↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第4戦闘部隊~コア~  作者: きと
第1章 アリステル編
PR
34/60

第34話 アスカの記憶

 西の村コールスは、漁で有名な村である。海に面し、大きな港を有している。アリステル人以外の人間が多いこともあり、異人の村とも呼ばれていた。

 10年前。アスカの住む家は、海沿いの端にあった。父であるイオリ、母であるセイレン、そしてアスカの3人で暮らしていたのだ。


「お父さん。どこ行くの?」


 アスカは、玄関で出る支度をしていたイオリに聞いた。イオリは、アスカに良く似た黒い瞳で、アスカを捉える。


「呼び出されたんだ。ちょっと行ってくるな。お母さんを頼むぞ」


 イオリは、コールスで自衛官の役に就いていた。腰に刀を提げ、日々村人の安全を守っているのだ。


「うん! 任せて」


 アスカは満面の笑みで答える。


「イオリさん。気をつけてね」


「ああ。行ってくるよ」


 セイレンは、イオリに1本の刀を手渡す。イオリは、刀を腰に提げ、家から出て行った。


「さあ。アスカ。お母さんとお留守番しましょうね」


「うん」


 アスカは、セイレンに手を引かれ、家の中へと戻って行った。



 コールスに住むほとんどの人の職業は、漁師である。面している海では、美味しい魚を獲ることが出来る。その一方で、その魚を輸出したり、国に有益なものを輸入したりする貿易商の仕事に就く者もいる。そして、腕に自信のある者は、自衛官の役に就く。

 アリステル人以外の国の者が多いコールスは、人種を超えてお互い協力しながら平和に暮らしていた。それでも、人種の違いから争いが起こることは多々ある。そのために自衛官がいるのだった。


「イオリさん。呼び出してすいません。実は、海の方を監視していた者から報告があって」


「どうした?」


 イオリは、港の近くに建てられている駐屯所の中に入る。

 自衛官の駐屯所はコールスの村に3ヶ所存在しており、港の近くの駐屯所は、主に海の監視の役割を担っていた。イオリは、そこを統括する分隊長だった。


「海の向こうから船が3隻近づいているそうです。それが、オーリウスの船だそうで」


「なんだと」


 イオリは、窓から双眼鏡を通して海を見る。イオリの目に映ったのは、オーリウスの紋章旗を掲げた3隻の船だった。


「とりあえず、本部に報告。様子を見よう」


「は、はい」


 駐屯所の隊員は、急いで本部へと連絡した。



 コールスにいる自衛官は、10数名ほどである。その隊員が本部、海の駐屯所、山の駐屯所に分かれている。どこかの駐屯所で何かがあった時は、何人かの隊員が応援に向かわされていた。


「アスカ。なんか、海の方が騒がしいみたい。ちょっと様子見てくるわね」


「僕も、行く!」


「そうね。一緒に行きましょうかしら」


 イオリから報告を受けた本部は、海の駐屯所に2人の隊員を送っていた。そのため、なにかあったのかと村人が騒ぎ、ちょっとした騒ぎになっていたのだ。

 セイレンは、アスカの手を引き、港へと向かう。


「大丈夫です! 何もありませんから。家に帰ってください」


 港では、集まった村人で混雑していた。


「あ、お父さんだ」


 アスカは、村人の前に立つ男性に指を向けた。イオリは、集まった村人に大きな声で説明をしていた。


「なんともないみたいね。良かった」


 セイレンが呟いた瞬間、家が並ぶ方で、大きな音がした。全員が、そっちを向く。


「な、なんだ!」


 村人が、声を荒げる。イオリは、思わずオーリウスの船の方を向くが、船には何の変化も見られない。


「火が!」


 村のあちこちから、火が上がっていた。家に残っていた村人の悲鳴が聞こえる。


「た、大変です!」


 駐屯所の中から、隊員が出てくる。


「村の周りからオーリウスの兵士が侵攻をして来ています。もう、村の中にも入っている模様です」


「なんだと!」


 衝撃的な報告にイオリが叫んだ瞬間、船の方から砲撃音が聞こえた。


「きゃっー」


 村人は、大きな声を上げながら村のあちこちに逃げ回る。しかし、村にはすでにオーリウスの兵士が何人も入っていた。


「た、助けて」


 オーリウスの兵士と対面した村人は、成す術なく、殺されていく。


「アスカ。逃げるわよ」


 セイレンは、アスカの手を握ろうとする。しかし、混雑した村人に揉まれ、その手は空を切る。


「ア、アスカ!」


 セイレンは、焦って周りを見渡す。しかし、周りにはアスカの黒い髪は見当たらない。


「セイレン」


「イオリさん。アスカが」


「村の方を探そう。港は、危ない」


 イオリは、家のある方へ走っていく。セイレンは、イオリの後ろを付いて行った。



 コールスは、すでに火の手が上がっていた。数時間前まで平和だった面影はどこにもない。あちこちから、村人の悲鳴が聞こえている。


「お父さん。お母さん!」


 セイレンとはぐれたアスカは、村人の間を縫いながら村を走る。


「アスカ! 大丈夫か?」


 アスカは立ち止まって後ろを振り返った。そこには、炎に照らされたイオリとセイレンがいた。


「良かった。あなたが無事で」


 セイレンがアスカを抱きしめようとする。しかし、その瞬間、セイレンから血しぶきが上がった。


「ア、アスカ」


 セイレンはアスカの目の前に倒れ、アスカの顔にセイレンの血がかかる。セイレンの後ろからオーリウスの兵士が現れた。


「お、かあ、さん……?」


 アスカは呆然とした顔で、無表情なオーリウスの兵士を瞳に写す。


「アスカ! 危ない!」


 オーリウスの兵士が剣を振りかぶる。イオリがアスカとオーリウスの兵士の間に入り込む。イオリの背中から、血しぶきが上がった。


「アスカ…。逃げ、ろ…」


「お父さん。お父さん!」


 アスカはイオリの身体を揺さぶるが、イオリは起きない。兵士が再度剣を振りかぶった。



「アスカ! おい、アスカ!」


「ん。ラーク」


「大丈夫か? コールスに着くぞ」


 アスカは、トラックの中にいた。トラックは、アスカ、ラーク、リュンを乗せて、コールスへと向かっていた。

 トラックが、音をたてて止まる。3人は、揃ってトラックの外に出る。


「ここが、コールス」


 3人の目の前には、荒れ果てた村が存在していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。