第34話 「期末テスト」
俺は今、土曜日だというのにとても憂鬱だ。
なぜなら……月曜日から期末テストがあるからだ。
一応、毎日勉強しているとはいえ、
やはりテストは嫌いだ。
もし、点数が低かったらと思うと……。
いや、点数が低くても正直俺は気にしない。
それよりも、先輩になにか言われる方が、
俺は嫌だ。
そんなことを思いながら、
朝ご飯を作ろうとすると、
先輩からメールが届いた。
【先輩】 『やあ、そろそろ期末テストだね』
【まくらぎ】 「朝からそんな憂鬱になること言わないでください」
俺がそう送ると、
今度はメールではなく電話がかかってきた。
『やあ、憂鬱にしてすまないね』
「なんですか先輩」
『ん〜、メール送ったらすぐに返信してくれたから話したいなって』
よく分からないが、
せっかく先輩から電話をかけてきたんだし、
俺は期末テストのことを愚痴った。
──気づくと、30分以上、愚痴を話していた。
普段なら途中で、
先輩が『君は愚痴が多いね』と言ってきそうだが、
自分から電話をかけたからなのか、
今日はずっと聞いてくれた。
「す、すいません。こんな話しちゃって……」
『ふふっ、いいよ。僕から電話をかけたんだからね』
「というか、なんで急にメール送ってきたんですか」
『なんでって……君がまたテストのことを考えて、暗い気分になっていそうだったからね』
どうやら、俺の考えていることは、
先輩には直接顔を見なくても分かってしまうらしい。
『まあ、頑張ってね枕木君。これを乗り切ったら夏休みさ』
そうだ、忘れかけていたが、
期末テストを終えれば、1学期はほぼ終わりで、
あとは夏休みだ。
『ふふ、夏休みになったらいっぱい遊ぼうね。じゃあね枕木君』
「……さようなら先輩」
そして電話は終わった。
(そうだ……これを乗り越えれば夏休みだ……)
俺はそのことを考え、テンションが上がってくる。
夏休みになったら、俺は先輩と海に行きたいし、
他にも映画なんかも行って、
最後には浴衣を着た先輩と、花火を──。
妄想が止まらなくなってくる。
こうなったら勉強するしかない。
1時間後──。
飽きた。
よく考えたら、別に勉強を頑張らなくても夏休みは来る。
それに今回は、先輩から条件なども出されていないし、
必死に勉強しなくても……なんてことを思っていると、
また先輩から電話がかかってきた。
「なんですか」
『君が勉強に飽きたころかと思ってね』
「はあ……」
『勉強は大事だよ、それじゃあね枕木君』
そう言うと、先輩は電話を切った。
この電話はなんだったのだろうか。
まあ、確かに勉強は大事だ。
先輩はそれを思い出させてくれたのだろう。
こうなったら、勉強するしかない──。
1時間後──。
飽きた。
大事なのは分かっているがやる気が出ない。
……考えてみれば、今まで頑張ってこれたのは、
先輩からのご褒美があるからで、
それがなければ俺はやる気が出ないのだ。
すると、また先輩から電話がかかってきた。
「な、なんですか」
『君がご褒美がなくてやる気が無くなっているころだと思ってね』
俺の部屋には、カメラと盗聴器でも仕掛けられているのだろうか。
そう思うくらい、先輩の推理が当たっている。
「だって……」
『本当は僕もご褒美をあげたいところだけれど、あげたらまたご褒美がないと君が頑張れなくなってしまうからね』
確かにそうだ。
ご褒美がなければ勉強できなくなってしまっては、
もし、先輩がいなくなったら、俺は全く勉強をしなくなるだろう。
『まあ、今回は成績が悪くても君から離れたりはしないけれど……頑張ってくれると僕は嬉しいな』
「先輩……」
俺は先輩の一言で今度こそやる気が出た気がする。
「俺、頑張ります」
『ふふっ、頑張ってね、枕木君』
そして、俺は体からやる気を引き出し、
土日を全力で勉強に費やした。
月曜日から試験だというのに、
土日に本気を出すのは遅い気もしたが、
とにかく全力で勉強に取り組んだ。
そしてテスト当日──。
(これは昨日やったやつだ。こっちはあの公式を使えば……)
俺はテストに全力で取り組んだ。
今までの集大成を、ぶつけるように。
そして──。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。
「はい、ではペンを置いてください」
試験監督の合図で、全員がほっと一息をつく。
ついに……ついに期末テストが終わったのだ。
手応えは正直、あまり覚えていないが、
とにかくやりきることができた。
テストを終え、帰ろうとすると、
先輩もテストが終わったのか、俺の教室へ来た。
「あれ、ここに来るなんて珍しいですね先輩」
『ふふっ、君とりゅりゅに会いたくてね』
「あら、先輩来てたのですか」
『そうなんだよ』
二人が会話している最中、
俺はやりきった達成感と疲労で、
倒れそうになった。
俺がふらっとすると、
先輩と竜崎が支えてくれた。
「おや、大丈夫でしょうか」
『大丈夫?枕木君』
「す、すいません。少し疲れちゃって」
『なら、よかったよ』
そのあと、三人で少し話し、
このままお昼をみんなで食べに行くことになった。
「何を食べに行きましょうか?」
「俺は割となんでも……」
『そしたら僕は、パスタが食べたいな』
そして、行き先が決まり、俺たちはお店へ入った。
注文し、料理を待っていると、先輩が口を開いた。
『これで、もう少ししたら夏休みだね』
「そうですわね」
「俺はもうテストで疲れましたよ……」
『ふふっ、夏休みになったら、みんなで遊ぼうね』
「「はい」」
俺と竜崎が同時に返事をしてしまった。
お互いに顔を見て、睨み合っていると、
先輩が少し笑った。
『ふふっ、仲がいいね。まあとにかく、これからもよろしくね、二人とも』
俺の高校生活は、まだまだ始まったばかりだ──。




