第20話 罠だらけの待機室
第3戦闘部隊は、守りに特化した部隊である。オーリウスの侵攻の際、城を守るのは第5戦闘部隊であるが、戦地に出向き、避難させた民衆を守る役目を担うのが、第3戦闘部隊である。
「ここが、第3戦闘部隊の待機室?」
アスカは、『第3戦闘部隊待機室』のプレートの前に立っていた。
『第3戦闘部隊待機室』のプレートは、細長い廊下の入り口に掲げられている。廊下の周りに部屋は見えず、廊下の先も薄暗く終わりが見えない。
「お。何だ、お前」
アスカは、後ろから声が聞こえ振りかえる。そこには、背の高い男性がいた。
「僕は、第4戦闘部隊所属のアスカ・シノノメです。訓練で、第3戦闘部隊の隊長に用があって」
「ああ。コアの新人ね。オレは、第3戦闘部隊副隊長、セル・ジナック。よろしく」
第3戦闘部隊副隊長、セル・ジナック。茶色い短髪に、青い目をしている。陽気で、親しみやすい性格であるため、女性からの人気が高い。
「隊長は今待機室にいるとは思うけど。お前、武器は刀か。なら、大丈夫か?」
セルは、アスカの腰に提げてある刀に目を向ける。
「あの、何か危険なんですか?」
「俺たち第3戦闘部隊は、守りに特化した部隊だ。民衆を守るために、いかなる攻撃も退けなければいけない。というわけで、ここから奥の部屋に行くまでに、いくつもの罠が仕掛けてあるんだ」
セルは、言いにくそうに、しかし悪びれはせずに言い放った。
第3戦闘部隊は、常日頃から自身を鍛えるために、廊下の奥にある待機室に行くまでに罠を仕掛けているのだ。その罠を退けながら進まなければ、待機室に行くことは出来ない。
そのため、間違って誰か入ってこないように、廊下の入り口に『第3戦闘部隊待機室』のプレートを掲げているのだ。
「その罠は、僕の力でも何とかなるんでしょうか?」
「さあな。まあ、オレも援助するから、行ってみるか」
セルは、腰に提げた剣を抜いて、笑った。
「ほらほら、アスカ、こっちからも来てるぞ」
セルは、アスカの横から飛んできた矢を叩き落とす。
「うわ!」
アスカは、前から飛んできたナイフを避ける。
今2人がいるのは、『第3戦闘部隊待機室』へと続く廊下の中腹。廊下に入って5分ほど進んでいるが、まだ終わりは見えてこない。
壁から飛んでくる矢やナイフ。突然穴が開く床。それらの罠を叩き落としながら、避けながら、2人はゴールを目指していた。
「アスカ。頑張れ。もうすぐだから」
「は、はい。うわぁ」
足を縄に取られたアスカは、前に転びそうになる。
「おっと」
その縄をセルは軽々と切った。
「ありがとうございます」
「ほら、礼を言っている暇はないぞ」
「くっ」
アスカは、左右から同時に飛んできた矢を、ぎりぎりで交わす。
「お、やるな。アスカ、ゴールだ」
薄暗かった前方に、光が見えてきた。自然と、アスカの速度は上がる。
「ここが、第3戦闘部隊待機室」
辿り着いた先には、何も書かれていない扉が1つあった。
「そうだ。ようこそ、第3戦闘部隊待機室へ」
セルが扉を開けて、中へ入っていく。アスカも、後に続いた。
部屋の中は、広かった。しかし、今までアスカが見てきた待機室のような体裁を成してはいなかった。一言で言うなら、訓練場。何も置かれていない床に、ただ広いだけの空間。
「驚いたか? 一度ここへ来てしまうと、訓練場へ行くだけでも一苦労だからな。もう、作ったんだ。どうせ、他の部隊のように、置くものもそんなないしな。待ってろ、隊長呼んできてやるから」
セルは、右にある扉に入っていった。そこには、『休憩室』と書かれている。
「隊長、起きてください。アスカが来てますよ」
「ん? アスカ?」
『休憩室』の中から、2人の大きな男性が出てきた。1人はセル。もう1人は、セルと身長は同じくらいだが、横にも大きい。
その男性は、アスカに視線を向ける。
「君が、アスカか。俺は、第3戦闘部隊隊長、シュタイン・ビヨンド。よろしくな」
「あ、第4戦闘部隊所属、アスカ・シノノメです。よろしくお願いします」
第3戦闘部隊隊長、シュタイン・ビヨンド。茶色の短髪に、金色の瞳。そして、大きい身体に、髭。一見すると熊みたいな男である。
「さて、君が来たということは、訓練か」
「はい」
「何しようかな。でも、ここまで来れたってことは、あの罠を退けてきたんだろ? 優秀じゃないか。なあ、セル」
「ええ。反射神経はいいんじゃないですかね」
セルの答えに、シュタインは嬉しそうに目を細める。
「なるほど。なら後は、戦闘の能力か。アスカ。その刀で俺に一撃でも入れられたら、合格だ」
「え、でも」
いくら力に差があるといえども、全ての攻撃を避けるというのは、シュタインの方が不利だ。
「大丈夫。隊長は、ああ見えても、絶対的な不可侵の二つ名が付くほどだ。隊長を心配してたら、不利なのはアスカの方だよ」
シュタインは、守りに長ける第3戦闘部隊を纏めるほどの実力を持っている。シュタインが守るものは、必ず無事であることから、絶対的な不可侵の二つ名が付いたのだ。
「分かりました」
アスカは、鞘から刀を抜く。
「セル。ああ見えてもは余計だ。アスカ、思い切りかかってこい」
シュタインは、腰に提げた2本のトンファーを抜き、両腕に構えた。




