第38話 ラークの告白・後
反乱が終わり、タイヨウとヒバリは国の建て直しに追われていた。その中で、舞い込んだイオリの訃報。しかし、2人は悲しむ暇もなかった。
「父上! アスカの居場所が分かりました」
ヒバリは、国の復興と平行してアスカの居場所を探っていた。
「アスカは、アリステルの養護施設にいました。今年から、兵士養成学校に入るそうです」
「そうか」
タイヨウは、ホッと息をつく。安否すら分からなかった状況から、生きていることが分かったのだ。
「それで、どうするつもりだ?」
アスカが生きているという状況で、ヒバリが何もしないということはないというのを、父であるタイヨウはよく分かっていた。
「父上。俺は今日からヒバリの名を捨てます」
「アリステルに行くのか?」
「アスカを守るために、俺は生まれてきましたから」
ヒバリの名は、ジパニックでは有名だった。それが、他の国にまで流れていないとは限らない。ヒバリの名のままアリステルに行くと、正体がばれる可能性がある。そうなると、アスカのことも芋づる式でばれる可能性があった。
アスカに負担をかけたくないヒバリにとって、それは得策ではなかった。いずれアスカもジパニックに連れ戻す時が来るにせよ、まだ不安定な各国の情勢の中で、アスカがジパニックの後継者だとばれるのは避けたいことだった。
特に、オーリウスと争っているアリステルにいるのだから。
「名前は」
「カーラン語でヒバリを意味する、ラーク。東を意味する、イストック。俺は、今日からラーク・イストックと名乗ります」
「ヒバリ。ちょっとここまで来なさい」
「なんですか?」
近寄ったヒバリの頭を、タイヨウが撫でる。ヒバリは、突然の行動に驚きながらも、素直にそれを受け入れる。
「お前はよくこうやってアスカの頭を撫でていたな。でも、お前も私にとっては大事な息子であることを忘れるな。分かったな、ヒバリ」
「はい。ありがとうございます、父上」
ヒバリは、震える声で、タイヨウに礼を言った。
「よし。では、ラーク・イストック。お前に任務を命じる。アリステルに行き、アスカを守って来なさい」
「仰せのままに」
ラークは、震える声をひっこめ、しっかりとした口調で返事をした。
全員の驚いた瞳が、ラークを見つめる。
「ラークが、ヒバリ」
「ああ。俺の本名は、ヒバリ。ジパニック元首タイヨウ様の子にして、お前の兄だよ。アスカ」
名前をラークに変えたヒバリは、アリステルに行き、アスカの同期として養成学校に入った。そして、アスカと友達になったのだ。
「な、何で! 何で、すぐに教えてくれなかったの? 友達でしょ! 兄弟なんでしょ! ずっと、騙してたの?」
アスカは、目に涙をためてラークに詰め寄る。
ずっと、真実を隠されて、過ごしてきたのだ。アスカが怒るのも、無理はなかった。
ラークは、何も言わずに、アスカの怒りを受け入れる。騙しているつもりなかった。だが、結果としてアスカを傷つけることになってしまったことを、ラークは悔やんでいた。
「ま、待って!」
王室の中を、か細い声が響いた。声を発したのは、ニーナだった。
「待って。ラークは、アスカを騙していたつもりはないと思う。今も、話している間も、ずっと、心の中はアスカを守りたいって気持ちで占められてる」
アスカは、ラークに詰め寄るのを止める。
「心の中?」
「なぜ、血が大事なのかという話しがまだでしたね。それは、とある力のせいです」
「力?」
「そう。今のニーナさんのようなね」
「心を読む力、というわけか」
ルドルフのニーナに対する疑問が確信に変わる。
「そうです。タイヨウ様の家系は、心を読み、想いを伝える能力が受け継がれています。アスカはまだ目覚めてないようですが。俺やニーナさんみたいな少し血が混ざっている人間は、片方の力が受け継がれます」
ニーナが頷く。
「私の曽祖父は、ジパニック出身だから」
「じゃあ、ラークが僕を守りたいって思っているのは」
「初めに言っただろ。アスカの味方だというのは、俺が何を話しても変わらないって。でも、隠していて悪かったな」
ラークは、アスカの頭を撫でた。アスカの目から、たまっていた涙が溢れ出した。
ジパニックの元首タイヨウとアリステル国王イニスの首脳会談は、ジパニックで行われるのが通例である。そして、その首脳会談に行くことが出来るのは、イニス、コア、第3戦闘部隊から数人と、第5戦闘部隊から数人のみだった。
イニスの身を守ることも大事だが、国も守らなければいけない。そのため、ジパニックへは、少数精鋭で行くことになっていた。
「ラーク。お前の話しは分かった」
黙っていたイニスが、ラークに言う。
「そこでだ。今度の首脳会談に、お前も来い」
「いいですけど」
ラークは、たいして驚きもせずに、コージュの方を見る。イニスに首脳会談に付いてくるように言われることは、ラークにとって予想の範疇だったのかもしれない。
しかし、第1戦闘部隊に所属するラークは、本来は城に残り国を守らなければいけない。その決まりを破ってまでイニスに付いていくには、隊長であるコージュの了承も必要だった。
コージュは、ラークの目線の意味に気付き、無言で首を縦に振る。ラークは、コージュの動きに微笑んで、イニスに目線を戻した。
「付いていきます」
ラークは、了承の意を示す。
「よし。では、今日ラークから聞いた内容は、各々他言無用だ。もちろん、アスカのこともだ。ジパニックへの出発は2日後。行く者は、心しておくように」
全員が、イニスに向かって頭を下げた。




