第49話 ゼクスとライラック
警護は、午前と午後の二番当番制で行われる。午前の当番は、ルドルフとゼクスだった。
「隊長。イニス様の今日の予定はなんですか?」
「今日は、午前中は予定なし。部屋におられるそうだ。午後から街に出るらしい」
「じゃあ。オレら、ここでずっと?」
「そう落ち込むな。これも大切な仕事だ。ルカ、ライラック。頼んだぞ」
午前の警護についていたのは、第3戦闘部隊ライラック・カシュ―。第5戦闘部隊ルカ・アックスである。午前にイニスの移動はないため、イニスの部屋の前で4人は両脇に腰を下ろしていた。
ライラック・カシュー。金色の短髪に金色の瞳を持っている。今年20歳になるゼクスの同期だが、敵を殺すことよりも味方を守ることに重きを置いており、笑いながら殺しまくるゼクスとはあまり仲が良くない。武器も殺傷能力を持たないトンファーであり、守りに特化した第3戦闘部隊にふさわしい人材である。
「僕は守ることが仕事ですから。それより、ルドルフさん。ゼクスの方が心配なんじゃないですか? 人を殺すしか能がないんですから」
「なんだよ、ライラック。オレだって好きで人を殺しているんじゃないんだ。お前こそ、前線から逃げた臆病者のくせに」
「なんだと!」
ゼクスとライラックは、立ち上がってにらみ合う。
ライラックは、おとなしそうな顔をしているが、ゼクスに会うたびに嫌味を言って突っ掛かる。ゼクスもライラックには負けたくないと思っており、ライラックに喧嘩を売られるたびに買ってしまう。
「おい、お前ら」
『止めてください』
ゼクスとライラックの身体がびくっとはねて止まる。
「こんなところで喧嘩をするとは、アリステルも案外バカが多いんですね」
「確か、四聖将の」
「アサヒ・クロガネです」
アサヒが、イニスの部屋に近寄ってくる。
「おい。なんだ今の声は」
ゼクスは、ライラックから目線を外してアサヒを見る。アサヒは、睨まれたにも関わらず、涼しい顔でゼクスを見返した。
「ヒバリの能力は知っているんでしょう? 心を読む能力。そして、これが」
『俺の能力です』
4人の脳内に、アサヒの声が響く。
「化け物だらけだな、ジパニックは」
「あなた方も人のこと言えないでしょう。特に、コアはね」
アサヒの視線が、ルドルフを捉える。そこに敵意は感じられなかった。
「俺の部下がすまなかった。アサヒ、何の用だ?」
「聞いてませんか? イニス様の警護には四聖将からも1人参加することになってます。例年は姿を隠していましたが、まあ、もうばれているので。どうせなら情報を共有しておこうと思いましてね」
「それは、心強いな。俺は、第4戦闘部隊隊長、ルドルフ・ヴェルヘンだ。よろしく頼む」
「ええ。こちらこそ」
アサヒは、イニスの警護に加わった。




