第33話 決着
第一戦闘部隊には、隊員が多く在籍している。それは、養成学校の主席が毎年必ず入るからである。しかし、隊員が待機室にいることはほとんどない。主席であるがゆえに、プライドと向上心が高く、暇があれば訓練をしているのである。
「兄貴、16年前のこと聞いたよ。ごめん」
「ゼクス」
『第一戦闘部隊待機室』には、珍しく5人の人間がいた。
「コージュ。ゼクスを認めたのは、本当なんだな?」
「俺は、まだ言ってませんが、なぜそのことを。ラーク、お前か」
コージュは、いつも通り笑っている人物に顔を向ける。
「真っ先に俺が出てくるのは光栄ですが、今回は俺ではないですよ。な?」
「すいません。僕です」
ラークの問いかけの先に、弱弱しく手を上げる人物がいた。
「お前は、ルドルフのところの」
「ちゃんとご挨拶するのは、初めてでしたよね。第四戦闘部隊所属、アスカ・シノノメです」
「なら、ゼクスに16年前のこと話したのも」
「僕です。セッカさんから聞きました」
「あいつ。あれほど話すなって言ったのに」
コージュの低い声に、アスカは怯える。その空気を破ったのは、キルクだった。
「まあ、いいじゃないか。お前はゼクスを認めたんだろう?」
「はい。俺が無知でした」
「よろしい。なら、約束どおり家督はコージュに継がせる。ゼクスも、異存はないな」
「はい」
ゼクスは、当たり前だという顔で頷く。ゼクスは、初めからそれを望んでいたのだ。
「なら、私の仕事もこれで終わりだな。コージュ、アスカの訓練してやれよ」
キルクは、コージュに席をゆずり、待機室を出て行った。
そもそも、アスカは訓練をしてもらうために『第一戦闘部隊待機室』に来たのだ。そのせいで、ショークブルク家のお家騒動に巻き込まれた。
「訓練か。そうだな。アスカ、ラークと試合をしろ」
「え?」
「勝てとは言わない。さすがに主席には勝てんだろう。俺が、お前の力を見極めてやる」
「いやです」
否定の言葉を発したのは、意外にもラークだった。ラーク以外の3人は、驚きの表情を浮かべる。
アスカも、ラークと戦いたいとまでは思っていない。しかし、まさかラークが拒否するとは思わなかったのだ。
「なぜだ?」
「俺は、アスカを守ることが使命です。守るべき人と、戦うことはできません」
「隊長命令だ」
「それでも、いや、です」
「お前、何でそこまで」
ラークは、隊長命令とまで言われても、頑なに拒否する。
隊長であるコージュの命令に従わない理由として考えられるのは、コージュよりも立場が上の人物に止められていること。しかし、コージュの上にいるのはイニスのみ。イニスが、ラークとアスカの試合を禁止しているとは考えにくい。
「それは」
ラークは、押し黙る。待機室の中を、重い空気が流れる。
「失礼します」
「リュン」
『第一戦闘部隊待機室』に入ってきたのは、リュンだった。
「コージュさん。ラークっていう人いますか? あれ、アスカ。君もこっちいたの?」
リュンは、4人を見渡す。
「ラークは、俺です」
ラークが、手を上げると、リュンの視点が、ラークに定まる。
「君が、ラークか。アスカも、ちょうど良かった。僕の方が一区切りついたから、明日コールスへ行こう」
「え、でも」
アスカは、コージュの方を見る。第一戦闘部隊の訓練がまだ終わっていない上に、その訓練すら実行できるか危ういのだ。
「アスカ、ラーク。先にコールスの方に行って来い。リュンも忙しいだろうから」
コージュは、了承の意を示す。ラークも、拒絶を示す気はないようだ。
リュンの一区切りがついたとはいえ、いつまた忙しくなるかは分からない。オーリウスの侵攻があるほど、リュンは忙しくなるのだ。
「分かりました。リュンさん、お願いします」
アスカも、了承の意を示した。




