第4話 「同級生」
──ある日の昼休み
「…みたいなことが前の授業であったんですよ」
『それは大変だったね』
「いやもうほんとに…」
『ふふっ、ところで』
「はい?」
『君は同級生と知り合いになったりはしないのかい?』
「えっ」
俺は先輩の急な一言に驚いた。
なぜならそんなことは考えたことがなかったからだ。
「きゅ…急になんですか」
『君が僕以外と話しているのを見たことがないからね』
「俺は先輩がいれば別にそれだけで…」
『それは嬉しい言葉だね、でも同級生にも一人くらい話せる人がいてもいいと思うよ』
『僕が卒業したあと、君がひとりぼっちで寂しい思いをしていたら悲しいからね』
その言葉を聞いて俺は少しハッとした。
確かに同級生にも知り合いがいた方が、テストの話題なども共有できる。
それに先輩は俺より早く学校を卒業してしまう。
今のままでは俺の高校最後の一年はぼっちで過ごすことになるだろう。
『まあ、僕が留年すれば君と同級生になれるけどね』
「えっ」
『冗談だよ』
『とにかく話しやすそうな人を探してみたらいいんじゃないかな』
先輩の冗談は本気か分からなくて、毎回ドキドキする。
その後も昼休みが終わるまでいろいろと話し、俺も先輩も自分のクラスへ戻った。
(話しやすい人…いるのか?)
俺は自分の席からキョロキョロとクラス中を見回してみた。
傍から見ればだいぶ気持ちの悪い動きだったに違いない。
とりあえず見回して分かったことは、もうグループができていて俺以外のぼっちはいないということだ。
陽キャは陽キャで陰キャも陰キャ同士で楽しそうに話しており、俺は疎外感を感じた。
結局何もできずにその日の学校が終わった。
──放課後
俺は先輩と校舎裏で話していた。
『それで結局ダメだったんだね』
「はい…」
『まあ無理はしなくていいんじゃないかな』
『もし本当にダメだったら僕が留年してあげるよ』
「えっ、冗談じゃなかったんですか」
そして先輩は俺の顔を見たあと、目を細めながら少し笑って、こう言った。
『さあ、どっちかな』
俺はすごくドキドキしたが、それと同時に、このままではなにも解決していないということに気づいた。
「いや、このままだと同級生の話せる人ができないじゃないですか!?」
『そうだね』
「な…なんかアドバイスとかくださいよ」
『アドバイスかい?そうだね…君は…』
『人と話すのが苦手そうだから待ってたらいいんじゃないかな』
それを聞いた瞬間、俺はずっこけそうになった。
それでいいなら誰も友達ができないことで悩まないはずである。
だが言い返そうにも事実ではあるので、俺は何も言えずに下を向いた。
『そう落ち込まないでくれよ、それに他にも手段はあるさ』
「留年じゃないですよね」
『違うよ』
「じゃあなんですか」
『部活に入ればいいんじゃないのかな』
確かに、と俺は思った。
部活であれば今以上に人と関わるだろうし、それだけチャンスも増えるはずだ。
それにもし、先輩も入ってくれるなら…。
そんなことを考えていると、先輩が俺の顔を見ながらこう言った。
『僕は入らないけどね』
「えっ」
それを聞いた瞬間、俺はへなへなになってしまった。
友達を作りながら先輩と部活ができる…その幻想が打ち砕かれたからだろう。
『18時までには帰ってご飯を作らないといけないからね』
『それさえなければ僕も入りたいのだけれど』
「そ…そんな」
「先輩がいないなら部活はやめておきます…」
俺がまた下を向いていると、
まるで今の俺の気分を表しているかのように日が沈み始めていた。
『そろそろ僕は帰ろうかな』
「うう…」
『ほら、顔をあげてくれよ。同級生のことはまた今度一緒に考えてあげるよ』
「先輩…」
『じゃあまたね』
そう言うと先輩は手を振りながら帰っていった。
落ち込んでいたが、先輩のおかげでまた元気が出てくる。
「よし、今度こそいい方法を考えるぞ」
俺はそう呟き、鼻歌交じりで帰路についた。
なんだかんだで先輩のおかげでいい一日になった気がする。
だがその時の俺は、背後からの視線に気づいていなかった──。




