こぼれ話その1 魔法石のその後
おふざけ回です。
反乱軍降伏後、オルディア軍が片付けをしている最中に事件は起きた。
「はぁ~~!? 魔法石を壊したぁ!?」
「ほんっとごめん! バンジェロの包囲から逃げ出すには仕方なかったんだ!」
バンジェロとの戦いにより木端微塵に粉砕された魔法石は、魔力が流出した事で消滅し、回収が不可能となっていた。
ルークはその事実をありのまま伝え、土下座して謝罪していた。
「あのさぁ......アタイ言わなかったっけ? めっちゃ高いって言ったよね? 言った記憶があるんだけど、フィアンセ君はそんなに忘れっぽかったっけ?」
「ほんとにすいません......どうしても壊すしか無かったんです......許してください......」
ルークはひたすら謝り続けるしかなかった。周囲からすれば奇妙に映っただろう。
名も知らぬ女が国王の側近を土下座させているという状況に周囲はざわめいていた。
「まぁそうかっかするな。ルークも必要に迫られて仕方なかったのだろう。そんなに大事な物なら俺の方で建て替えてやるから値を言え」
エストリヤは仲裁に入ったレオに耳打ちをする。値段を聞いたレオは驚いた顔で冷や汗を垂らす。
「そんなにするのか!? この石一つで!?」
「そんなにするんだよ!」
「......ルーク、いくら危機的状況とはいえ人の物を壊すのはよくない。自分で返済するように」
レオはそれだけ言い残し、その場を立ち去る。
「なんだよ! 助けてくれんじゃねぇのかよ!? ちょ待てって! なぁ待ってくださいお願いします!」
現場は再びルークとエストリヤの二人だけとなった。
「エストリヤさん......必ず弁償はしますので......その、値段だけ教えていただけますでしょうか......」
「1億1000万Gだよ」
「......ん? ......へ?」
あまりにも高額な金額に思わず耳を疑う。これから1億を超える借金を背負って生きなければならないのかと放心状態になっていた。
「む? どうしたのだ二人共、何やら揉め事のようだが?」
「あ、二人目の馬鹿発見」
「?」
エストリヤはブレイブをその場に正座させると同じように説教をはじめる。
「大体、あんたがさっさと間に合ってたら魔法石も壊れずに済んだんじゃないの!? なーにが王国最強の王の刃だよ! 遅れてくるヒーローが格好いいと思ってんの!?」
「......格好いいのではないか?」
「うん、ごめん。それは普通に格好いい」
(なんの会話してんのこの二人......?)
よく分からないやり取りが展開される中、アリアが近くを通る。
騎士団長と王の右腕が二人仲良く正座させられている状況に目を疑い駆け寄る。
「お二人ともどうして正座を!? エストリヤ、これは一体?」
「いやぁ実はね――」
エストリヤから魔法石の価値とルークの行動を聞いたアリアは絶句する。
しかし、現場にいたからこそ切迫した状況だったのも理解できる為、なるべく二人を擁護しようと助け船を出す事を決める。
「あの時は私もいましたが、一刻を争う事態でした。その......そうしなければ逃げられなかったのですよね?」
「あぁ勿論! そうしなければ逃げ――」
「いや? 逃げられたぞ? 僕が横腹を突いた時に僅かな隙が生まれたからな」
(おい何言ってんだこの天然野郎は!?)
ブレイブの発言を聞いたアリアとエストリヤは恐ろしい笑みを浮かべる。
「なるほどなるほど、じゃあつまりフィアンセ君は逃げられた状況にも関わらず、自分の見栄の為に戦って、挙句の果てにアタイからの借り物を壊したってことね~ふ~ん?」
「ルーク様? 私たちは貴方様の指示の下で動いていたのですから、逃げるという判断をしなかったのは貴方の責任です。お一人で全て、背負ってくださいね?」
その後、エストリヤは遅れたブレイブにも責任の一端があると言い、二人はそれぞれ5,500万Gの借金を背負う事になった。




