キャルは笑いが止まらない
「まさか成功するとはね。」
「まだ言うのか。」
「言うだろそりゃ!にわかには信じられなかったぞ。」
ニックもバールも、告白劇の会話は途切れ途切れにしか聞こえなかったらしい。
まあ、隠れてりゃそうか。
あの子が去った後、どうせ断られたんだろうという態度を隠しもせず俺の所に寄ってきた。
成功したと知った時の2人の顔はなかなか見ものだった。
俺たちは告白の後、図書館2階のいつものカフェスペースに場所を変えていた。
ここは図書委員ですら寄りつかない事も知っている。
でもあの子と同じ建物にいるんだと思うと気持ちが昂る。
「ヘラヘラしやがって。」
心底鬱陶しいとでも言いたげにニックが言う。
そうだろうそうだろう、全く面白くないだろう。
先んずれば人を制すというのはこう言う意味だ。
「はは!愉快愉快!」
本当に愉快!
「ああそうだ、夏の課題は頼んだぞ?」
思い出したかのように付け足す。
「くそっ!なんで夏の課題は毎年馬鹿みたいに多いんだよ!」
「仕方がないよ、ニック。休み前に2人でうまくわけよう。ハア。」
茶化しているが心底悔しそうな様子がひしひしと伝わってくる。
本当に負けてよかった。
ああ、でもまだ信じられない。
早く明日になってほしい。
明日になってあの子とまた話して、現実だったって確認したい。
そのくらい信じられない。
「で?この後はどうすんだ?」
噛み締めていると、おもむろにニックが聞いてきた。
「適当にデートして距離を置くのか。まあこのまま放置してもあの真面目令嬢なら自然消滅できそうだけどな。」
「彼女は下位貴族だしそれで良さそうだね。」
2人して早速別れさせる気でいるじゃないか。
婚約者はいないことがわかったし、お付き合い自体は受け入れてもらえる事がわかったから早く自分が名乗りをあげたいんだろ。
わかるんだよ。
俺もそっち側ならそうしてたから。
その手に乗るか。
「そうだな。ご令嬢とこうなるのも久しぶりだし、ランチしたりデートしてからどうするか決めるよ。」
ホクホク話す2人に釘を刺すように俺は言う。
するとニックはピクリと眉を動かし、バールは表情を変えずわざとらしくにこりと笑って「そう」と言った。
「……逐一どうだったか報告しろよ。」
面白くなさそうにニックが念押しする。
「そうだね。キャルがそのつもりならこちらも楽しもうじゃないか。でも純粋に聞いてみたいなあ。君と真面目令嬢とのお付き合い。」
バールも隙を探るような事を言う。
2人ともどうせ上手くなんて行かないって思ってるな。
そんで俺の話を参考に自分はうまくやるつもりだ、絶対。
わかるんだよ!!
確かに何故あの子が俺を受け入れてくれたのかは謎だ。
前から俺を好きだったって言うのは少し無理がある事はわかっている。
今まで散々令嬢達の好意を受け取ってきたんだ。
流石にそこまで馬鹿にはなれない。
それでもだ。
せっかく手に入れたこの好機。
今は俺があの子の恋人だ。
ニックにもバールにも渡す気はない。
(早く確かめたい。これが現実だって。)
そわそわと落ち着かない、痺れるような感覚が身体中を襲う。
でもこんな気分も悪くはない。
ああ、浮かれてるな。
絶対断られるって思ってたんだから仕方ない。
まあ断られても諦める気なんてなかったが。
でもそうなればニックもバールも名乗りを上げていただろう。
誰があの子を落とすか賭けだ、とかなんとか言って。
皆、最初の一歩が踏み出せないだけで、近付き難いあの子に話しかけるきっかけをずっとずっと探っていたんだから。
次の日も教室であの子を盗み見る。
やっぱりあの子はチラリともこちらを見ない。
本当に夢だったんだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
いや構わん。
もう堂々と話しかけるぞ。
ただどうしても教室で話しかけると目立ってしまう。
あの子は目立つのは嫌だろうし、俺も変に騒がれて邪魔されたくない。
だから昨日と同じ、また図書館の前で待ち伏せて
今度こそ
いつものように
華麗に
颯爽と
ランチの約束を!




