第33話 「神社」
ある日の放課後、先輩にさよならを言い、
なんとなく、いつもと違う道で家に帰っていると、
近くに神社があった。
(へー、こんなとこに神社あるんだ)
俺はせっかくだし、お参りをしていくことにした。
その神社の敷地はあまり大きくなさそうで、高い木々に囲まれている。
鳥居は古くなっているのか、塗装が剥がれていて、
参道も、掃除などをしていないのか、落ち葉で道が隠れている。
俺は、少し不気味に思いながら歩き、
賽銭箱の前まで辿り着いた。
建物もなにやら、ボロボロで人の手が入っていなさそうだが、
あまり考えすぎても怖くなるだけなので、
俺は早くお参りしようと、財布を開き、五円を取り出した。
(ご縁があるから、五円でいいか。っていうか、なに願おうかな。そうだ、先輩の冬服見たいし、冬になりますように。)
俺はそう、冗談まじりに思いながら、お参りし、
終わったあと、家へ帰った。
家に帰り、明日の準備をしている最中、
「あの神社なんだったんだろ」と、
今日のことを思い出したが、
考えても仕方ないので準備を終え、その日は寝た──。
次の日──。
朝、突然目が覚めた。
寒い。
昨日は暑くてクーラーをつけていたというのに、とにかく寒い。
まるで冬の朝のようだ。
俺は急いでクーラーの電源を切り、
まずは日光を浴びようと、カーテンを開けると、
外では雪が降っていた。
俺は驚いてニュースを見るためにリビングへ行き、テレビをつけた。
どうやら謎の異常気象で夏だというのに、今日は雪らしい。
そのニュースを見た瞬間、
俺の頭によぎったのは、昨日のお参りだった。
(いや、そんな……まさかね)
俺はそのことをあまり考えないようにし、
急いで、タンスから冬用の制服を引っ張り出し、
着替えて学校へ向かった。
学校が休みにならないか少し期待したが、
あまり積もってはいないため、
休みにはならなかった。
休みにならず、少し落ち込みながら校門へたどり着くと、
そこにはマフラーをつけ、黒いタイツを履いた先輩が立っていた。
冬の先輩が見れて、俺は嬉しくなった。
『やあ、枕木君』
「おはようございます先輩」
『今日はびっくりしたね、まさか夏に雪が降るとは思わなかったよ』
「……ですね」
俺は昨日の神社のことを言おうとしたが、
言っても白い目で見られるだけだろうし、
そんなことより先輩が可愛い。
先輩の白い髪と、雪の白さが合わさって、
先輩が雪の妖精のようで、
頬も寒さのせいか、赤くなっていて、
まるで、俺のことが好きだと言っているみたいだ。
『……君がなにを考えているか知らないけれど、これは寒さのせいだよ』
「なっ、勝手に俺の表情見ないでください」
『ふふっ』
──俺は冬の先輩と会って分かったことがある。
先輩は夏より冬の方が似合っている。
厚着で、肌の露出が少ないのがいいし、
スカートも黒タイツを履くという、素晴らしさ。
そしてなにより、白が多くなる冬は、
先輩の白い見た目にぴったりだ──。
そんなことを思いながら先輩をじっと見ていると、
先輩が眉を下げながら、こちらを見てきた。
『はあ、君は僕をスケベな目で見るのが好きだね』
「ち、違いますよ」
『ふうん……まあいいや。僕はそろそろ教室へ行くよ』
そう言うと、先輩は教室へ向かってしまった。
俺は「スケベなんかじゃないっ」と思ったあと、
自分の教室へ向かった。
そして授業を受け、昼休みになった──。
「はあ、朝雪が降っていて驚いてしまいましたわ」
『やっぱり、みんな驚いてしまうよね。予報だと30度を超えていたのに』
昼休みの話題は当然、今日の異常気象についてだ。
……竜崎も先輩と同じで、マフラーをつけ、タイツを履いている。
だが、やはり先輩の方が素晴らしい。
なんてこと竜崎を見ながら思っていると……。
「今日のあなた、視線がいやらしいですわ」
「えっ、いや」
『枕木君だからね』
「そ、それ、どういう意味ですか先輩ッ」
そのあと「いやらしい目で見る人はこうです」と言って、
竜崎が辺りに積もっていた雪を丸めて投げてきたので、
俺も丸めて、雪合戦が始まった。
途中で先輩も混ざってきて、三人で楽しみすぎてしまい、
昼休みが終わるまで雪合戦は続いた。
「やばっ、もうこんな時間だ、制服も雪まみれになっちゃったしどうしよ」
「私もハメを外しすぎてしまいました……」
『ふふっ、まあ楽しかったからいいじゃないか』
俺と竜崎が雪まみれなのに対し、先輩だけは無傷だ。
楽しんでおいて、一人だけ無傷なのはずるい気がするが、
とにかく、今日は冬を先取りしたような一日で、
神社でお参りしたおかげかは分からないが、とても楽しかった──。
次の日──。
気温はいつもの夏に戻っていた。
昨日の雪はなんだったのだろう、
やはりあの神社でお参りしたからだろうか?
だが、昨日のが神社のおかげにしろ関係ないにしろ、
先輩の冬服が見たいという、願いは叶ったし、
俺はお礼を言いに行こうと思った。
そして、できればまた冬にしてもらって、
今度は冬服の暖かそうな先輩とハグしたい。
そんなことを考えながら、その日の帰りに神社の場所へ行くと、
そこに神社の姿はなく、ただの空き地になっていた──。




