第25話 姉妹
第2戦闘部隊は、遠距離攻撃に長けた部隊である。全隊員がライフルのスペシャリストとして名を馳せているのだ。
「ここが、第2戦闘部隊待機室か」
アスカは、『第2戦闘部隊待機室』と書かれたプレートが掲げられた扉の前に立っていた。その扉にはもう1言。『只今、隊長不在。勝手に入るべからず』
「え。どうすればいいんだろう」
勝手に入るなと言われても、その隊長がどこにいるのか、いつ帰ってくるのかも分からない。隊長に用事がある以上、待つしかないのだが。
「あれ。どうしたの?」
女性の声が聞こえ、アスカは後ろを振り向く。
「君、アスカでしょ。第4戦闘部隊の」
「え。あ、はい」
「ああ。直接会うのは初めてだったね。私は、第5戦闘部隊副隊長、リアン・シュナイツ。この間は、うちの隊長が世話になったね」
「あ、アスカ・シノノメです。そんな、こちらこそ」
第5戦闘部隊副隊長、リアン・シュナイツ。今年29歳になる。高いところで纏め上げた茶色い長髪、するどい茶色い目。一見きつそうな顔つきだが、心穏やかな優しい人物である。セッカの奔放さゆえ、セッカを怒鳴る姿がたびたび目撃されているが、リアンが怒鳴る相手はセッカくらいだった。
「こんな所で、何してるの? ここ、第2戦闘部隊の待機室だよね」
「あ、訓練で。第2戦闘部隊の隊長に会いにきたんですが。これが」
アスカに促され、リアンが扉に書いてある文字を見る。
「全く、あいつは」
リアンは、文字を見た瞬間、ため息を吐いた。
「大丈夫だよ。第2戦闘部隊の隊長、中にいるから」
「え?」
リアンは、扉を開ける。
「アリー。いるんでしょう?」
アスカもリアンに続いて中に入る。
『第2戦闘部隊待機室』の中は、広かった。部屋を2つ分繋げたコアの待機室よりも広い。右半分はデスクや棚などが置かれているが、左半分は『第3戦闘部隊待機室』のような訓練場になっている。ただ、『第3戦闘部隊待機室』と違うのは、訓練場の奥に的があることだった。
「アリー。入られたくないからって、嘘を書くのはやめろって言ってるだろう」
リアンは、迷わず右半分の奥に入っていく。アスカは、戸惑いながらも付いていく。
「ん? 何だ、リアンか」
奥の椅子でふんぞり返って座っていた人物が身体を起こす。
「私の勝手だろう? 何の用だ」
「用があるのは私じゃなくて。アスカ、これが第2戦闘部隊の隊長」
リアンは、起き上がってきた人物を指差す。
「ああ、アスカって、コアの新人か。私は、第2戦闘部隊隊長、アリー・ヨーケル」
「第4戦闘部隊所属のアスカ・シノノメです」
第2戦闘部隊隊長、アリー・ヨーケル。今年33歳になる。高いところで纏め上げた茶色い長髪、するどい茶色い目。リアンに良く似た容姿をしている。
アスカは、名前の違う、容姿の似た2人の人物を見比べる。
「ああ。私たち、姉妹なんだ。私が妹。で、アリーが姉。私は結婚して名前が変わったんだけどね」
アリーとリアンは、正真正銘の姉妹である。リアンは、4年前に結婚し、ヨーケルからシュナイツに姓が変わっていた。
「じゃあ、アリー。アスカの訓練ちゃんとやってあげてね」
「えー。私まだ寝たいんだけど」
ライフルの使用は、大変な集中力を使う。アリーはその集中力をためるために、日中でも寝ることが多かった。その眠りを妨げられないために、扉に入るなと書いているのだ。
しかし、2戦闘部隊の隊員や、妹であるリアンはそのことを知っているため、入るなと書かれていても勝手に入っていく。
「充分、寝たでしょ。じゃ、アスカ頑張ってね」
リアンは、待機室から出て行った。残されたアスカは、アリーを見る。
容姿が似ていると言っても、性格が似ているわけではない。アリーはリアンの様には、他人に対して優しいわけではない。
アスカを睨むアリーの目に、アスカは怯える。
「あ、あの。訓練は」
「しょうがないなあ。じゃあ、そっちの部屋のライフル使って、一番手前から奥の的の真ん中に当てたら合格ね。頑張って」
アリーは、言うだけ言ってそのまま椅子に座って眠りについた。
「やるしかないな」
アスカは、戦闘で刀以外の武器を扱ったことがない。養成学校で扱い方は習ったが、成績は良くなかった。
しかし、訓練と言われた以上、やるしかない。
アスカは、左半分の壁に置かれたライフルを手に取った。




