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第74話 「生徒会」

 「生徒会に入りませんか?」


 いつも通り三人でお昼を食べていると、突然竜崎がそう言ってきた。


「なんだよ突然……」

「もうそろそろ一年生でも生徒会に入れる時期ですので、聞いてみようと思いまして」

「はあ……てか、竜崎は入るつもりなのか?」

「ええ、私は生徒会長の座を狙っていますので」

「えっ」


 まだ一年生だというのに、生徒会長を目指しているとは立派な心意気だ。


「……でも、一年でなれるもんなのか?」

「ええ、校則などを何度も確認しましたがルール上はいけますわ」

「ルール上はって……結構難しいんじゃないのか?」

「やりますわ」


 竜崎の顔を見ると、自信に満ち溢れているのが見える。

まあ、やる気があるのはいいことなのではないだろうか。


「ま、俺は応援してるよ」

「僕もりゅりゅを応援するよ」

「ありがとうございますっ。それで、生徒会に入るつもりはありませんか?」


 なんと、竜崎が話題をループしてきた。

そんなに俺たちに生徒会へ入ってほしいのだろうか。

正直、俺はめんどくさそうだから入りたくないが……。


 俺がそう思っていると、先輩が俺の顔を見てこう言った。


「まあまあ、一度りゅりゅの話を聞いてみようよ。入りたくなるような誘い文句があるかもしれないよ」

「確かに、聞いてみてからでも遅くはないか……。じゃあ、なんか入りたくなるようなこと言ってくれよ竜崎」

「ええ、もちろん。誘う側として説明はきちんといたしますわっ」


 そう言うと、竜崎はどこからかフリップを出してきた。

そこには「生徒会に入る4つのメリット」と書いてある。


「……そのフリップどこから出したんだよ」

「気にしないでください。ではまず一つめ『内申点』 よく言われる定番のメリットですわっ」

「おおっ……で、内申点上がったらなにがいいんだ?」

 

 俺がそう聞くと、竜崎が近づいてくる。


「ち、近い」

「いいところに気づきましたね。上がると大学の推薦入試などで有利なのですが……正直これだけを目的にして生徒会に入るほどではないですわ」

「はあ」

「それより、ここからが本番ですわっ」


 そして竜崎は残りのメリットを話し始めた──。

「社会で役立つスキルが〜」とか「他学年の先輩や後輩との繋がりが〜」などを、

熱く語ってくれた。

だが、社会でのスキルはともかく、

人との繋がりの方は、もともと俺は人と関わるのがあまり得意ではない上に、

そもそも俺にはもう先輩がいるので、正直惹かれない。

あと、忙しくなって帰りが遅くなりそうなのも嫌だ。


 ということで──。


「ここまで語ってくれて悪いが……俺は入らないっ」


 俺は断った。


「あら、そうですか残念ですわ。それよりっ、先輩はどうしますかっ?」

 

 竜崎が目を輝かせて先輩を見ている。

もしや、俺はどうでもよくて先輩を生徒会に入れるのが本命だったのではないだろうか。

だとしたらそれは止めなくてはならない。

なぜなら、先輩が生徒会に行ってしまっては、俺も先輩に会うために生徒会に入らざるを得ないからだっ。


「さあ、先輩はどうしますかっ」

「うーん、どうしようかな〜」

(頼む、入らないって言ってくれえっ)


 俺が必死にそう祈っていると、先輩が口を開いた。


「僕は、帰りが遅くなってしまいそうだから遠慮しておくよ。ごめんね」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は心の中でガッツポーズを決めた。


(よっしゃああっっ)


 先輩に断られ、竜崎が残念そうな顔になっている。

だが、すぐに自信に満ちた顔に戻った。


「……なんとなく、こうなることは分かっていましたわ。決めましたわ。私、生徒会長になります」

「それはいいけど……話が繋がってないぞ。なんで断られたら生徒会長になる決心がつくんだよ」


 俺は思わずツッコんでしまった。

すると、竜崎が笑いながらこう言ってきた。


「帰りが遅くなったり忙しくなりそうなのが不安だということなら、私が生徒会長になったあと、権限を使って二人専用の役職を作り、仕事はさせないようにすればいいのですわっ」

「はあっ?」


 意味の分からない発言に声が漏れてしまう。

そこまでして俺たちを生徒会に入れる必要があるのだろうか。


「い、いやそんな形で生徒会に入ってもいいのかよ……」

「いいんですわっ。なぜなら私が生徒会長になるので」


 これはダメだ。話が通じない。


「ちょ、先輩も竜崎になんか言ってあげてくださいよ」

「それなら、僕も生徒会に入れるね」

「ちょっと先輩っ、なに竜崎に賛同してるんですかっ」

「ふふふん。そうと決まれば、早速、選挙に向けた草の根活動ですわ〜っっっ」


 竜崎はそう言いながら、衝撃波が発生しそうなほどの速度で、どこかへ走り去っていった──。


「……行っちゃいましたね」

「行っちゃったね」

「行っちゃったね……って、よく平然としてられますね」

「まあ、生徒会長になるために努力するのは悪いことではないし、生徒会に入ることも、りゅりゅが当選してから考えればいいよ」

「はあ……まあ確かに」

「ふふっ、それじゃあお昼ご飯へ戻ろうか」


 そう言うと、先輩はお昼ご飯を食べ始めた。

……先輩が言っている通り、今は忘れて、あとで考えればいいのだが、

本当に竜崎が生徒会長になったらどうなってしまうのだろうか──。

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