第27話 ショークブルク家
ショークブルク家は、アリステルで有名な名家である。王家との交流も深く、血を辿れば、王家の血も混じっているとも言われている。
そのショークブルク家には、現在2人の子息がいる。しかし、その2人は仲が悪いことで有名だった。
「で。最近はどうなんだ」
「なにがですか? お父様」
「ゼクスとのことだよ」
「どうもこうも。何ともありません」
ショークブルク家の現当主、キルク・ショークブルクは、普段と変わらない息子の様子に、口を曲げた。
キルクは、昔は戦闘部隊に所属していた。しかし、今は隠居生活を送っている。茶色い髪と目は、そのまま2人の息子に受け継がれており、ゼクスは若いころのキルクにそっくりだと言われている。
そんなキルクの目下の不安は、息子の仲が悪いことだった。コージュとゼクスは幼いころから仲が悪かった。成長するにつれてましになるかというキルクの予想を裏切り、今ではキルクの頭を悩ませる種になっている。
「ところで。今日、呼び出したのはそれだけですか?」
「ああ。実は、そろそろ私も引退しようと思っておってな」
「つまり?」
コージュは、先を急かす。現当主の引退。それが意味するものは、嫡男であるコージュにとって1つしかない。
「跡継ぎのことだ」
「どうするおつもりで?」
「うむ。順当に行くなら、コージュなんだが、ゼクスと仲が悪いままでは、少し不安でな」
「は?」
コージュの口が開く。跡継ぎは、順当には嫡男であるコージュがなるはずだ。それに、ゼクスとの仲の悪さは関係ないはずだった。
「だがら、ゼクスと仲良くなれ。表面だけでなく、ちゃんと認め合え。それが、跡を継がせる条件だ!」
「はあ? ちょっと待ってください! ゼクスとの仲の良さなんて、関係ないでしょう」
いつもは無愛想で滅多に表情を崩さないコージュが声を荒げたことに、キルクはいたずらが成功した子供のような笑みを浮かべた。
「関係ある。家族なんだからな。断るようなら、ゼクスに跡を継がせるぞ」
「分かりました」
コージュは、名家の跡継ぎにそれほど魅力を感じているわけではない。しかし、ゼクスが家を継ぐということは、ゼクスのほうが立場が上になってしまう。
コージュは、しぶしぶ頷いた。
コージュは、昔から無愛想であり、表情を崩さない子供だった。それは、名家の嫡男としての責任を自覚していたためだった。そのせいで、コージュはいつも一目置かれた存在となり、遠巻きに見られることが多かった。
一方、ゼクスは違った。次男だったこともあり、自由奔放に育ち、周りには自然に人が集まる存在となっていた。だが、ゼクスも、名家としての責任を自覚していないわけではなかった。常にコージュを追い、強くなろうと必死だった。
キルクからしてみれば、どちらも可愛い息子である。しかし、表情豊かなゼクスと話している方が楽しいと思うのは当然だった。
「で。最近どうなんだ?」
「なにがですか?」
「コージュとのことだよ」
「そんな頻繁に呼び出して同じこと聞かれても、結果は変わりませんよ。兄貴は、オレのことなんか眼中にないんです」
キルクは、ゼクスを頻繁に家に呼び戻し、近況を聞いている。しかし、いつもゼクスの答えは一緒だった。
「お前は、コージュのことが好きなのになあ」
「なっ。好きじゃありません。兄貴があまりにもオレを無視するから」
ゼクスは、顔を真っ赤にする。
キルクは、ゼクスがコージュを兄として大好きなことを知っていた。会うたびに睨むのも、好意ゆえに憎しみに変わったためだった。それをコージュが気づかないことについて、もどかしく思っているのだ。
「ゼクス。私は、そろそろ引退しようと思う」
「え?」
「そこで、跡継ぎなんだが、誰が良いと思う?」
「そりゃ、兄貴しかいないでしょう。オレより強いんだから」
ゼクスは、コージュの強さを認めている。だからこそ、追いつきたいと夜中も必死で訓練しているのだ。しかし、コージュは頑なにゼクスに興味を示そうとしない。
「お前なら、そう言うと思っていたよ」
「どういう意味です?」
「明日になれば分かる。ゼクス。コージュと仲良くな」
キルクは、ニヤリと笑った。




