第13話 「カラオケ」
俺たちは今、三人でカラオケにいる。
近くに新しくカラオケができたらしいので来てみたが、かなりワクワクする。
学校の先輩や同級生とカラオケ…まさに俺が望んでいた学生生活だ。
……が、現在俺たちはポテトをつまんでいるだけで、
誰も、一曲も歌っていない。
カラオケボックスの中は気まずい空気が流れている──。
「…そろそろなんか歌いませんか」
『じゃあ、最初は君に譲るよ』
「私も先輩と同意見です」
「なんでそんな押し付ける感じなんですか!?」
『人前で歌うのはあまり経験がなくてね』
「私も先輩と同意見です」
「お前それしか言わないな…」
そんなこんなでしぶしぶ俺が最初に歌うことになった。
(しかし何を歌おう…)
何を歌えばいいのか悩んでしまう。もし俺が選んだ曲を二人が知らなかったら、
間違いなく今より気まずい空気が流れてしまうだろう。
俺はとりあえず、二人も知っていそうな有名な曲を歌った──。
「ふう」
『いい歌唱力だったよ』
「私も先輩と同意見です」
「あのなあ竜崎…」
そう言った瞬間、画面に点数が表示された。
そこには88点と出ている。
『枕木君は88点だって』
「……そうだ、せっかくなら点数を競いませんか?」
『それは名案だね、負けた人にはカラオケ代を払ってもらおうかな』
「私も先輩と同…」
「もう分かったよ!」
順番を決めるために先輩と竜崎がじゃんけんをし、
先に竜崎が歌うことになった。
曲は俺が最初に歌ったものだ。
『いい歌声だったよ、りゅりゅ』
確かに竜崎の歌声は素晴らしかった。
実は歌手ですと言われても驚かないほどに。
「お褒めの言葉ありがとうございます、さて私は何点でしょうか」
モニターには95点と表示されている。
「おお」
『これはすごいね、さて次は僕の番だね』
ついに先輩の番だ。
そういえば、俺は先輩が歌うのを見るのは初めてだ。
先輩は上手いのだろうか?俺的にはカラオケ代を払いたくないから、
あまり上手くない方が嬉しい。
だが先輩には歌が上手くあってほしいというのもあって、
内心、複雑な気持ちだ。
『悪いけど、今日の代金は枕木君が払うことになるだろうね』
そう言うと先輩は歌い始めた。
先輩の声は綺麗で、それでいて引き込まれるようだ。
気づくと、いつのまにか曲が終わっていた。
『どうだったかな?』
「やはり真央先輩は素晴らしいです」
「な…なんかすごかったです」
『ふふっ、ならよかった』
モニターには100点と表示されている。
『これで今日の支払いは枕木君になったわけだね』
「あっ」
先輩の素晴らしさですっかり忘れていた。
どうして点数勝負なんてしてしまったのだろうと後悔していると、
先輩がこちらの顔を覗き込んできた。
『まあでも、負けた人が払うっていうのは僕が言い出したことだし』
『君に全部払わせるのも悪いから、僕も半分払うよ』
「先輩…」
「私は払いません」
「竜崎い!!!」
今日もいい一日だった──。




