第15話 「姉・下」
先輩の家に遊びに行っていた俺は、ひょんなことから先輩のお姉さんと出会ってしまい、
そのせいで気まずい空気が流れているのだった──。
「じゃ…じゃあ俺はそろそろ帰りますね」
『えー、もう帰ってしまうのかい?』
「いや先輩が、さっきお開きって言ってたじゃないですか…」
『そうだけど、まあいいかなと思って』
「いやいや、お姉さん…リオさんに迷惑かなと…」
「わ…私は顔見られたからもうなんでもいい…」
「あっ、そうですか…」
『じゃあもう少し遊ぼうか』
そして俺は先輩と部屋へ戻った。
だがさっきのことが気になって遊びに集中できないし、
なによりお姉さんがドアから、こちらを覗いてきているのが気になる。
『どうかしたのかな?』
「えあ…別に…なんでも…」
『もしかして…お姉ちゃんも一緒に遊びたいのかな?』
「びえっ」
どうやらお姉さんは図星だったようだ。
『枕木君もいいかな?』
「自分はぜんぜんいいですよ」
『じゃあおいで、お姉ちゃん』
「うん…」
そう言うと、お姉さんは先輩の膝の上に座った。
先輩の膝の上は落ち着くのだろうか、さっきまでより表情が明るい気がする。
俺も座ってみたい。
『ふふっ、今度、枕木君も座らせてあげるよ』
「な、なんで分かったんですか」
『顔に出てるからね』
「ま…マオの膝上は私の場所だぞ」
『別にお姉ちゃんの場所ではないよ』
俺はもっとギスギスしているのかと思っていたが…、
先輩とお姉さんは意外と仲が良さそうだ。
だが、さっきから先輩に甘えてばかりで、お姉さんというよりは妹に見える。
それはともかく俺たちは、三人でいろいろなゲームをした。
そこで分かったのは、お姉さんはゲームが上手いということだ。
レースゲームでも格闘ゲームでも、ボコボコにされてしまった。
「リオさん強いですね」
「うへへ…私ずっと家にいて暇だからさ…」
『……ふふ、お姉ちゃん楽しそうだね』
「そ、そんなことないよ」
『本当かな?おや、もうこんな時間だね』
俺が時計を見ると、いつのまにか18時になっていた。
「ほんとだ、もうこんな時間ですか。ご飯の時間なんでしたよね」
『うん、あっそうだ、もし君がよかったら一緒にご飯を食べていかないかい?』
「えっ、いいんですか」
『僕はいいよ、お姉ちゃんはどうかな?』
「わ…私もいいよ」
『ふふっ、だってさ』
ということで、俺は先輩の家で夜ご飯をごちそうになることにした。
先輩がキッチンで料理をしている間、
俺とお姉さんはリビングで待っている。
だがやはり、二人きりだとまだ少し気まずい。
そうして会話もなにもない時間を過ごしていると、
お姉さんがこちらをチラチラ見てきた。
「俺の顔なんかついてますか…?」
「え、あ…君のな…名前が気になって…」
「俺は枕木遊星です」
「枕木遊星…あ…あの遊星くんって呼んでもいいかな…」
「別にいいですよ」
俺がそう言うと、お姉さんは俺の膝の上に乗ってきた。
急に乗ってきたので思わず、驚いてしまった。
「えっ」
「あえ、ご…ごめんなさい、私あんまり人との距離感が分からなくて…」
「いやまあ、座りたいなら座ってもらっても…」
(なんか先輩もそうだけどこの姉弟、初対面からの距離の詰め方がすごいな…)
そんなことを俺が考えていると、先輩がこちらへやってきた。
どうやらご飯ができたらしい。
『おや、ずいぶんと仲が良くなったみたいだね』
『僕もまだ枕木君の膝には座ったことがないのにね』
「いや先輩、これは違くて…」
『まあいいよ、ご飯にしようか』
そしてテーブルへ移動すると、そこには美味しそうな料理があった。
なんの料理か気になったので聞いてみると、これはアクアパッツァというらしい。
『それじゃあ、いただこうか』
そうして俺たちは夜ご飯を食べ始めた。
先輩の手料理だからだろうか、とても美味しい。
ずっとこの家にいて、毎日作ってほしいくらいだ。
お姉さんも美味しそうにバクバク食べている。
あっという間になくなってしまった。
「やっぱりマオの料理は美味しいな〜」
『ふふっ、ならよかったよ』
『枕木君はどうだったかな?』
「あっ、ほんとにもう、人生で一番美味しかったです」
『君はオーバーな表現をするね、でも嬉しいよ』
そして食後少し、三人で談笑したあと、
俺はそろそろ家に帰ることにした。
「じゃあ俺はそろそろ帰りますね」
『枕木君、今日は楽しかったよ、またね』
そして俺が帰ろうとすると、お姉さんが俺の手を握ってきた。
「な…なんですかリオさん」
「……また来てね遊星くん」
「久しぶりに家族以外と話したけど…遊星くんは落ち着くの」
「……また来ますよ、さようなら」
だが帰ろうとすると先輩が玄関で立っていた。
その表情はにこやかだが、その裏に暗い感情が見え隠れしている。
「ど、どうしましたか先輩」
『さっきからずいぶんとお姉ちゃんと仲が良さそうだね』
「えっ、まあはい」
『しかもお姉ちゃんのことは名前で呼ぶんだね』
(あっ…これはまずい)
『僕もお姉ちゃんに言う時みたいに、マオと呼んでもらいたいものだね』
俺はどう切り抜けるか悩んだ末に、
ある手段に出ることにした。
「先輩…」
『ん〜?』
「腕相撲の時、勝者の言うことを一つ聞くって言いましたよね」
『うん』
「そして抱き合う直前だったから、まだその権利は使ってませんね?」
『そうだね』
「だからその権利を今使って、今日は帰ります!さようなら!」
『ダメだよ』
ダメだった。
『でも君を引き止め続けてもあれだし、さっきの続きをしようか』
「え?続き?」
そう言うと先輩は俺の方へ来て、抱きしめてきた。
『ほら、君も僕を抱きしめていいんだよ』
言われるがまま、俺も先輩を抱きしめた。
先輩と密着したからか、いつもより先輩の匂いを感じる。
まるで花のような…とてもいい匂いだ。
服越しに感じる先輩の感触も、俺を惑わせる。
すると、先輩が顔を上げて、こちらを見ながら、
『これで、約束は終わりだね』と誘惑的で妖艶な表情で言った。
俺はまた、先輩の沼へと沈んだ──。
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ちなみにリオの身長は先輩と同じ149cmで、先輩と双子なんです。




