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真面目令嬢と告白ごっこ  作者: くきの助


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7/29

ネタバラシはお早めに

「まさか了承を得るとは思わなかったよ、本当に驚いた!」


「なんだっけ。真面目な令嬢には俺の魅力は通じない、だっけ?」


「くっそー!負けだ!!」


騒がしく言い合うのはさっきまでの告白劇の事。


人気のない図書館の一角。


私が図書委員だと知っていて、なおまだこの場所で駄弁っているのは、この図書館が立派で広すぎるからかしら。

誰か聞いてるなんて本当に思いもしないのね。


まぁいいけれど。


「で?この後はどうすんだ?」


賭けが思わぬ方向に転がって行ったせいか暫く騒いでいた3人だが、落ち着いた頃ボツリとデパージ子爵令息が聞いた。


「どうするって?」


「賭けはキャルが勝った。と言う事はお付き合いが始まってしまったという事だけどそれはどうするのって事だよね。ニック?」




…………ヒュッッ




咳き込みそうなくらい息を呑んでしまった。


作業台の前に座っていた私は思わず立ち上がりそうになり、すんでの所で堪える。

ぎゅうと自分を抱きしめるように腕を強くつかんだ。



そうだったわ!!

私、ネタバラシをされていない!!


罰ゲームだって知っていたから、とっとと切り上げて帰ってしまった。


そうよ、告白ごっこは普通ネタバラシがあるのよ。

まさかこの場合私がネタバラシする側だったの……?


「まさかのこの状況は想定外だぞ。準男爵相手とはいえ流石に令嬢に罰ゲームを仕掛けたなんて言えねぇよ。」


そうね、その通りよ。

ああ、どうしよう……


こちらから知ってましたって言えばいいの?


「キャルよ、どうする。まっ、このまま放置してもあの真面目令嬢なら自然消滅できそうだが。」


「ああ、それでいいじゃないか。所詮は準男爵令嬢だしね。」



……さすがは皆浮き名を流すだけあるわね……



そんなフワッと無かったことにする円満なやり方があるなんて、思いつきもしなかった。

確かに高位貴族に貴族でもない準男爵が文句など言えるはずもないのだし、お見事としか言いようがない。


ザマアミロと言わんばかりに嘘を宣言する平民とはやり口が違う。


ホッと胸を撫で下ろした……が


「ん──でも令嬢といい感じになるのも久々だしな。とりあえずはデートを重ねてみようかな。」



え?



「キャルよ本気か?!あんなクッソ真面目令嬢と?」


「逆に興味が湧いたなぁ。さっきの告白劇を忘れたか?向こうはノリノリだったぞ?」



ええ?!



「だから、風であまり聞こえなかったって言っただろ。ノリノリだなんて本当かよ。あの令嬢はすました顔しか見た事ねえぞ。」


「本当だよ。真面目な令嬢とお付き合いするのは初めてだけれど、ちゃんと楽しませてみせようじゃないか。」


「あのクソ真面目令嬢が笑ってる姿なんか想像できねえ~!本当に楽しませる事なんかできるのか?大体うまくいったところで付き合いが長引くだけだろうが。」


「まあいいじゃないか。キャルがカザン準男爵令嬢の真面目さに嫌気がさすのが早いか、あちらがキャルの軽薄さに呆れるのが早いか。高みの見物といこうじゃないか。」


キンクス侯爵令息が愉しそうに言った。


そんな……ちょっと……


本当に……?


「何を言ってるんだ。俺が令嬢に愛想尽かされるわけないだろ?」


ふふんと笑うサナリス伯爵令息。



ああ 


策士策に溺れる


まさか罰ゲームの続きを楽しむだなんて……ここまで悪趣味だと思ってもみなかった。



由緒あるサナリス伯爵家のご令息。

誰にでも優しい紳士の仮面に裏があることは知っていたはずなのに。


後悔してももう遅い。


慣れない事はするものではない。


決してするものではないのだ。


次の日にはまたサナリス伯爵令息が図書館の前で待っていた。

あの辿々しい初めての告白から一転、いつもの隙のない話し方で流れるようにランチの約束が成されていた。


もちろん私に「罰ゲームって知っていましたよ」などと口を挟む間などあるはずもない。

でも……


(罰ゲームと知っていましたなんて……そんなこと今更言えるのかしら。)


いえ、言ってもいい。


罰ゲームと知っていたと伝えて、何故知っていたのだと言われれば、実は放課後図書館の2階で作業していると言えば、彼らはすべて察するだろう。


彼らからすれば、たかが準男爵令嬢ごときに盗み聞きされたくらい、どうでもいい事だ。

気に入らなければ準男爵家なんて高位貴族の指先ひとつでいつだって潰せる。


(潰す?)


頭に浮かんだ考えにぞわ、と背筋が寒くなった。


彼らが言っている通り、私は貴族じゃない。

たまたま高位貴族のクラスに入ってしまっただけで、決して高位貴族に仲間入りした訳ではない。

私が彼らの不興を買うくらいはどうでもいい。

どうせ卒業してしまえばもう話すこともないような人たちだ。


でも……


父親の新事業は貴族向けの商会だ。



好印象なんて最初から期待していないけれど、悪印象は持たれるのは、できれば避けたいかもしれない。


(ああもう……どうしてこうなってしまったの。もう嫌だわ。絶対来年は下位貴族に戻してもらおう。)



改めて、そう思った。


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