第36話 ラークの告白・前
王室では、定期的に会議が開かれる。その会議には、王様と全隊長が出席しなければいけない。とはいえ、実際に全員が集まったことは、あまりない。リュンのように、ほとんど城にいない者がいるためだ。
「全員、揃ったな」
今、王室には、全隊長とコアの隊員が集まっていた。
「何が始まるんかの。珍しく、全員集まっておるが」
「ここからは、俺が話させてもらいます」
ラークが、奥の扉から入ってくる。
「知っている方もいると思いますが、俺は、第1戦闘部隊所属、ラーク・イストックです」
ラークは、主席として噂になっているとは言え、全員と会ったことがあるわけではない。現に、リュンのように、ラークのことを知らない人物もいた。
「ルドルフさん。俺は以前、言いましたよね。俺はアスカの、アリステル王国の味方だと」
「ああ」
「今から俺が何を話そうが、それだけは忘れないでください。俺は、どんなことがあろうと、アスカの味方です。アスカがいるアリステル王国の味方です」
誰も、何も言わなかった。ラークは、少しだけ笑みをこぼす。
「今から、16年前。東洋の国ジパニックで、2人の男の子が生まれました。1人は、元首タイヨウ様とその愛人、シャンリーの子。名はヒバリ。もう1人は、タイヨウ様と正妻、ユマ様の子。名はアスカ」
全員の目が、アスカに向く。アスカの目だけは、ラークの瞳を捉えていた。
「そう。お前のことだよ。アスカ」
ジパニックは、元首タイヨウの家系が代々治める国である。タイヨウの住む城を基盤に街が広がっているが、アリステルやオーリウスと比べると国の規模は小さい。他国との交流もほとんどなかった。
16年前。元首を継いだばかりだったタイヨウには、1つの問題が生じていた。
「タイヨウ様! 生まれました。男の子です」
1人の男性が、元首の部屋の中に入ってきた。黒い短い髪に、黒い双眸。黒い戦闘服に身を包み、腰には、3本の刀を提げている。
タイヨウは、椅子に下ろしていた腰を上げる。
「そうか。ユマの子も、今日生まれたか」
「ということは、シャンリー様の子も」
「先ほど、生まれたばかりだ」
「そうですか。どうするおつもりで?」
タイヨウは、椅子に再度腰を下ろす。それを見た男性は、タイヨウに対して跪く。
「イオリ。跡継ぎは、ユマの子、アスカだ。しかし、私は、シャンリーの子、ヒバリも大事だ。2人とも、私の子として平等に育てる。手伝ってくれるか?」
「仰せのままに」
イオリは、頭を垂れた。
ヒバリは、カーラン人であるシャンリーの子だった。つまり、正統な後継者ではない。しかし、タイヨウは、アスカを跡取りに決めたとはいえ、平等に2人を育てた。
「イオリ。2人の様子はどうだ?」
タイヨウは、2人の父親とはいえ、元首であり、忙しい身である。イオリも、軍隊長の地位に就いてはいたが、タイヨウに頼まれ、2人の遊び相手になっていた。
「ヒバリ様は、すごいです。2歳ながらも、刀を自在に操ります。一隊員とは、互角の腕前です。そして、おそらく、力にも目覚めていると思われます。アスカ様の方は、まだ年相応ですが」
「そうか。ヒバリは、アスカにどんな態度だ?」
アスカの方が正統後継者であるが、ヒバリの方が強い。その事実は、ヒバリに悪い影響を与えている可能性があるのだ。ともすれば、ヒバリがアスカを殺して後継者になろうと考えないとも限らない。
イオリは、タイヨウの質問の意図を察し、首を縦に振った。
「大丈夫です。ヒバリ様。アスカ様」
イオリが呼びかけると、扉が開き、2人の男の子が入ってきた。片方は、黒髪黒目。もう片方は灰色の髪に灰色の目をしている。
灰色の髪をした男の子の方が、黒髪の男の子の手を握っていた。
「アスカ。ヒバリ」
タイヨウは、突然現れた2人に驚く。タイヨウが2人と会うときは、いつも2人の遊び場でだった。それすらも、最近はほとんど会えていなかった。
「父上。俺は、確かにアスカより才能があるのかもしれませんが、それはアスカを守るための力です。俺は、アスカの兄ですから」
ヒバリは、タイヨウに向かって笑う。2歳ながらも、自分の言葉で話してくるヒバリに、タイヨウは戸惑う。
「タイヨウ様。ヒバリ様は、ご自身の立場をよく理解されております。ご心配は無用かと」
「ああ。そうだな」
タイヨウは、ヒバリに良く似た笑みを浮かべた。
「ジパニックは、平和な国でした。アスカも、ヒバリも順調に育っていきました」
「ちょっと質問してもいいか?」
セッカが、右手を上げる。
「なんですか?」
「何で、アスカが後継者なんだ? 愛人の子といっても、ヒバリっていう子の方が先に生まれたんだろう? そんな簡単に決められるものなのか?」
「それは、血を重視しているからです。ジパニックを治めるのは、代々タイヨウ様の家の血を持った者とされていました。ユマ様も、タイヨウ様の家の出です。アスカは、純血と言えます。それに対し、ヒバリはカーラン人の血が混じってますから」
セッカは、納得したように頷く。
「なるほどな。なぜ、血が大事なのか、は聞かない方がいいか?」
「さすが、セッカさん。後でちゃんと話しますよ」
ラークの答えに、セッカは引き下がった。セッカとラークの会話を本当に理解できたのは、セッカを始め、レオやジャンといった参謀の能力に長けた者しかいなかった。
「13年前。アスカとヒバリが3歳の時。ジパニックで、ある出来事が起こりました」
ラークは、13年前を思い出すように目を閉じた。




