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第14話 「姉・上」

俺は今、人生で一番気分が良い。

それはなぜか…昨日の夜、先輩からこんなメールが来たからだ。


【先輩】 『明日は暇かな?もしよかったら僕の家においでよ』


と誘われたからだ。

人の家に遊びに行くのは、生まれて初めてだ。

竜崎の家は勉強のためだったのでノーカウントとする。

それはともかく、先輩の家に誘われるなんて、

しかもどうやら竜崎は来れないらしく、二人きりらしい。

竜崎には悪いが、正直嬉しい。

そして俺は、いつも以上に身だしなみを整えて、

先輩の家へと向かった。

道中、先輩と二人きりということは、

あんなことやこんなことがあるかもしれない…などと邪な妄想を膨らませていると、

ようやく先輩の家に着いた。

先輩の家は、高層マンションの最上階らしい。

竜崎といい、俺の知り合いは金持ちばかりなのだろうか?

エントランスを見回すと、先輩が待っていた。


『やあ』

「あっ、どうも…」

『ふふっ、じゃあ行こうか』


俺は先輩に連れられ、エレベーターに乗って部屋へと移動した。


『ここが僕の家だよ』

「おお…」


どうやら、1フロアまるまる先輩の家らしい。

俺は住んでる世界の違いに息を呑んだ。

玄関を通り、リビングへ行くと、テレビでしか見たことがないような、

おしゃれで広い部屋が見えた。


「……すごいですね」

『でしょ』

『じゃあ僕の部屋へ案内するよ』


先輩に案内されている途中、俺は気になる部屋を見つけた。

その部屋のドアには「リオのへや」というプレートがかかっている。

そういえば、先輩にはお姉さんがいるんだったか。

おそらくその部屋はお姉さんの部屋なのだろう。

そんなことを考えていると、先輩の部屋に着いた。


『僕は飲み物と、お菓子を持ってくるから先に入ってて』

「あっ、はい」

『それと…あんまり僕の部屋から出たらダメだよ』

「……わかりました」


そう言うと先輩はキッチンの方へと行った。

俺はなんで部屋から出たらダメなんだ?と思いながら、先輩の部屋へと入った。

部屋の中はとても良い匂いがする。先輩が住んでるからだろう。

俺はめいっぱい空気を吸い込もうとしたが、

さすがにそれは気持ちが悪いのでやめておいた。

俺が先輩の部屋にドキドキしていると、

先輩が戻ってきた。


『おまたせ、なにして遊ぼうか?』


そうして俺は先輩とポーカーで遊んでボロ負けしたり、

レースゲームで甲羅をぶつけられてボロ負けしたり、

格闘ゲームでボロ負けしたりした。


「ちょっと手加減してくださいよ!」

『ふふっ、ごめんね、でも君は手加減されたら気にするかなって』

「まあ、確かに…」

『でも負けっぱなしもあれだろうし、次は君がなにやるかを決めていいよ』

「うーん…」


俺は先輩に勝てそうなものを思いついた。


「腕相撲をやります」


俺がそう言うと、先輩は少し目を丸くしたあと、

口角を上げながら『……勝ちに来たね』と言ってきた。


「そりゃ勝ちたいですもん」

『ふふっ、いいよ、さあやろうか』


そして俺は先輩と腕を組み、勝負を始めた。


「じゃあ俺が合図だしますから、それで始めますよ」

『うん、さあやろうか』

「行きますよ…レディ…ファイト!」

『うぐっ』



圧勝してしまった。

俺が勝ちたさで、力がいつも以上に入ったのもあるだろうが、

思ったよりも先輩の力が弱かった。


「だ、大丈夫ですか」

『か…構わないよ、僕はあまり力勝負は得意じゃなくてね』

『勝者にはご褒美で、僕がなにか一つ言うことを聞いてあげるよ』

「急になんですか」

『気にしないで、ほら言ってみてごらん』

「そう言われても悩みますよ…」


なんで先輩は急にこんなことを言い出したかは分からないが、

せっかくなら何かしてもらおう。


「俺と抱き合うとかどうですか」

『……』

「あっ、いや冗談ですよ、いやほんとに」

『いいよ』

「えっ」

『ほら、おいで』


いつのまにか主導権が先輩に握られている気がするが、

そんなことはもはやどうでもいい。

先輩が腕を広げて待っている。

これはもう行くしかない。

俺が先輩へ向かっていったその時だった。

ドアの向こうから「まお〜」と声が聞こえてきた。

それを聞いた先輩は、ガッカリした表情になったあと、

扉の向こうへ行った。

俺もガッカリしてしまった。

せっかく先輩と抱き合えると思ったのに…。

そう思っているとドアの向こうから話し声が聞こえてきた。


『どうかしたの、お姉ちゃん』

(さっきの声は先輩のお姉さんだったのか)

「だって、その…落ち着かなくて」

「知らない人が家にいるから…」


どうやら俺は不審者扱いされているらしい。


『昨日言ったじゃないか、僕の友達を連れてくるって』

「知ってるけどお…だってぇ…」


お姉さんの声は小さくてよく聞こえないので、

俺はドアに耳を当てて聞くことにした。


『はあ、しょうがないね、枕木君に今日はお開きだって伝えるよ』


そう言うと先輩はドアを開けた。

だがドアに耳をすませていた俺は、急にドアを開けられたことで体勢を崩し、

部屋の外に倒れてしまった。


『あ、枕木君だ』

「あ…ど、どうも」

「びええ…」


お姉さんはパジャマ姿で見た目は先輩と瓜二つだった。

だが、目元には少しクマがあり、先輩よりなんというか、幼く見えた。


『お姉ちゃん、この子が枕木君だよ』

「先輩にはいつもお世話になってます…あはは」

『お姉ちゃんもせっかくなら、自己紹介してみたらいいんじゃないかな』

「………理央りおです……」

「あっ、どうも……」


気まずい空気が流れている──。



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