第25話 「ずぶ濡れ・上」
今日の授業が終わり、家に帰ろうとすると、
突然、雨が降ってきた。
これはまずい。
俺は今日、傘を持ってきていないのだ。
しかも勢いもかなり強い。
少し、雨が止まないかと待ってみたが、
まったく降りやむ気配はない。
俺が下駄箱のあたりで右往左往していると、
先輩が外からやってきた。
『やあ』
「あっ、先輩」
先輩が傘を持っている。
『君が傘がなくて、困っていそうだったからね』
「な、なんでそれを」
『だって全然、外に来なかったからね』
そのあと俺は傘がなくて困っている、と話すと、
先輩が俺の家まで一緒に帰ってくれることになった。
『じゃあ、これを持ってくれるかな』
そう言うと、先輩は俺に持っていた傘を渡した。
「これは?」
『僕も一つしか傘を持っていないんだ』
そして少し、間を置いたあと、
先輩は少し笑って、こう言った。
『だから……相合傘だね、枕木君』
俺がその一言を聞いて固まっていると、
『ふふっ、そろそろ行こうか』
と言われてしまった。
そして俺が傘を差して、
二人で俺の家へ向かい始めた。
「あ、あの濡れてたりしませんか」
『大丈夫だよ、君がしっかり傘を持っていてくれているからね』
緊張してしまう。
相合傘などしたことはないし、
もし先輩が濡れてしまったらどうしようと思うと、
手が震えてしまう。
するとそれを先輩に見られたのか、
こう言われた。
『大丈夫だよ、落ち着いて』
俺はその一言で震えが止まった。
やはり先輩は優しい。
「す、すいません」
『気にしないで、僕の方こそ君に傘を持たせてしまって申し訳ないよ』
すると、先輩が俺の方を見上げた。
『僕が君より身長が高かったら、僕が持ててたのにね』
「い、いや先輩は今のままでいいですよ」
『……ふふっ、そっか』
すると先輩は、そっと近づいてきた。
嬉しかったのだろうか。
だが先輩にくっつかれると、
ドキドキしてしまうからやめてほしい。
そうこうしていると、俺の家に着いた。
『着いたね、枕木君』
「よかった〜、先輩、今日はありがとうございました」
『ふふっ、じゃあまたね』
そして先輩は自分の家へ向かおうとしたが、
その瞬間、車がやってきて、
水飛沫で先輩はずぶ濡れになってしまった。
俺は急いで先輩のもとへ向かった。
「だ…大丈夫ですか先輩」
『ふふっ、びしょびしょになってしまったよ』
怪我とかはなさそうで安心したが、
俺はあることに気づいてしまった。
先輩の濡れた制服が透けてしまっている。
幸い、ブレザーで胸は隠れているが、
これはまずい。
俺はそれ以上、透けた部分を見ないようにし、
急いで先輩を担ぎ、家の中へ入れた。
『どうかしたのかな?』
「あっ、いやその状態の先輩を外に出しておけないというか…」
先輩は不思議そうにこちらを見つめたあと、
下を向いて、自分の制服を確認した。
『透けちゃってたんだ』
「み、見てませんよ」
口を滑らせてしまった。
先輩はまだなにも言っていないというのに。
『ふふっ、君は分かりやすいね』
「い、いや違くて」
『でも助かるよ、さすがに透けたまま帰るのは恥ずかしいからね』
そして俺は急いで、タオルと替えの着替えを持ってきた。
着替えは先輩のサイズがなかったので、
俺のものを持ってきた。
「あ、あのすいません、先輩サイズの服はなくて……」
『いや、助かるよ』
「ならよかったです」
そして着替えを渡すと、先輩はこちらをじっと見つめてきた。
「どうかしましたか」
『今着てる服、脱がせてほしいな』
俺は戸惑った。
先輩の服を脱がす……?
そんなことをしたら、先輩のいろんな場所が見えてしまう。
『嫌かな?』
「嫌ではないですけど……」
『そっか』
そう言うと、先輩は俺の両腕を持って、
自分のブレザーのボタンに当てた。
『ほら、外してみて』
俺はなにをやっているのだろうか。
本当はこんなことせず、早く着替えてもらい、
着ていた服を乾かすのが大事なはずなのに。
だが、俺の体はボタンを外すことを選んだ。
これを外せば、さっき見ないようにした胸が見えてしまう。
しかし、もう俺の体は本能だけで動いていた。
先輩の、胸が見たいという本能で。
そして外すと、今まで隠れていたものが露わになった。
「これは、ブラジャー……?」
『ふふっ、そうだよ、擦れるからつけているんだ』
思わず、俺はそれをじっと見つめた。
先輩がつけているのは、ハーフトップ型のものだった。
『ふふっ、見過ぎだよ』
「す、すいません。でも先輩が脱がしてって……」
『そうだね、これを見た時の反応が見たかったんだ』
どうやら俺は先輩の罠にハマってしまったようだ。
「あ、あとは自分で脱いで着替えてくださいね!」
そう言って俺は、玄関から離れ、リビングへ入った。
さっきのことを思い出すだけで、頭がおかしくなりそうだ。
いつもだったら、まず冗談なのかを聞いていたはずなのに……。
俺は見たいという気持ちに支配されてしまっていた。
そんなことを考えていると、ドアが開き、
先輩が入ってきた。
俺の服を着た先輩は、服がブカブカで可愛い。
『着替えたよ、元の服はどこにおけばいいかな?』
「あっ、その、脱衣所に置いてくれれば、俺が浴室乾燥機で乾かすので……」
『分かったよ』
そして先輩が脱衣所に服を置き、
俺が服をかけ、乾かし始めた。
先輩の濡れた制服を見ていると、変な気持ちになってしまう。
リビングへ戻ると、先輩が俺を待っていた。
『……さっきはごめんね、枕木君。少しからかいすぎてしまったね』
「い、いや大丈夫ですよ」
気まずい空気が流れている。
ただでさえ外も雨で暗くてじめっとしているのに、
家の中まで、暗いのはごめんだ。
そうだ、こうしよう。
俺は上を脱ぎ、上半身裸になった。
「先輩、俺のも見ていいですよ!これでおあいこですね!」
『……』
さらに空気が変になってしまった──。




