序4
少女は眠る。今日も何一つ変わることなく。日々の小さな変化を感じつつ、いずれは世界に羽ばたく力を少しずつ付けつつもまだその時で無いと思い、何も知らずに安穏と眠る。
だけど世界はそれを許さない。世界は我儘で、暴虐だ。
夜、すべてが寝静まる時間帯。
赤の悪魔が目を覚ます。真っ赤な瞳を光らせて、山ほどある体を起き上がらせる。黒い折り畳み式の大砲背中に担ぎゼンマイ仕掛けの体を軋ませ動く。悪魔の目的はごみ掃除。今日も空からごみが堕ちてくる。
右足踵を固定。膝は90度、背中の大砲を展開させて、空から堕ちるごみを狙う。赤いひとつ目は、揺らりと動き、大砲の大口は、ゴミを喰らうと口を開く。
大砲から閃光。次に轟音。そして反動、衝撃。
衝撃で固定しはずの足がブレ、大地に日々と陥没を与える。大砲を放つたびに、ゼンマイ仕掛けの体は鈍い軋みを上げて、悲鳴を上げる。何十、何百、何千、何万とこなしたルーチンワーク。
この場に放置されて、数十年。整備もされずに体には錆が浮かぶ。動かすたびに、気味の悪い軋んだ音を立てる。
体は既に限界と理解していても悪魔は決して止まらない。ただ空から堕ちるモノを壊し続けてきた。彼のプログラムーー生きざまは決して変わらない。
だけど体は耐えられなかった。
何発めか大砲を撃った時、小さな、何かが割れる音が聞こえた。
それが、崩壊の音。
大砲を撃つたびに、体が砕けていく。ばらばらと破片が周囲に散らばり自身の周りに広がっていく。だけど、悪魔は撃つのを止めない。自壊して、自身の部品を雨のように降り散らしながら撃ち続ける。
空から堕ちて来たゴミに何度も大砲の弾丸はぶつかった。だがまだ完全に壊れない。弾丸が撃ち込まれるたびに体から部品が削り落ちる。必死に、守りを固めるように。何枚もの羽を重ねたような鞠のような種のような姿のまま、堕ちてくる。
悪魔も空から落ちるごみも止まらない。互いにばらばらになりながらも、意地を張り続けるように止めらない。
先に力尽きたのは、悪魔。大砲を撃った、反動で、腰骨の部品が折れ、体を折り自壊する。しかし瞳の赤い輝きは失わず。堕ちたごみの先を見つめ続ける。そして、体を引きずるように堕ちたゴミを壊すために動きだす。
空から落ちたごみはその体を削り取られ、あるのは小さな核を残すのみ。
そして、核はガラクタ山に轟音を響かせ墜落した。
これが始まり、これが変化。
だけど、少女はまだ何も知らず、突然の轟音にベッドから転げ落ちて頭をぶつけた。




