第65話 「読心術」
いつものようにお昼休みに、先輩たちと三人でご飯を食べている時、
俺はふと午後の授業のことを思い出し「嫌だなあ、もう帰りたいなあ」と思っていた。
すると、たまたま先輩と目が合い、
先輩に「ふふ、気持ちは分かるけど、帰ったらダメだよ枕木君」と言われてしまった。
「もお〜俺の顔見ないでくださいよお〜」
「たまたま視界に入ってしまってね。ふふ、ごめんね」
「まあ別にいいですけど……っていうか、先輩ってよく顔見るだけで考えてることを当ててきますけど、どういう仕組みなんですか? それ」
俺が、前から少し思っていた疑問を投げかけると、竜崎も乗ってきた。
「確かに、私も気になります。それに、枕木が読まれているのはよく見ますが、他の人もいけるのか? なども気になりますわ」
「おや、二人とも興味を持ってくるとは驚いたよ。まあ、話したいところだけれど、お昼休みだと時間が足りないかもね。二人とも、今日の放課後は空いているかな?」
「俺は大丈夫ですよ」
「私も、今日は空いていますわ」
「ふふ、じゃあ決まりだね。じゃあ放課後、僕の家に行って話そうか」
俺はその言葉に舞い上がった。
先輩の家に行けるなんて嬉しすぎる。
だが、俺が舞い上がったのは一瞬だった。
それは……俺以上に竜崎が喜んでいたからだ。
自分以上に上がってる人がいると、冷静になってしまう。
竜崎は目を輝かせ、その場で舞っていたり、
他にも助走をつけて飛び、まるでアイススケーターかのように回転ジャンプしている。
……空中で十回転以上しているように見えたが、きっと気のせいだろう。
とにかく、竜崎の喜びようはまさに狂喜乱舞と言えるほどだった。
(まあそれもしょうがないか……竜崎は俺と違って忙しいから、その分先輩の家に行く機会も少ないだろうしなっ。ははっ。)
「……今、あなた変なこと思いましたよね?」
「さあ〜?」
そのあと、竜崎と軽く言い争いをしていると、
先輩が笑いながら「ふふ、楽しそうだね。さて、僕はそろそろ教室へ戻るよ」と言い、戻っていった。
……時計を見ると、次の授業がもうそろそろ始まる時間になっていて、
それを見て俺たちも言い争いを止め、急いで教室へ戻った──。
そして時が経ち──。
「さあ、二人とも入って」
「お邪魔します、先輩」
「先輩のお家ですわぁっ。お邪魔いたしますっ」
俺たちは先輩の家に入った。
竜崎のテンションがおかしいが、まあいつも通りだしいいだろう。
「そういえば、リオさんもお母さんもいないんですね」
「ん? ああ、また二人でお出かけの刑さ」
どうやら、お母さんは先日のリオさんの言葉を気にしていたようだ。
……先輩も似たようなことを言っていた気がするが、先輩には刑は科されないのだろうか。
「先輩のお母様にお会いできると思っていたのに…残念ですわ」
「ふふ、それはまた今度だね。さて、お茶とお菓子を持ってくるから、そのあと今日の本題を話そうか」
そして、先輩がお菓子とお茶を持ってきて、俺たちは話し始めた。
ちなみに先輩が持ってきたお菓子は、また「たけのこの森」だ。
「さてと、枕木君は、なんで考えていることが分かるのか、その仕組みが気になるんだったかな?」
「そうですよ。見ただけでなんておかしいですよ」
「そうかな? まあ真面目に答えると、日常生活で「あっ、この人嘘ついてるな」って思う時があるだろう? それを見抜くのが生まれつき得意なだけさ」
「……嘘かどうか分かるだけならそれでいいですけど、先輩は心まで読んでくるじゃないですか」
「顔は情報が沢山出ている場所だからね。そこを見れば分かるのさ」
……俺はもう一度「なんで見たら分かるんですか?」と言おうとしたが、
これ以上言っても「生まれつきさ」くらいしか返って来なさそうなので、諦めることにした。
心を見抜く仕組みは、そういうものとして考えた方がいいのかもしれない。
「さて、枕木君の質問に答えたところで、次はりゅりゅの質問に答えようか」
「はい、先輩は枕木以外の人も顔を見れば分かるのか、教えてほしいですわ」
「ふふん、答えは「YES」だよ。ただし、分かりやすい枕木君と違って、他の人はじーっと見ないと分からないけどね」
俺は今、分かりやすいと言われてしまった。
そんなに俺は顔に出ているのだろうか。
「せ、先輩。俺ってそんなに分かりやすいんですか……?」
「うん、君のは一瞬見ただけで分かってしまうよ。分かりやすすぎて、僕が
その気になっていない時でも頭の中が見えてしまうほどにね」
「そ、そんなあ」
どうやら俺は、よっぽど分かりやすいらしい。
これからは、先輩に見られても恥ずかしくないようなことを考えなければ……。
それはともかく、そのあと竜崎が本当に自分のも見えるのか試してみたり、
本当に一瞬でも俺の思考を読めるのかなどを試したりしたが、
いずれも先輩は思考を読むことができた。
なんて恐ろしいんだ。
そんなこんなで遊んでいると、すっかり日が沈み、家に帰る時間になってしまった。
「あら、もうこんな時間ですわ。私はそろそろ帰ります……」
「そうだな、俺も帰ろうかな」
「そっか、ふふ、今日は楽しかったよ」
先輩が、とても嬉しそうに笑っている。
その笑顔が、普段と比べてもとてもよいものだったので、
俺は先輩に「なんでそんなに笑ってるんですか?」と聞いた。
「だって、二人とも顔を見た時、心の中まで楽しそうだったからね」
「「先輩……」」
先輩の思わぬ一言に、思わず竜崎と言葉が被ってしまう。
俺たち二人が、楽しそうにしているだけで、
そんなに笑顔になっていたとは思わなかった。
「さて、エントランスまでお見送りをするよ……それと、これからもよろしくね。二人とも──」
「「はいっ」」
また竜崎と言葉が被った。
……まあ、楽しいしこれでいいのかもしれない──。




