第14話 2人の戦場
セッカは、普段決まった武器を使わない。一番得意なのはチャクラムと呼ばれる円形の武器であるため、何かあった時のためにチャクラムを持ち歩いてはいるが、剣や銃も人並み以上に扱うことができる。
チャクラムは殺傷能力が低いため、奇襲の時には向いているが1対1の戦闘には向いていない。セッカの戦闘スタイルとしては、チャクラムで奇襲した後に、剣か銃で切り込むものだった。
「チャクラムって、珍しい武器を持っているんですね」
アスカとセッカは、『訓練場』の中に立っていた。入口では、レオが壁に寄り掛かって2人を見ている。
「おっ。知ってんのか。チャクラム」
「ええ。昔、アリステルとジパニックの間にあった小さな国、カーランの武器ですよね。父に聞いたことがあります」
「そうだ。俺のじいちゃんがそこの出身でな。使い方も小さい時じいちゃんに教えてもらったんだ」
昔、アリステルとジパニックの間にはカーランという国があった。チャクラムや仕込み刀のような暗器など、奇襲に使われる武器を生み出した国であったが、何十年も前にジパニックに吸収されていた。
「それで、どう戦うんですか? 僕はこれで?」
アスカは刀を抜く。
「そうだな。どうせ俺に傷一つ付けること出来ないだろうから、別に真剣でもいいんだが」
『ウゥゥゥーーーー。北の村シルクをオーリウスが侵攻を開始。空いている部隊は至急応援へ』
スピーカの声が鳴り響く。
「行くぞ!」
アスカ、セッカ、レオは急いで『訓練場』を出て行った。
北の村シルクは綿の生産で有名な村である。そのため畑がそこらかしこに存在している。しかし住民は100人と少なく、そのほとんどが高齢者である。
「先程ジャンさんから通信がありました。住民は南の方に逃がしてください。オーリウスはまだそこまで侵攻をしていません」
レオは、シルクに駆け付けたルドルフ、ゼクス、ニーナ、アスカ、そしてセッカを見て言う。
「作戦を言います。隊長は住民を誘導しつつ守って下さい。ゼクスとニーナはそれぞれ暴れてくること。私も援助します。アスカとセッカさんは、って、セッカさん! 何でここにいるんですか! 第5戦闘部隊は城の守りでしょう?」
第5戦闘部隊の仕事は、城の警備である。それは、オーリウスが侵攻してきた時も変わらない。セッカの本来の仕事は、城を守る第5戦闘部隊を統括することである。そんなセッカがここにいるということは、今第5戦闘部隊は隊長の指示なしで行動をしているということだ。
「だって、第6戦闘部隊がメニアの調査で、第2、3戦闘部隊はまだ演習中だろ? こっちの方が手薄じゃないか。それに、アスカの実力を見る絶好のチャンスだ」
「まったく、あなたっていう人は。どうせ、後者の理由の方がほとんどでしょう?」
レオは、溜め息をつく。
「大丈夫だって。優秀な副隊長に言付けはしてきた。それに、俺は部下に隊長がいないだけでうろたえる様な鍛え方はしてないぞ」
セッカの瞳に、真剣な雰囲気が宿る。それに気付いたレオは、もう何も言わなかった。
「分かりました。なら、アスカとセッカさんは一緒に。後は、セッカさんに任せます。では、作戦開始」
レオの言葉に、各々が動き出した。
「アスカ。行くぞ」
コアの隊員と別れたアスカは、セッカと共に村の中心部に走って行く。
「どういう作戦なんです?」
「俺は今日、これしか持ってきてない」
セッカはチャクラムを掲げる。
「だから、オーリウスの兵士が集まっている所にこれで奇襲をかけて、アスカが切り込んで行け」
「僕、1人ですか?」
アスカの声が、小さくなる。
アスカは、自分の弱さを自覚している。赤き制裁にならないと、強くなれないこと。そのトラウマは、まだ克服できていないことも。
「俺も相手の剣を奪って援助する。だけど、最初の切り込みはお前1人で行くんだ」
アスカは、不安そうな顔をやめない。
「お前も、コアの一員だろ? なら、それくらい気張ってみせろ」
セッカは、アスカの胸を拳で叩き、鼓舞した。
「行くぞ?」
オーリウスの兵士が集まっているのが見えてくる。家や畑を破壊していた。
「おりゃ」
セッカは、2つのチャクラムを兵士に向かって投げる。それと同時にアスカが刀を抜き走り出した。
「うわぁぁ」
突然飛んできたチャクラムに驚いたオーリウスの兵士の統率が崩れる。そこに、息つく間を与えず、アスカが切り込んでいく。
「くそ! アリステルの兵だ!」
敵の懐に飛び込んだアスカは、必死に兵士を倒していく。
「何だ、案外やるじゃないか」
その様子を見たセッカは、安心してアスカに続く。
「くっ」
敵を2、3人倒したアスカは、1人の兵士に刀を受け止められた。
「何だ、勢いがいいのは最初だけか? まだまだ子供だな」
オーリウスの兵士は、アスカをあざ笑うように刀を跳ね返す。その流れで、オーリウスの兵士は、アスカの左腕を切りつけた。
「うわっ」
アスカは刀から左手を離す。
「お楽しみはこれからなんだから、邪魔しない」
オーリウスの兵士の言葉が途中で途切れ、その場に崩れ落ちた。
「アスカ、大丈夫か」
崩れ落ちた兵士の後ろから、オーリウスの剣を持ったセッカが現れる。
「お前、その血」
セッカに促され、アスカは自分の左腕を見る。切りつけられた場所からは真っ赤な血が流れていた。
「あっ、あっ」
「アスカ?」
「うわぁぁぁぁぁ!」
アスカは、セッカを押しのけてオーリウスの兵士の中に突っ込んでいく。
「アスカ!」
アスカの強さから無茶だと判断したセッカは、アスカを止めようと、アスカの後に続く。
「ああああああああ!」
アスカは泣き叫びながら敵を倒していく。セッカは今までとは違うアスカの様子を見て、足を止めた。
「セッカさん」
「レオ。他の場所は」
「終わりました。後は、ここだけです」
「あれは、何だ」
セッカは、アスカを指差す。
「あれが、アスカの強さです」
セッカの指差した先では、真っ赤に染まったアスカが茫然と立っていた。




