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家が没落して家族バラバラになったので集めます  作者: 柳上晶


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6/7

これが展覧会か〜

 町から離れた場所にある森の中。

 聞くだけで気分が悪くなるような魔物の鳴き声が絶えず、どこか雰囲気が暗い森の中で、魔物の討伐に向かった二人組がいた。

 大剣を持った、緑混じりの髪をした大柄の男性カイ。

 杖を持った、赤のグラデーションの髪をした女性カナデ。

 狼の姿をした魔物の群れとの交戦中、魔法の準備をしていたカナデの腕に、一匹の虫が止まろうとして飛んできた。それはセミであり、ジジッと鳴きながら近づいてきた。


「――ぉばっっっっっかやろおあぁぁ!!!!」

「は?!なん――――」


 結果、魔法が暴発した。

 あたりの木々を吹き飛ばし、大きな煙を作り出し、二人は吹き飛ばされた。空に。

 空中でカナデはとっさに、暴発して爆発して更地になった森の一部に再生魔法をかけ、カイと自分に防御魔法をかけ、復活した木々めがけて落っこちる。木々の隙間を縫って、カイは見事に受け身をとって着地をしたが、カナデはそこまでの身体能力はないため、木に引っかかった。

 逆さまで枝に引っかかりつられた状態で、カナデとカイは見つめあう。


「――――何があった?」

「――セミ……セミが…………」


 カナデが虚ろな目でそう呟く。カイは素直に驚いた。

 虫がダメなことも爆発したことも。


「虫ダメなんだな」

「虫がダメというか、飛んでるやつがダメというか、セミは死んでもいい」

「風物詩消えちゃうからそれ」


 一部の人間を敵に回す発言をしながら、ぶらぶらと体を揺らす。

 いつまで逆さまになっているのかと思っていると、ふと思い出したかのように目を瞬かせて体を起こす。そして木から降りてくると、服についた汚れを払い落しながら言った。


「そういや展覧会もう明日か」

「急だな?そうだよ。だからこうして金稼いでるんだよ」

「あ、そういうための今日だったんだ」

「じゃあ何のために来たと思ってた?」


 苦笑しながら、カイも同じになって服の汚れを払いのける。爆発の影響で砂埃などが巻き上がって煙たい。


「――なぁ、魔法って爆発するもんなのか?」

「何というか、私が使ってるのは半分感覚だから……」

「感覚が狂うとよくない?」

「よくない。気が散ったら本当に危ない」

「魔法ってわかんね~~」


 そんなやり取りをしながら、カイはあっと声を上げる。

 何事かと首をかしげるカナデに向かって、口元を隠す動作をする。


「どした?」

「魔物……跡形もなく吹っ飛んだけど、素材……討伐の証……」

「あ…………」


 魔物からとれる魔石がないと、魔物を討伐したことを証明できない。これは、冒険者教会で定められているものだ。そのため、今の状態で行ったとしても承諾されない。

 冷や汗を流しながら、この状況を変えようと考えるが、何もいい案が思いつかない。

 そもそも、魔石まで跡形もなく粉砕する事態を想定していない。


「べ、別の奴を探して倒す、とか?」

「生態系の維持は必須だし、さっきの爆発で絶対逃げただろ。追っかけても逃げるぞ」

「あーー…………今日は運悪く見つからなかったということで」

「ちゃんと報告しに行くぞ。セミにビビッて魔法暴発して塵すら残らず消滅させましたってな」

「ひぃん……はい……」


 泣きまねをするカナデに鼻を鳴らしながら、帰り道を歩く。カナデもそれについていく。ただ、心の中では『セミはやっぱり滅んだ方がいい』と強く願った。

 カナデがこの世の中で一番嫌いな虫はセミである。その他は大丈夫なくせして、これだけはどうしても克服できなかったのだ。

 その後、帰り道の馬車で森の爆発について問いただされ、冒険者ギルド内でも根掘り葉掘り聞かれた。

 自分の責任だとわかってはいるし、ちゃんと反省もしているのだが、心の奥底でセミへの恨み節をつぶやいていた。






 そんなこんなで迎えた次の日。『フィラナ』の展覧会が開催される日だ。

 町はいつもよりにぎわっていて、すれ違う人々の多さが段違いである。それだけ、注目されているのだろう。

 その人の波が行きつく先の展覧会で、カイとカナデはパンフレットを見ながら列に並んでいた。


「すご。こういうの行ったことなかったからな~」

「実物はもっとすごいと思うぞ」


 実際、屋根のある外に、日の当たらないように注意しておかれている絵画は、遠くからでもわかる迫力がある。見た人を魅了する力を持っている。そう錯覚できるほど素晴らしい出来栄えである。

 少しずつ進んでいく列は、案外早く二人の順番となった。

 入場料を払い、入っていく。

 すぐ目に映った絵画たちに、カナデは目を輝かせる。カイはまるで評論家のようにほうと感嘆している。それほど、素晴らしいものばかりだった。

 歩きながら、絵画を流し見ていく。前述通り風景画ばかりではあったが、それでも飽きが来ない。

 街並み。街道。雑木林。川のほとり。滝つぼ。夕焼け。

 ありとあらゆる日常風景が切り取られ、そこに陳列してあった。


「親父。普通にすごいわ」

「わかるそれな」


 静寂を壊さぬよう、静かな声で同意を求める。

 カイも同意見だったようで、深くうなずいた。

 あらかた見回って一区切りついたころに、カナデはパンフレットをまた確認する。そこには『フィラナとの対談』というものの開始時間が書かれている。まだもう少し時間があるようだ。


「――カナデ。座っていいか?」

「あ、疲れた?」

「あーちょっと。おじいちゃんにはきついわ」

「まだそんな年じゃないだろ」


 近くのベンチを探し、カイは腰掛ける。カナデも隣に座って少し休んでいたが、早々に飽きて立ち上がる。


「そこらへん、見て回ってくる」

「へーい」


 カイを置いて、カナデはふらふらとあちこち歩き回り始める。共に行動する人がいなくなると、自由さが増す。あっち行ってこっち行ってを繰り返す。

 たくさんの景色に囲まれ、心地よい気分になってきたところで、カイの元に戻ろうと足を止める。振り返ろうとして、また動きが止まる。

 カナデの目に映った絵画は、どこか古く、懐かしさを感じるものだった。他の絵画と違う雰囲気のそれをじっと見つめ、見つめ、すっと視線を戻してその場から離れる。


 その絵は、庭の広い大きな屋敷の絵だった。

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