒にアリステルに逃がしてくれたことには、感謝しています」
アスカに、心を読む能力はない。タイヨウが自責の念に駆られていることをアスカは知らないのだ。
タイヨウは、イオリの言葉を思い出す。イオリの願いの通り、アスカは優しい人間に育った。それは、タイヨウにとって救いだった。
「アスカ。こっちまでおいで」
タイヨウの言葉に従い、アスカはタイヨウの座る椅子に近づく。タイヨウは手を伸ばして、アスカの黒い髪に触れた。
「イオリに似て、良い子に育ったな。アスカ」
「あ。ありがとうございます。父上」
アスカの黒い瞳から、一粒の涙が零れた。




