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序2

方法は意外と簡単に見つかった。

ここはガラクタ山。運ぶための部品を探すのも、組み立てるのも楽々。

しばらくトンカンギュルンギュルンとしながら、簡単なコロコロタイヤ付きの荷台を作り出す。

ソリの要領でガラクタ山の上から下に、甲冑を滑り降ろし、荷台に乗せる。

荷台に乗せるときに甲冑が想像よりも全然軽いことにびっくりした。

そのままコロコロと荷台を引きずりながら、家に帰る。

家はガラクタ山を20分ほど歩いたところにある。

途中で何度か休憩しつつ、帰る前に『少佐』ヘルメットを返さないといけないこと、約束していた靴を磨くこと、この甲冑をどうしようか、重層で磨いてみるかと、まとまらない考えをまとめつつ歩く。


ガラクタ山を隠すようなちょっとした林を抜けた先は、小さな集落。

木でできた家もあれば、煉瓦で出来た家。コンクリートを打ちっぱなしにしたような無骨な建物。廃墟のようなボロボロのビル。しっちゃかめっちゃか色んな建物があるのに、そこに住むのは私を含めて4人しかいない。

土で舗装してない道から、石敷きの道に変わり、台車の抵抗が軽くなる。

舗装された石と石の隙間をタイヤが転がるたびに、がしゃん、がしゃんと台車と甲冑がぶつかる音がする。若干うるさい。だけどそれを困る人も、怒る人も、ここはあまりにも少ない。


何故こんなに建物があるのに人が少ないのかとここに落ちた時に尋ねたことがある。

曖昧に機械音を流しながら『商人』から帰ってきた答えは、ここはそういう場所という。答えになっていない答え。最少はどういうことなの?と疑問に思ったし、しっかり答えてくれないなんて憤慨したりもした。

ただ、何となくここに三人と住むようになって、彼らが言いたかったことが分かる。

彼らは、この場所の明確な答えを口にしたくなかったのだ。

「ばかみたい、ばかみたい」

小さく苛立ち小声で呟く。夢の中で布団でぬくぬくは性に合わないのだ。


『少佐』のいる見張り台まで、台車を引きずって歩く。『少佐』はすでにこちらに気づいていたのか、見張り台から降りて、わたしに向かって軽く右手で手を上げた。左手にはいつもの自慢の長銃を担いでいる。

彼が銃を手放したところを正直見たことが無い。そのことを聞くと、うむ、武士の魂と同じものよと笑いながら意味の分からないことを言っていた。

「少佐いつも何も無いのに、ご苦労様」

「うむ、今日も本土に異常は無し、敵兵も皇国の神気に恐れをなしたのか平和そのものよ」

「敵兵なんてどこにいるのよ」

「うむ、現在林の向こうで塹壕を構築中のようだ。夜には夜襲をかけようと思う」

そう言って『少佐』は彼の自慢の長銃を撫でる。


最初その言葉を聞いて、敵兵の怖いもの見たさで林の向こうにこっそりと見に行ったことがある。

だけどそこには何も無かった。敵兵が作り上げた塹壕も、敵兵がいるという拠点も何もない。

ただの平原が広がっているだけ。

彼の眼は、いつもわたしの見えない戦場を見ている。


いつものことだけど、軽く肩をすくめる。

「そう、それよりもヘルメットありがとう。おかげで命を救われたわ」

首に下げていたヘルメットの留め金を外して、『少佐』に渡す。

ちなみに嘘は言っていない。ガラクタ山から1日で2回も転げ落ちるなんて初めてだったし。しかも二回目は後頭部からダイブしちゃったし。

「うむ、それは重畳!して、それが本日の戦果か?」

台車に乗せた、甲冑を興味深く眺めながら『少佐』が問う。

「そうね、これが多分私にとって一番良いもの。どうしてかわからないけどね」

「うむ、姫がそういうのなら。それが姫の助けになるのだろう。その鎧が持っている刀剣は折れてるが中々業物のようだしの」その業物は思いっきりひっぱたら折れたなんて言えない。折れた破片は怪我をしないように布に巻いてリュックに入れてある。

「とりあえず磨いてきれいにしてみるわ。それじゃ少佐、風も出てきたから体調気を付けて」

「うむ、ありがとう。それでは」

そう言って、『少佐』はまたわざわざ風の強い見張り台に上っていく。体調気をつけろってのは聞こえなかったのか。

軽くため息をついて、我が家に使っている家までゴロゴロと台車を引きずって歩く。

ガラクタ山に行ったことで家ではまた『母親』のお叱りがあるのだろうと、ちょっと憂鬱になる。

「隣の家に引っ越そうかなー」

別に家はたくさんあるし問題はない。ただ『母親』は娘が非行に走ったと三日三晩泣いた後、その娘に鉄拳制裁をする為に深夜徘徊を始めるが。

前髪を垂らして、真っ赤な目で追いかけまわされたときは、これが『少佐』の言っていた敵兵かと思って泣きそうになった。鉄拳制裁を受けて痛みで結局泣いたけど。


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