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家が没落して家族バラバラになったので集めます  作者: 柳上晶


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帰り道

 情報もゲットし、のんびりと家に帰っている途中、わあっというざわめきを見かけ、野次馬精神を持つがゆえに引き寄せられた。中心地には新聞を配っている人がおり、ざわめきはその新聞を読んでいる人から来ていることがわかる。

 カナデは気になり、その新聞を一枚もらうことにした。


「何が書いてる?」

「展覧会のことだね。さっき聞いたやつ」

「ああ、なるほど。俺にも見せろ」


 道の端に寄り、カイにも見えやすいように新聞を広げ、一緒になって読み始める。


 稀代の天才画家フィラナが、この町にやってくる!?一週間後の今日、中央区で展覧会が開催。当日の目玉は何と言っても本人が姿を見せるということ!数々の美しく繊細な風景画とともにお楽しみください!


「……なるほどなぁ」

「何か分かった?」

「これさ、風景画だけ?」

「そう書いてあるし、そうなんじゃない?」

「それは、なんというか、おかしくないか?」


 新聞から顔を上げ、カナデの方を見る。単なる記憶違いならそれまでだが、これに関しては間違いないと声を大にして言える。


「お嬢の得意って人物画じゃなかったか?」

「確かそうだよね」

「てか、そうだ!その画家の『フィラナ』って青年らしいけど、お嬢とは別人とかじゃないのか?」


 ジェレミーが持ち出した情報によれば、その『フィラナ』は青年のはず。探しているフィラナは、カイがお嬢と呼んでいるように女性で間違いない。

 あふれ出る質問に対し、カナデはちょいちょいと新聞の一面を指さす。それに対しカイは指さされた一面をのぞき込む。

 そこには、でかでかと『フィラナ』の写真が貼られてあった。

 深く帽子をかぶり、顔は見えづらくなっている。これだけでは、本人かどうかの判別がつかない。だが、一つだけ、確実にわかることがあった。

 この写真の人物がフィラナではないこと。


「……身長高っ。お嬢はもっと小さい」

「別人であることはわかるね」


 その『フィラナ』の写真にはほかにも複数人が映っているのだが、写真に写っている女性の中で『フィラナ』の身長が高く、男性を追い越しているところもある。

 性別がーとかではない。やむを得ず性別を偽ることもある。現に、カナデはこれでも、自身を女性と公言したことはないし、最初期のころ女だというだけで絡まれたことがある。なので、フィラナが性別を偽っていても、まだ別人とはわからない。

 ただ、誤魔化しようのない身長。

 それはあまりにも別人だった。


「え、行く必要ある?これ」

「あるある。超ある」

「別人ってわかっちゃったじゃん」

「それがねえ。関係ないとも言い切れないんだよね」


 もう用はないとばかりに新聞を畳み、小さくして懐に入れる。カイは『懐どこにつながってんだろう』とか考えている。

 そんな関係ないことを考えるのもつかの間、カナデはいつになく真剣な目つきになる。

 雰囲気が変わった。カイも気を引き締める。


「――――私らはさ、名前ごと存在が消えてるじゃん」

「……あぁ、なるほど」


 その発言に納得し、頷く。

 一家が消えた呪いの話。

 その話を深く掘り下げようとせず、静かに話は続く。


「こいつが、本当に赤の他人か、存在を知ってるやつか判断しようってことか」

「……ああ、そうそう」

「え?違った?」

「いやいやいや、あってるあってる――――ついでに絵画堪能しようかなーなんて」

「おい」

 

 能天気な返答に、本気か?と不安になる。

 好奇心が刺激されると、目標と関係ないことでも気になってしまう。カナデの昔からの癖のようなものだ。

 今回の展覧会、よほど気になった絵があったのだろう。それか、何かから影響されたか。


「……最近おすすめの本は」

「世界の美術館及び美術品」

「好みの絵画があったのか……」


 本に影響されていた。


「風景画ってものすごく幻想的で美しいものから穏やかになるものもあるし十人十色の景色が見れるんだよ他人を通して見た景色っていうのは他にはない豊かさとかがあって」

「わーったから帰ろうぜ!話はそれから!」

「うい!」


 無理やり話をぶった切って、帰宅を促す。それに従順に従うのに心の中でほっとする。

 話自体は長くないが、小難しい言葉と自分の理論を展開するので、理解に時間がかかる。つまり疲れる。

 機嫌よく歩いているカナデは、ウキウキのステップで家への道のりを歩く。


「そういや、別に本当に絵画見に行くだけじゃないよ」

「じゃあなんなんだよ」

「フィラナじゃないなら、の可能性。昔、フィラナと一緒にいた執事いるじゃん」

「ああ、あいつ…………え?まさか」

「フィラナと一緒に絵描いてたよなー」


 思い出しながら放つ言葉は、ほぼ確信めいた言葉だ。

 個人で調べた情報の中に入っていたのか。定かではないが、それが本当ならば一人でも真実にたどり着けているということになる。


「お前、すごいな……」

「これでも頑張ってきたからね」


 胸を張り答えるカナデに、素直に感激したため、カイはカナデの頭に手をのせてこねくり回す。整えられた髪の毛がぼさぼさになるまで撫でまわし、周りの目も気にせずに撫でる。


「おあー!急に何?!」

「いや、偉いなあって」

「三つ編みにするの面倒なんだが?」

「それはゴメン」


 ぱっと手を放し、あちこちはねて大変なことになった髪を見る。カナデはあーあと言って髪をほどく。肩より下まである髪は癖のないまっすぐでサラリとした質感をしている。

 それを適当に一つにまとめて結ぶ。応急処置だ。


「親父」

「はい」

「女性の髪は命だよ」

「やめますもうしません」

「せめて外以外ね」


 静かに説教され、カイは反省した。

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