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真面目令嬢と告白ごっこ  作者: くきの助


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キャルと焦燥

なぜだ?


新学期になり初日こそジャッキーは登校していたものの、次の日からぱったりと来なくなった。


手紙を出せば、夏の疲れが出てしまい熱を出したと、カザン準男爵から返事をもらった。


疲れが原因ならば二、三日でよくなるだろうか。

流石に週末約束してたサナリス邸に招待するのは憚れるが、お見舞いくらいは許されるかもしれない。


そう思い、様子を伺う手紙を送る。

だがどうにも状況はわからない。


疲れが出たと言いながら、お見舞いに行きたいと言えば、病がうつってはいけないからと断られた。


断られるのは仕方ないにしても……



なんだか引っかかる。


どうして俺はこんなに不安なんだ?


何かせねばと気持ちが逸るが、一体何をと立ち竦む。


君がいないだけでこんなに毎日の時の歩みは重苦しい。



せめてジャッキーが返事をくれたら……


そう思うがジャッキーが手紙をくれることはないまま、週が明けてしまった。



ジャッキーに会えないことがどうしようもなく不安になる。


何故だ?


どうして、ジャッキーは学園に来ない?


そんなに体調が悪いのか?


毎日手紙を出すものの、やはり返事はカザン準男爵からしか届かない。


文面はいつも一緒だ。

『思ったより病が長引いている。』




もう1週間以上経とうとしていた。

やはりジャッキーは学園にも来ない。手紙も来ない。


どうして返事をくれない?


一言でもいいんだ。


ジャッキーが大丈夫だって言ってくれたら……

学園で待っていてくれって言ってくれたら……


いいや。

なんだっていい。

白紙でも嬉しいんだ。

それがジャッキーの手を介したものならば。


日に日に募るのは焦燥感。


いまだ見舞いにも行けてはいない。

現状俺とジャッキーはただのクラスメイトなのだ。


これが婚約者なら、見舞いにいくことも、医者から話を聞くことも、全部出来たはずだ。


初めて全て後回しにしていた自分を後悔していた。



「カザン準男爵令嬢は随分休んでいるね。どうかしたのかい?」


バールにもニックにも聞かれるが、体調不良だと、手紙では心配ないと言っていたと、そのくらいしか言うことがなかった。



モヤモヤと得体のしれない不安と闘いながら、日々をやり過ごし、ジャッキーがいない学園に通うのもゆうに2週間は越えたのではないかと言うときだった。



今日も重苦しい朝をいつものように馬車で登校し、教室に向かう途中だった。



破裂したかと思うくらい心臓が脈打つ。



あれは!!



気が付いた時にはもう走り出していた。


東校舎と教員棟のあいだから一瞬、黒髪が揺れるのが見えた気がしたんだ。



見間違いかもしれない。

そんな事は考えられなかった。


学園に来れるようになったのなら、どうして俺に手紙をくれない?


頭はそんな事で一杯だった。

焦りと不安で駆け出さずにはいられなかった。


ジャッキーになんでもないよと、そのくらいの事で面倒な人ねと笑って欲しかった。


校舎の間を抜けると視界が開けた。



やっぱりジャッキーだ!


彼女は下位貴族のクラスがある南校舎に向いて歩いていた。

大きく息を吸い込み名前を呼ぼうとして、飲み込んだ。


1人じゃない。


下位貴族の令嬢達数人と話している。

少し頭の冷えた俺は反射的に校舎の影に引き戻った。


令嬢たちとの会話に割り込むのは躊躇した。

ここで彼女たちと別れるのを待つべきだろうか。


いや、やはり待っていられない。

ここは令嬢たちに遠慮してもらってジャッキーを連れ出そう。


いてもたってもいられず飛び出そうとしたがすんでのところでまた思い留まった。


教員棟からニックが出てきたのだ。


クソッ


心の中で毒付く。


令嬢たちに割り込んでジャッキーに詰め寄っているところをニックに見られるわけにいかない。

ニックにはジャッキーが休んでいる間も交流があるかのように振る舞っていたんだから。


アイツは迷うことなくジャッキー達のところに向かっていた。


ギリ、と奥歯が鳴った。


クソッ


もう一度毒付くと、深く息をついた。


流石に諦めよう。

こんなところでこそこそ盗み見ているところを感付かれる方がまずい。


重い足を引きずって高位貴族のクラスに向かう。


ニックとジャッキーの2人きりというわけではないし、令嬢達がジャッキーとニックを2人きりにするわけがない。


しばらくすれば鐘はなるんだ。

そうすれば教室に来る。

学校には居るのだから。


なんとか自分を納得させる。

 

きっと、たわいのない事だ。

全部。


鐘がなり随分と遅れてニックが教室にやって来た。


だがジャッキーが教室に現れる事はなかった。

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