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真面目令嬢と告白ごっこ  作者: くきの助


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人気者達の裏の顔

「また!おまえ、さすがにイカサマだろう?!」


「そんなわけあるか。ほら、カードくれよ。」


「ああ、今日はニックが調子いい日だね。」


声が響いてよく聞こえる。

この部屋の開けた小窓の向こうは廊下。

その廊下でカードゲームをしている3人組がいるのだ。


彼らがいるのは廊下の突き当たり。


そこにはテーブルセットが数個置いてあり、一応カフェスペースとなっているものの、本棚もない2階の廊下奥のテーブルを使う生徒などいない。


いいえ、そもそも生徒は2階になど上がらない。

何か目的が無いかぎり。


「キャルよ、どうした?」


「なんか落ちてる……髪留め?」


「ああ、小ぶりのかな?グリーンのリボンの。」


「なんで知ってるんだよ、バール。」


「たまたま無くしたことを知ってるだけだよ。渡しておくね。」


「たまたま?ほお……昼休み明け遅れて来たと思ったらここで逢引きしてたのか。」


「よくわかるねぇ。」


「誰だってわかるだろ。」


ケタケタと皆で笑う。


確かに誰も来ないここは逢引きにちょうどいい。


まさか壁の向こうの書庫に誰かいて、会話が筒抜けだなんて思っていない彼らはあけすけに話し続ける。


「カーレン伯爵令嬢だろう?」


「ご明察。」


「そんな大層なものか。クラス中彼女がバールを好きだって気付いているぞ。」


「気付いているといえば、キャルだよ。ラデス子爵令嬢に皆の前で堂々とランチに誘われてたね。」


「いつの話だよ。もうランチもしたし、デートもした。」


「そして口付けもした。」


「なんで知ってるんだよ。」


「誰だってわかる。」


ドッとまた皆で笑う。


「下位貴族とならとりあえずするだろうよ!」


下品な一言が付け足された。

私は軽く嘆息する。


こんな風に彼らは放課後ここにやって来てはゲームをしながら人前で出来ないような話をしている。


呼んでる名前から、誰かはすぐわかった。


サナリス伯爵令息ことキャル

キンクス侯爵令息バール

デパージ子爵令息ニック


あの学園の人気者の3人。


特筆すべきは、今は彼等と私は同じクラスだということ。

なんと驚くべき事に、2年に進級した私は高位貴族のクラスになったのだ。


何故平民上がりの私、準男爵令嬢が高位貴族と同じクラスになったのかといえば、何にでも例外があるとしかいえない。



まず大前提として、此処王都の貴族学園は高位貴族と下位貴族とのクラスがきっちり分かれている。


そして高位貴族のクラスは例外なく皆莫大な寄付金を学園に納めている。

すなわち下位貴族でも多額の寄付金を納めさえすれば、高位貴族クラスに入れるのだ。


ただし条件付きで。


その条件とは成績上位、もしくは高位貴族からの口添えがある、そのどちらかが必須。



デパージ子爵家は子爵でありながらも、優秀な騎士を数多く輩出する名門。

だからおそらく高位貴族からの後押しがあっての高位貴族クラス。


私は1年生で学年4位という成績を取ってしまった事で多額の寄付さえ払えば上位貴族クラスに入る権利を得てしまった。



父親に「ま~お前の性格上期待はしていないけれど、高位貴族と顔を繋ぐことができるならやってきてよ~。」

と言われ、2年生から高位貴族のクラスに放り込まれてしまった。


今まで平民向けの商品ばかり扱っていた父親が今度から貴族向けの商品を扱う商店を新しく立ち上げるという計画が持ち上がっているためだ。


私は高位貴族のクラスなんて嫌だと言ったのに。


結果思ったとおりと言うべきか、新学期が始まってしばらく経った今でも華やかな高位貴族ばかりのクラスに馴染んでいない。

それどころか浮いている。


そもそも貴族学園に馴染んでいないのに、高位貴族のクラスになんて馴染めるわけなんてない。


そんな高位貴族クラスの中でも抜きん出て華やかな3人が、ほぼ毎日放課後にここに来ては、30分ほど喋りながらカードゲームをしたりダイスゲームをしたりして帰ってゆく。


最初は驚いた。


私の彼らの印象といえば、皆揃って誰にでも分け隔てなく、とても紳士で、いつでもさりげない優しさを振り撒いており、注目を集めることに慣れている彼らは人をまとめる力も素晴らしく、令嬢だけでなく令息達の信頼も厚い。

何事にも積極的な姿勢は教師達の覚えもめでたかった。


そんな3人がこんなにところで言葉も乱して話している様子は高位貴族とは思えない。

それどころか聞いていられないほどの下品な話もしばしば。


お話全部筒抜けですよって言えたらどれだけ良いだろうか。

でも平民上がりの目立たぬ準男爵令嬢が、高位貴族の彼らに物など言えるわけなどない。


30分ほどのことだと頭を切り替え、適当に聞き流すことを覚えた。


どうせ関わる事もないのだから、彼らに裏の顔があったところで私には関係のない事。


そんな風に割り切っていた、ある日のことだった。


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