第50話 思案
ジパニックの警備は、四聖将の内1人がイニスの警護、もう1人がタイヨウの警護を行い、残りの1人は休みである。アリステルと違い一日おきの当番であり、初日に休みをもらったのは、アリステルから帰ってきたばかりのヒバリだった。
「ヒバリ。あんた、休みだったのに、なんでここにいるのよ」
現在タイヨウの警護に就いているのは、カンナ。しかし、元首の部屋には、2人の四聖将がいた。
「休みの日に、父上と話してはいけない道理はないだろう?」
ヒバリは、タイヨウに向けていた笑顔をカンナに向ける。
「相変わらず、タイヨウ様大好きね。ま、好きにしなさい。ちゃんと休むのよ」
カンナは、ため息をついて姿を消した。
「ヒバリ。ちゃんと休んだのか?」
「ええ。俺は大丈夫です。それより、父上とアスカのことが心配で。昨日のあれ以来、ちゃんと会話はしていないのですよね?」
昨日、アスカはタイヨウのことを父親として受け入れた。しかし、その後すぐに部屋に移動したため、2人はちゃんと話していないのだ。
タイヨウは、無言で応える。
「俺が、連れてきましょうか? 午前は、アスカも休みのはずですから」
ヒバリは、タイヨウとアスカの家族として、2人にも家族になって欲しいと思っていた。タイヨウの息子としても、アスカの兄としても、ヒバリにとってはどちらも大切な存在なのだ。
「いや、いい」
「ですが」
「ヒバリ」
タイヨウは、ヒバリの目を見つめる。その視線は優しいものではあったが、有無を言わせない迫力があった。
「アスカが、自分から来てくれるのを待とう」
「はい」
ヒバリは、納得のいかない顔をしながらもうなずいた。
午前中に休みをもらっていたレオ、ニーナ、アスカは揃って部屋にいた。各々椅子に座って好きなことをして過ごしていたが、アスカだけは落ち着かない様子で刀を握って城を見ていた。
「アスカ」
レオに突然名前を呼ばれ、アスカの身体が跳ねる。
「な、なんですか?」
「行ってきていいんですよ? 午前中はあなたは休みなんですから」
「なんのことですか?」
アスカの顔に冷や汗が浮かぶ。
「タイヨウ様と話したい。でも、決心がつかない。って思ってる」
ニーナが、か細い声で呟く。その声は静かな部屋の中ではしっかりと響いた。
アスカの刀を握る手が強張る。
「アスカ。本当の父親に出会って戸惑うのは分かります。でも、人間というのは、いつ会えなくなるか分からないんですよ。突然、いなくなることだって、ないわけではない」
レオの視線が、アスカの黒い瞳を捉えた。アスカの脳裏に、血まみれのイオリの姿が浮かぶ。
「僕」
アスカは、刀を握ったまま立ち上がった。
「僕、父上の所に行ってきます!」
アスカは部屋を飛び出した。
ジパニックの城の中は、複雑な造りをしており、簡単に元首の部屋へは辿りつけないようになっている。しかし、ジパニックの隊員のみが知る裏道があり、アリステルの隊員もそれを教えてもらっていた。
アスカは、元首の部屋の前に立ち、唾を飲み込んだ。
刀を握ったまま、扉をノックする。
「入れ」
タイヨウの声を聞き、アスカは意を決して扉を開けた。
「失礼します。アスカです」
「アスカ」
「ヒバリ」
元首の部屋の中に、タイヨウ、ヒバリ、アスカの3人が揃った。




