第45話 対面
ジパニックの元首、タイヨウは今年41歳を迎える。イニスよりも年齢も在位歴も長い。
「イニス殿。久しぶりだな」
「タイヨウ殿。お元気そうでなによりです」
元首の部屋についたイニスとタイヨウは、握手を交わした。
イニスが国王になって首脳会談を行うのは、3回目である。2人は、友好な関係を築いている。しかし、心の中では何を考えているかは分からない。お互い、相手を完全に信用してはいないのだ。
「驚きましたよ。まさか、タイヨウ殿のご子息が2人もアリステルにいるとは」
イニスは、さっそく本題の内の1つを切り出した。アリステル側にとって、アスカの件を先に片付けておくことは、最良の手段である。前置きなんて必要ないのだ。
「それについては、申し訳ない」
タイヨウは、素直に謝った。
アスカとヒバリをアリステルに送り込んだのは、タイヨウである。たとえその目的がアリステルを脅かすものではないとしても、アリステル側からしてみれば脅威になりうるのだ。
「それで、アスカは」
タイヨウの目は、すでに黒い髪をした我が子に向いている。イニスも、後ろにいるアスカの方を振り返った。
「アスカ」
タイヨウが、アスカの名前を呼ぶ。アスカとタイヨウの視線が交わった。
「っつ!」
しかし、アスカは突然身を翻し、部屋の外に出て行った。
「あ、おい」
「アスカ!」
タイヨウの横に、黒い戦闘服に身を包んだヒバリが現れる。前触れもなく現れたヒバリに、イニス達は驚きの表情を見せる。
「父上。俺が」
「オレが行きます!」
ヒバリを遮って声を上げたのは、ゼクスだった。ゼクスは、誰の答えも聞かずに、すでに扉の方へ走って行っている。
「ゼクスさん!」
「ラーク。オレに任せろ。アスカは、オレたちの仲間でもあるんだ」
「分かりました。お願いします」
ゼクスは、アスカを追って部屋から出て行った。
イニスは、扉の方へ向けていた意識を、タイヨウの方に戻す。イニスもアスカのことは心配だが、ここにいないアスカの心配をしていても、始まらない。
「ラーク。いや、ヒバリの方がいいのかな。ジパニックの隊員なのか?」
イニスは、ヒバリの黒い戦闘服に目を移す。
アリステルの人間にとって、四聖将を見るのは初めてである。だから、四聖将が一般の隊員と戦闘服の色が違うことは知っていても、その戦闘服が黒だということまでは知らないのだ。
「父上。俺について、言ってもいいですか?」
「ああ。カルラのことを考えると、アリステルは他国ではなく、共にオーリウスに対抗する味方だろう。味方だから、もう隠す必要はない。戦力は、見せておかなくてはな。アサヒ。カンナ。お前たちも、姿を見せなさい」
タイヨウの言葉が止むと同時に、アサヒとカンナがヒバリの隣に姿を見せる。ヒバリ同様、黒い戦闘服に身を包んでいる。
「彼らは、我が国の、四聖将と呼ばれる存在だ」
他国とあまり交流のないジパニックにとって、戦力を全て開示するのは、得策ではない。内情が知られすぎると簡単に攻め込まれる可能性があるのだ。そのため、四聖将は他国の者がいる時には姿を出させないようにしていた。
「ジパニック軍隊長兼四聖将が1人、アサヒ・クロガネと申します」
「同じく、四聖将が1人、カンナ・マンジと申します」
「同じく、四聖将が1人、ラーク・イストック改め、ヒバリと申します」
3人が、一様に頭を下げる。
イニスを含むアリステルの人間は、ただ3人を見つめることしかできなかった。




