二人っきり?
将之さんは私の動揺なんて、まったく気づいていないのか、涼やかな笑顔。
「行こうよ」
「でも、いいんですか? 私なんかと一緒で」
ぐちゃぐちゃになっている私の思考回路が、そんな言葉を口から吐き出させた。
YesかNo。それだけでよかったはず。
No。
頭の中の選択肢としてはあっても、妄想に捉われた私の感情が、口からそんな言葉を出そうとするのを邪魔してしまう。
Yes。その言葉だけで、十分だったはず。そう答えれば、将之さんといっぱいお話ができる時間が持てる。それで十分なはずなのに、冷静な私が自分でよいのかと確認したがる。
将之さんから、どんな答えを期待すると言うのか?
「君だからだよ」
「君が好きだからだよ」
そんな言葉が返ってくるはずもない。
期待とは別の否定的な言葉の方が可能性が高い。
私はそんな否定的な言葉を聞きたかったの?
自問自答。
「当り前じゃんか」
にこりと微笑む将之さん。
その言葉を肯定的に受け取ってしまう私。
もう何が何だか分からない。
涙さえ出て来そうな感じがする。
ここで泣き出せば、変な奴だと思われかねない。
別に好きだって、言われた訳じゃないんだよ。
冷静な私が熱くなる胸を急激に冷やそうとした。
そう。そう。ただ、本が好きな私と本の話をしたいだけかも知れない。
それ以外考えられない。
そう思うと、少しは冷静さを取り戻せそうになる。
本当にそう? もしかして、やっぱ好かれているんじゃ?
そんな気持ちも負けじと踏ん張っている。
「どこに行く?」
何も返せずにいる私に将之さんが言った。
「そ、そ、そうですね。そこのお店のジャンボパフェが美味しいんですよ」
何も考えていない。一緒に入るのが男の子だと言う事を考えもせず、いつものお店をそのまま口に出した。
「あっ。でも、パフェなんか女の子の食べ物ですよね」
「俺は別の物を食べたらいいんだろ?
じゃあ、行こうか」
将之さんが歩き始めた。
少し遅れて歩き始めた近藤さんの表情はちょっと困惑気味。
その表情を見ると、本当にこのまま行っていいの? と言う気持ちが揺り戻してくる。
でも、もうここまで来て引き返すなんてできやしない。それは冷静な私も同じ結論。
「あ。そこのお店です」
私の言葉に、将之さんは立ち止まって、お店のドアを指さした。
「はい」
私の言葉と共に、将之さんがドアに手をかけた。
「俺はいいわ。このまま帰るわ」
近藤さんがそう言って、軽く手をあげた。
えっ? 私はこの展開に驚いた。
このまま近藤さんが帰れば、私は将之さんと二人だけになってしまう。
落ち着き始めていた私の思考回路は再びぐちゃぐちゃになり始めた。
二人だけ。うれしいじゃない。まるで、デート?
でも、二人だけになって、どんなお話ができるの?
何を話せばいいの?
暇を持て余して、結局つまんない奴と思われない?
知りたい事、聞きたい事いっぱいある。
でも、そんな事聞いたら、鬱陶しい奴と思われて、嫌われない?
その前に、それでは早紀さんに悪いじゃない。
きっと、二人っきりなんて、将之さんも望んでなんかいないはず。
近藤さんを引きとめるに違いない。
結論に至り、頷いた時、将之さんの声が頭の中に届いた。
「おっ?そう?じゃあ、また明日な」
予想外の反応。
目が大きく、口がぽかっと開いた状態で、固まってしまった。
将之さんが軽く片手を振った。
それに応えるかのように、近藤さんも手を振り、店から離れて行った。
「入ろうよ」
将之さんが私を手招きした。




