第30話 ライバル
ルドルフ、コージュ、セッカは、共に養成学校の同期である。セッカは、コージュともルドルフとも仲が良い。しかし、ルドルフとコージュは仲はあまり良くない。というよりも、コージュが一方的にルドルフをライバル視しているのである。
「コージュ。今度の卒業試験、ルドルフは班長になったらしいぞ」
セッカとコージュは、養成学校の制服に身を包み、廊下を歩いていた。
16年前。コージュとセッカが16歳を迎えた年、2人は卒業試験を目前に控えていた。
「知ってる。俺も、班長だ。卒業試験で、ルドルフと決着をつけてやる」
ルドルフとコージュの模擬戦闘の成績は、双方30勝30敗。五分五分の成績である。
「まあ、勝手にしろよ。俺は、後方支援に回ったから」
卒業試験では、前線と後方支援の役割がある。それは、個人の希望にもよるが、多くは、養成学校の成績によって先生が決める。そして、前線に回った生徒は、班となり協力して敵を倒す。班の中でも、優秀な生徒が班長となるのだ。
セッカは、様々な武器を扱うことが出来るが、身体を動かすよりも、頭を動かすほうが得意だ。そのため、参謀として後方支援に回ったのだ。
一方、ルドルフとコージュは、主席を争う仲である。コージュの方が学科の成績が良いため、総合的な順位はコージュの方が上だが、実技の成績は甲乙付けられない。
「コージュとセッカじゃないか」
2人の前方から、ルドルフが歩いてきた。
卒業試験を迎える前、ルドルフは、10歳を迎えたばかりだった。まだ幼さを残すその顔に、腰には不釣合いな大きな拳銃を提げている。
「ルドルフ。ちょうど、お前の話しをしていたんだ。卒業試験、班長になったらしいな」
「あ、ああ。まあな。でも、俺なんかでいいのかな」
通常、養成学校には、13歳から20歳の青年が在籍している。例外は色々あれど、10歳で卒業試験を迎えるのは、ルドルフが始めてだ。その分、ルドルフが優秀だということなのだが、他の生徒からの嫉妬は大きい。10歳という幼さで養成学校に在籍しているルドルフを、化け物だと言う生徒すらいるのだ。
「そんなの、気にしなくていいだろ。お前は、俺のライバルなんだから。班長になるくらい、当然だ」
ルドルフの年齢を気にしていないのは、コージュとセッカくらいだった。そのため、この3人は、ほとんど一緒にいた。
「あ、ああ。ありがとう、コージュ」
「余計なこと気にしたから実力が出せなかったなんて、試験が終わった後で言い訳を聞きたくないからな。負けないからな。ルドルフ」
「俺も、負けないよ」
ルドルフとコージュは、共に宣戦布告をした。
「まあ、結果は知っての通りなんだけど」
セッカは、アスカに目を向ける。
キルクから原因を探るよう頼まれたアスカは、コージュと仲が良いセッカの所に来ていた。そこで始まったのが、16年前の話しだった。
「確か、60人いた敵の中で、ルドルフさんが28人。コージュさんが20人倒したんですよね。養成学校のレコードになっていますからね」
卒業試験で、ルドルフは28人、コージュは20人の敵を倒した。それは、養成学校の歴代の1位と2位として記録に残っていた。しかし、今年アスカによってその記録は塗り替えられたことにはなるが。
「そう。ルドルフが勝ったんだ。でも、コージュの気はおさまらなかった」
卒業試験を終え、3人は各々の家に帰り、配属を待つのみとなった。しかし、そんな中、ルドルフとセッカは、コージュの家に呼び出されていた。
「なんだよ、コージュ」
「俺は、卒業試験でルドルフに負けた。それは、認める。だけど、学科は勝っていたから、結局主席は俺だった。でも、主席の俺が次席のルドルフより弱いのは納得がいかない。最後の勝負をしないか? ルドルフ」
総合力では、コージュの方が上だ。しかし、戦闘の能力はルドルフの方が勝っていることが卒業試験で証明された。それは、主席を取ったとはいえ、コージュには屈辱だった。
「分かった。それで、お前の気がおさまるなら」
ルドルフは、拳銃を取り出す。
「セッカ。審判を頼む」
「止めてもどうせ聞かないんだろ? 分かったよ」
コージュは、両手にナイフを持つ。
「用意はいいな。では、始め!」
セッカの合図と同時に、コージュがナイフを投げる。それをルドルフは易々とよけ、弾を放つ。
コージュは、弾を避けながら、身体からナイフを出しては投げていく。ルドルフに、反撃の隙を与えない。
「どうした、ルドルフ。この程度か?」
「まさか」
ルドルフは、速度を上げ、コージュに詰め寄る。そのまま拳銃を振り下ろす。コージュは、ナイフで拳銃を止める。
「お前は、近距離も出来るんだったな」
ルドルフは、通常よりも大きめの拳銃を使っている。それは、弾を放つ役目とは別に、拳銃そのものを打撃の武器として使うためである。そのため、ルドルフは長中近距離のどの戦闘にも長けている。
「コージュも、こんなものじゃないだろ」
「ふん」
コージュは、拳銃を止めていたナイフで、ルドルフを吹き飛ばす。再度、2人の間に距離が開く。
「お前の弱点があるとするなら、その軽い身体だな」
ルドルフは、まだまだ成長途中の身体である。6歳も離れたコージュとは、身体の重さは全く違う。
「まだ、見せていない技を見せてやるよ」
コージュは、両手いっぱいにナイフを持つ。その数は、10個。それをルドルフに向かって同時に投げた。
「くそ」
ナイフは、別々の軌道を描きながらも、ルドルフに向かっていく。ルドルフは、避けようと身体をひねらせる。
その時、ルドルフでも、コージュでも、セッカでもない、別の声が聞こえた。
「兄ちゃん」
ルドルフの後ろに、幼い男の子が現れる。ルドルフが避けたナイフは、吸い込まれるように男の子に向かっていく。
「ゼクス!」
3人は同時に叫んだ。




