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真面目令嬢と告白ごっこ  作者: くきの助


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急激に近付く距離

私たちは優しく指を絡め、ささやき合って、くちびるを重ねる。


本棚の陰で


裏庭の亭榭で


窓際のカウチで


毎日毎日


甘い時間はいつも早足で過ぎて行く







「ははっ!とうとう伝染ったな?」


そう指摘されて思わず揃えた指先で口を隠した。


「伝染力は相当だろ?」


そう言いながら頬をくすぐるように指で撫でられた。


いつの間にか口ずさんでいたのは冬の歌。

私は息をついて肩をすくめる。


「毎日あなたが歌うからよ。」


「もう抜けられないぞ。」


「かもね。」


2人でくすくすと笑う。


私は膝の上にあるキャルの柔らかい髪をそっと撫でた。


「あなたの兄弟で伝染している人はいないの?」


聞くとキャルは思案顔になる。


私たちは図書館の窓際のカウチに腰掛けて休憩中。

そのはずだったのに、いつの間にかキャルはゴロリと横になって私の膝は彼の枕になっていた。


「いないんじゃないか?ひい祖父様と仲良いのは兄弟で俺だけだった。俺は剣を振り回すのが好きだったしな。ここに来れば伯爵家の騎士団の稽古に混じる事ができたし。」


「やんちゃだったのね。」


「今じゃすっかり大人しいだろ?」


彼の髪を撫でていた手を掴まれるとちゅっと音を立てて指先に口付けられる。


よく言うわ。


「そういえば学園には兄弟は通っていないわよね。年が離れているの?」


「上2人とはね。離れているよ。でも三男とは一つ違いだ。」


先の質問を無視されたことに少しムスッとしながらも答えてくれる。


「あなたの一つ上?」


「隣国に俺の一つ下の妹と2人で留学しているから学園にはいないよ。」


「妹?」


「そっ」


言いながら起き上がる。


「5人目にしてようやく女の子が生まれて家中盛り上がって盛り上がって……おかげで俺以外家族皆シスコンだ。鬱陶しくなった妹が隣国に留学したいって言ったけど、1人では許可は出ず、三男が立候補してついて行く事になったってわけ。」


「そうだったの…」


知らなかったわ。


「まあ俺は皆が妹に目がいっていたおかげで、好き勝手ひい祖父様の家に出入りしてたから感謝はしてるけどな。」


言い終えるとヒョイと抱き上げられ、今度は私がキャルの膝に乗せられた。


「ジャッキーは弟と7つだったか、離れているのは。俺も一番上の兄とは7つ離れているな。俺は離れ過ぎていてあまり話す機会もなかったが。」


「うちは2人きりだもの。弟は昔は身体が弱かったしね。面倒を見ていたわ。」


「身体が?今は?」


「今はもう丈夫になったわ。でも昔はパタヂャカで療養していたの。」


「だから幼少期パタヂャカにいたのか。」


「そう。」


「パタヂャカは皆礼儀正しく規律が厳しいと聞いた。」


「そうね。でも礼儀正しく規律を守れば自由な国だったわ。」


「自由?」


規律と自由が結びつかないのかキャルは少し眉をあげた。

その顔に少し気が抜ける。


「そう。皆規律も礼儀も守るから、色々自由だったの。貴族も平民も同じ学校に通っていたし、クラスも身分で別れてなんていなかったわ。私も身分関係なく色んな子と遊んだもの。王族はまた別だけれどね。」


「へえ……なるほど……そういうことか。」


深く納得している様子。


「どうしたの?」


「いや。面白いと思ってさ。この国とは全然違う文化だ。」


「そうね。パタヂャカからこの国に戻ってきた時は少し戸惑ったわ。」


「だろうな。」


頭が引っ張られる感覚と共に髪の毛がぱらりと落ちてくる。

キャルがハーフアップにしている私のリボンを取ったのだ。


「キャぁル……また取って」


「下ろしてる方が可愛い。」


「…もう……」


サラ、と髪がかすかな音を立てる。


惹き寄せられるようにくちびるが重なるとキャルの腕が背中に巻き付くから、私も当たり前のように彼の首に手が回る。


時折息継ぎのように甘い吐息が漏れる。



こんな事を繰り返して、日々大きくなる気持ちに怖くなる。


世界が彼でいっぱいになるのが止められない。



でもすぐに知らしめられるのだ。

2人だけの世界は永遠ではないと。







「キャル、キャぁル!手伝ってくれるって言ったじゃない……!」


「んー?もうまとめだろう?」


くいっとブラウスの襟が引っ張られる心地がしたかと思うと、ちゅ、ちゅ、と首筋に口付けされる。

必死に課題をまとめている私を膝に乗せて彼はゴキゲンだった。


課題が終わってしまっている彼はもうやる事がないとばかりに私に絡み付いている。


「だったらせめて膝から下ろして頂戴!」


「んー?」


すっとぼけるような声をあげ、私の腰に回されている腕がほどかれることはない。


このやり取りも何度したかわからない。


私は課題の最後のまとめをしなければとわかっていたのに、気が付けば長期休暇の終わりは間近で大いに焦ることになった。


頭の中が彼のことばかりになって課題がおろそかになるだなんて。


結局サナリス邸の図書館ではなかなか進まず、家でしか進められない。


だというのにサナリス邸に通うことは止められず、結局新学期の始まるギリギリにようやくまとめることができて胸を撫で下ろしたのだった。


こうして2人だけの世界だった長期休暇は終わりを迎えた。


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