第37話 「本当に男?」
俺は夏休みのお昼、誰とも予定が合わず、
仕方なく宿題を進めていた。
だが、あまり集中できない。
そもそも俺はあまり集中力がある方ではないし、
宿題も嫌々やっているせいだろう。
先輩と遊びたいという気持ちが、
俺の中でどんどん高まっていく。
なので、俺はその気持ちを抑えるために、
先輩のことを考えながら宿題をすることにした。
(先輩は綺麗で……そして可愛い。それでいて不思議な感じだったり、嘘を平気でついたりする。でもそれも可愛くて、あと実は男で……ん? 男?)
そうだ、先輩は男だった。
最近、そのことを忘れてしまっていた。
まあ、俺は男でも先輩は綺麗で可愛いからいいのだが……。
だが、ここで俺は余計なことを考えてしまう。
「実は男じゃないんじゃないか?」と。
本当は女の子だけど、
俺をからかうために男のふりをしているのではないかと。
そんなことを考えてしまい、
勉強に集中できなくなってしまった。
このままでは思考を先輩に支配されてしまう。
それはまずい。
なので、俺は疑念を取り除くために、
先輩に電話をかけてみることにした。
……が、先輩が電話に出ることはなかった。
──よく考えれば、予定が合わないから遊んでいないわけで、
そんな時に電話をしても、
予定があるかもしれないし、出なくてもおかしくない。
だが、その日はもう勉強に取り掛かることはなかった。
先輩のことだけが頭の中にあり、
まったく内容が入ってこなくなったからだ。
そんなことがあり、
寝る前に「今度会った時に本当に男なのか聞いてみようかな?」
なんてことを考えながら、布団へ入ろうとすると、
先輩から電話がかかってきた。
『ごめんね、こんな夜に。君がお昼に電話をかけてきたから、なにかあったのかと思ってね』
「先輩……そうなんです。先輩のせいで宿題が進まなかったんです」
『ええ〜』
そのあと、俺は先輩に思っていたことを話した。
先輩が実は女の子で、俺を騙しているんじゃないのかということ。
それと、宿題が進まなかったことを、全て。
『……相変わらず、君はよく分からないところで引っかかるんだね』
「す、すいません」
『そもそも、一緒にプールへ行ったりしたのに、どうして疑うのか分からないのだけれど』
「でも……」
『まあ、君がよく分からないことを考えたり、他責する癖があるのは知っているからいいさ』
どうやら、先輩に俺は他責癖があると思われていたらしい。
だが、当たっているので言い返せなかった。
『そうだ、明日、君の家へ行ってもいいかな?』
「え? いいですけど……」
『ふふ、そしたら明日、僕が男だって教えてあげるよ』
そう言うと、先輩は電話を切った。
男だと教えるって、いったいなんなのだろうか。
……想像しても、いやらしいことしか思いつかない。
その日、俺は変な気持ちになって、
ほぼ眠れなかった──。
次の日──。
『やあ、枕木君』
先輩が俺の家にやってきた。
相変わらず、綺麗だ。
スカートを穿いていて、
それもまた素晴らしい。
だが、どうやって男だと教えてくれるのだろうか?
それを考えるだけで、ドキドキして、
頭が沸騰してしまいそうだ。
そして、俺は先輩を部屋へ案内した。
『はあ、枕木君の部屋はなぜだか落ち着くよ。なんでだろうね』
「そ、それより先輩。どう男だって教えてくれるんですか……」
『ふふ、そうだったね。じゃあ教えてあげるよ』
すると、先輩は自分の上の服をまくり上げようとした。
「ちょっ、ちょちょちょ、教えるってそういう感じのやつですか!? わ…分かりました。でもそれなら、先にシャワーを……」
『違うよ』
その言葉で、俺は戸惑った。
ここまできて、それ以外があるのだろうか?
『枕木君はスケベだね』
「お、俺はスケベじゃ……」
俺がスケベに対して反論しようとすると、
先輩は少しだけ服をまくり上げて、お腹を見せてきた。
『ほら、これが男だって証拠だよ』
「はい?」
先輩のお腹は細いが、ガリガリではなく、
健康的で柔らかそうな、触りたくなるようなお腹だった。
綺麗なへそも見えて、俺の情欲を煽ってきているような、
見ているだけで、興奮してしまうものだった。
しかし、これがどう男の証拠になるのだろうか?
「せ、先輩これのどこが男の証拠なんですか……?」
『くびれの位置さ』
「はい?」
先輩の話によると、性別によってくびれの位置が違うらしく、
男性はくびれがへそと同じ位置。
女性はくびれがへそより上にあるらしい。
そして、先輩はくびれがへそと大体同じ位置にあった。
『どうかな?これで僕が男だと分かってくれたかな?』
確かにその話を信じるなら先輩は男ということになるが、
俺は信じられない。
あと、俺はもっといやらしいことになるかと思って期待していたが、
そんなことはなかったことによる落胆もあって、
余計に信じられない。
もう少し粘れば、いやらしいことが起きるかもしれないので、
俺は粘ることにした。
「そ、そもそも、それって個人差がありますよね? だから、先輩はたまたまくびれがへそと同じ位置の女の子なんじゃないですか!?」
『……確かにそうだね。これは僕が悪かったよ』
やった、俺は先輩に勝った。
『というか、君はどうしてそんなに僕が男かどうか気になるのかな?』
「だって……出会った時に男って言われたのに女の子だったらガッカリするっていうか……」
『ふうん、そっか……じゃあ、僕も最終手段に出るしかないね』
すると、先輩は俺の腕を掴んで、自分のスカートに近づけた。
「な、なにするんですか」
『君が信じてくれないからね』
そして、先輩は俺の腕を先輩のスカートの中に入れた。
これは俺が望んでいた、いやらしい展開になった……だが、
俺は驚いて、先輩の手を払ってしまった。
『おや?僕は恥ずかしいけど頑張って男だと証明しようとしたのだけれど』
「い、いやいいです。も、もう男だって分かりましたから」
『ふうん、そっか、残念だね。君がスケベなことを考えてたから望み通りにしてあげたのに』
どうやら、俺の邪な考えは全て見通されていたらしい。
『まあ、とりあえず僕が男だと信じてくれたということでいいかな?』
「……まあ、はい」
『ふふ、よかった。なら、僕は帰るよ』
そして、俺は先輩を玄関まで見送り、先輩は帰っていった。
夏休みに、先輩と会えてよかった。
だが、よく考えたら男かどうか分かっていない。
もしかしたら、スカートに手を入れさせたのも、
俺が途中で止めるのを読んでいたのかもしれない。
その日の夜、俺はあのままスカートに手を入れておけば良かったと後悔した。
後日──。
先輩が普通に身分証明書の性別の部分だけを写真で送ってくれた。
そこには男と書いてあり、最初からこうしてもらえばよかったのかもしれない──。




