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第4戦闘部隊~コア~  作者: きと
第1章 アリステル編
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第23話 克服の鍵

 戦闘部隊は、オーリウスとの交戦が終わると、通路を通って城へ帰る。城と各村を通る通路を行き来する手段は、荷台の大きいトラックである。アリステルの兵士は、そのトラックの荷台に乗り合わせて戦地へと向かうのである。

 アリステルは、10台のトラックを戦闘部隊のために所有しているが、戦地に行く兵士の人数や状況によって、10台のトラックが出動するとは限らない。

 スタンでの戦闘では、4台のトラックが出動していた。その内、3台のトラックが並んで城への道を帰っていた。1台は後始末を続ける第6戦闘部隊のために残しているのである。


「ん。んう」


 3台の内1台に、ルドルフ、シュタイン、セル、そして眠っているアスカが乗っていた。


「あれ、ここは」


「アスカ。目、覚めたか。戦闘は終わったぞ」


「あ、隊長」


 目を覚ましたアスカは、身体を起こす。


「あの。えっと」


「覚えているか? 血を見たけど、そのまま倒れたんだ」


 シュタインは、戦地で見た状況をそのまま話す。アスカは、困惑した顔のまま、自分でも整理するようにゆっくりと話し出した。


「はい。血を見た後、シュタインさんの声が聞こえて。どうして戦闘部隊に入ったんだって。そしたら、目の前にコールスの時のコアの姿が浮かんで。そしたら、目の前が真っ暗になりました」


「前に言っていたな。10年前のコアは唯一の希望に見えたって」


「はい。僕は、コアのように人を助けたくて兵士になったんです。僕みたいに両親を殺されて独りになる人が増えないように」


「もしかして。それが、鍵なんじゃないか?」


 セルが、ポツリと呟いた。全員の目がセルに向く。


「あ、いや。ちょっと思っただけなんですけど。赤き制裁(レッドキル)は、敵を殲滅するための能力です。その赤き制裁(レッドキル)と反対の想い、人を守りたいという想いを忘れなかったら。アスカは、赤き制裁(レッドキル)にならずにすむんじゃないかと」


「なるほど。今回のが、まさにそれだったわけか」


「でも、他の人の声が聞こえたのは、初めてです」


 アスカは、血を見ると周りが見えなくなってストッパーが外れる。そのため、人を守りたいという想いは、血を見たときのアスカの頭にはない。誰かの声にその想いを思い起こしてもらうしかない。

 しかし、赤き制裁(レッドキル)になると、どんなに近くにいても誰の声も聞こえなくなる。今までもそうだった。ルドルフの声も、セッカの声も聞こえなかった。


「なんで、今回は聞こえたんだ?」


 シュタインの疑問は、もっともだった。訓練の時には、シュタインの声もアスカには聞こえていなかった。


「人を実際に守る状況だったから、じゃないか?」


 今までの戦闘では、オーリウスの兵士と戦うのみだった。結果的に民衆を守ることにはなっているとはいえ、それを実感することはできない。しかし、今回の戦闘では民衆を守りながら戦った。それは、アスカの人を守るために兵士になったという想いそのものを表している。

 ルドルフの答えは、的を得ていた。


「しかし、克服したとは言えないよな。我を失いかけて、倒れたわけだし」


 コアの入隊の時にルドルフが言ったことは、普通の状態で赤き制裁(レッドキル)の力を出すこと。しかし、今回は踏みとどまったとはいえ、我を失いかけている。その上、気絶したのだ。セルの言うとおり、克服できたとは言えない。


「全く、お前は堅いんだよ、セル。いいじゃないか。一歩進んだだけでも」


 シュタインが、セルの頭を小突く。


「アスカ。今回俺が第3戦闘部隊の仕事を手伝わせたのは、俺たちの仕事が人を守っているということを実感してほしかったんだ」


 オーリウスの兵士と戦闘をする場合、民衆は逃げた後の場合が多い。もちろん、逃がすために戦うことも、アスカのように殺されそうになる民衆を助けることもある。しかし、民衆と直接的な関わりがあるのは、第3戦闘部隊だった。


「今回、アスカが自分を犠牲にしてまでナイフを受け止めたから、民衆に怪我はなかった。お前は、今日確実に人を助けたんだ」


「僕が、人を助けた」


「ああ。その気持ちを忘れるな。お前のその手は、人を助けるためにあるんだ」


 シュタインは、包帯の巻かれたアスカの右手を握る。

 アスカは、トラウマを克服できなかった。赤き制裁(レッドキル)になりかけた。でも、ナイフを止めたことで、民衆を守ったのは事実だった。


「はい」


 アスカは、震える声で返事をした。


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