第12話 隊長の仕事・前
第5戦闘部隊は、城の警護を任されている部隊である。兵士は、城の各地に散らばり、その詰め所も多い。とは言え、一応中心とされる詰め所があり、便宜上そこが『第5戦闘部隊待機室』とされている。
「ここが、第5戦闘部隊待機室?」
アスカは、扉の前に立って、顔を引き攣らせた。
『第5戦闘部隊待機室』と書かれたプレートがある部屋。それは、城の最上階、屋上にさらに塔を作り、その中にあった。城全体、周辺まで見渡せるようにするためである。塔の安全性は確保されているとはいえ、見晴らしがよく、高所恐怖症の者でなくとも怖い。
アスカは、扉をノックした。
「どうぞ」
中から、男性の声が聞こえる。
「失礼します。第4戦闘部隊所属のアスカ・シノノメと言います」
アスカは、扉を開ける。中には、1人の男性が座っていた。男性は、窓際に座り、窓の外を見ている。
部屋の広さは、『第9戦闘部隊待機室』と同じくらいか、それより小さいくらいだった。便宜上、『第5戦闘部隊待機室』を掲げているが、数ある詰め所の1つにしか過ぎない。そこまで広くする必要がないのだ。
「あれ? アスカじゃん」
「ルカ」
第5戦闘部隊所属、ルカ・アックス。アスカの同期で、第5戦闘部隊に配属された新卒の兵士だ。茶色い髪を短く切り、青い瞳に黒ぶちの眼鏡をかけている。殺傷性を持ったメリケンサックを武器とする格闘家だ。
「コアに入れたんだな。良かったな」
「うん」
ルカは20歳であり同期の中では一番の年上だが、生来の兄貴気質から誰からも頼られ、みんなと仲が良かった。アスカとも仲が良く、卒業試験で明らかになったアスカのトラウマからアスカを避けなかった1人でもある。
「ところで、何しに来たんだ?」
「あ、セッカさんに用事があるんだけど」
「ん? 隊長ならコアの待機室に行くって出て行かれたけど」
「え」
アスカは、コアの待機室には寄らずにそのまま来た。それが、アダとなったのだ。
「分かった。ありがとう。ルカ」
「なんか知らんが頑張れよ」
アスカは、急いで『第5戦闘部隊待機室』を出て行った。
戦闘部隊の隊長には、侵攻への出兵の他に書類仕事が与えられる。もちろん書類仕事の優劣順位は最下位であり、第5、6、7、8戦闘部隊のように戦闘部隊の特色がそのまま仕事になっている部隊は、そっちの仕事が優先される。
しかし、第4戦闘部隊は緊急事態の際に国より王様を守るというもの。侵攻がない時にはやることはない。必然的にルドルフには書類仕事が与えられる。その内容は第6戦闘部隊が調査した内容の整理から各村からの報告書のチェックなど多岐に渡る。とは言え、隊長たちは与えられた仕事を1人でやるのではない。適当に自分の部隊の暇そうな兵士を捕まえて分担してやっているのだ。
ルドルフは、朝イニスから渡された書類仕事をやろうと、『第4戦闘部隊待機室』の扉を開いた。
「あれ。ニーナだけか」
中には、ニーナだけしかいなかった。ソファに座って、拳銃の手入れをしている。
「ゼクスは訓練。副隊長は第5戦闘部隊の隊長に資料室に連れて行かれた。アスカは……もうすぐ来る」
ニーナの言うとおり、扉が開いてアスカが入ってくる。
「隊長。ニーナさん」
「アスカ。どうだ、訓練は」
「あ、順調です。ところで、セッカさん来られませんでしたか」
「セッカならレオと資料室に行ったらしい」
「そうですか。ありがとうございます」
アスカは頭を下げて、待機室から出て行った。
「相変わらず、耳が良いな。ニーナ」
アスカの行動を当てたニーナを、ルドルフは苦笑しながら褒める。
「嬉しくない。それより」
ニーナは拳銃を仕舞い、ルドルフに手のひらを差し出す。
「お前には、心の声まで聞こえてるんじゃないかと思うよ」
ルドルフは溜め息を吐きながら、嬉しそうに書類の一部をニーナに渡した。




