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第11話 「通話」

俺は今、先輩と通話をしている。

なぜこうなったかというと、さかのぼること少し前──。


(ん?先輩からのメールだ。なんだろう)


【先輩】 『今、時間あるかな?よかったら通話をしないかい』


【まくらぎ】 「別にいいですけど…急になんですか」


【先輩】 『君の声を聞きたくなっただけさ』



こうして俺と先輩は通話を始めた。

話題は学校についてだ。


『最近どうかな?』

「どうって…まあ普通ですよ」

『授業はちゃんと聞いてるかい?』

「そりゃ今はちゃんと聞いてますよ」

『ふうん』


ここから少し…いやだいぶ静かな時間が続いた。

話す内容がないのだ。

先輩から誘ってきたんだから、もっと話題を提供してほしいと思っていると。


『ビデオ通話にしないかい?』

「えっ」

『君の顔も見たくなってね』

「まあ、いいですよ」


そう言って、俺はビデオをオンにした。

少しして、先輩もオンにしたが、先輩を見て俺は衝撃を受けた。

パジャマを着ていたのだ。

しかも、首にタオルを巻いていて、周りに少し湯気も見える。


『ふふっ、ビデオで君の驚いた顔が見えてるよ』

「そりゃ驚きますよ、先輩のパジャマなんて見たことないですし…」

「まさか、俺を驚かせたくて通話に誘ったんですか」

『ん〜?どうかなあ』


先輩がニヤニヤしている。

こういう表情の時は大抵、俺のことをからかっているのだ。


「あ…あんまりからかわないでくださいよ」

『ふふっ、ごめんね、君の反応は可愛いからさ』

『でも君の声が聞きたかったのは本当だよ』


相変わらず先輩の言っていることは本当か嘘か分からない。

だが素直に、先輩のパジャマ姿が見れたのは嬉しい。

薄手の長袖、長ズボンだが触り心地のよさそうな生地だ。


『ん?君はこのパジャマが気になるのかな』

「えっなぜそれを…」

『顔が見えてるからね、視線でバレバレだよ』

「まあ確かに、見てましたよ」

『ふふっ、触りたいかい?』

「……触りたいです」

『じゃあ今度制服の下に着ていってあげるよ』


想像しただけで胸が躍る。

先輩が俺のために、学校でパジャマを着てくれる…。

それだけで俺は嬉しい。

その後も様々な会話をし、また静かな時間がやってきた頃。


『そうだ、せっかくだし僕の部屋をいろいろ見せてあげるよ』

「えっ」

『じゃあいくよ』


そう言うと先輩は、携帯のカメラを動かしながら部屋を見せてくれた。


『ここが僕の寝ているベッドだよ、二人で並んで寝れる大きさだよ』

「…どういう意味ですか」

『それは君の受け取り方次第さ』


また先輩がニヤニヤしている。

先輩は俺の心を惑わせるのが得意だ。


『次は本棚、君が知っている本はあるかな?』


そこには上の方に難しそうな哲学や知識なんかの本、

下の方には漫画が入っていた。


「あ、その漫画俺も読んでますよ」

『おっ、趣味が合うね』

『そしてテレビとローテーブルだよ』

「えっ部屋にテレビがあるんですか」

『うん』


もしかして先輩もお金持ちなのか?

そう思いながら先輩の部屋紹介を聞いた。


『最後に、パソコンデスクだよ』

「はえ〜」


先輩の部屋は全体的におしゃれな感じだった。

俺もあんな部屋に住みたい。


『とまあこんな感じだよ』

「綺麗な部屋でした」

『ちゃんと掃除しているからね』

『いつか君にも来てほしいよ』

『……お泊まりでね』

「えっ」


そう言った先輩の顔は艶かしかった。

まるで悪魔が囁いてきているような…甘い表情だ。

これも冗談なのだろうか…。


『ふふっ、また驚いた』

「だからそりゃ驚きますって」

『まあ、いつか誘うよ。それじゃあ今日は寝るね』

『通話に付き合ってくれてありがとう、また明日、枕木君』


そう言った後、通話は切られた。

まだ胸がドキドキする。

先輩の家に行く妄想をするだけで……。

それはともかく、俺も明日のために寝ることにした。


──次の日の昼休み


『枕木君、枕木君』

「ん?なんですか先輩」


俺と先輩と竜崎でいつも通りお昼ご飯を食べていた時だった。

先輩に話しかけられたので返事をすると…。


『えいやっ』


そう言うと先輩は俺の手を掴み、自分の制服の中に潜らせた。


「ちょ…ちょちょちょっとなにしてるんですか先輩!?」

『ん?昨日言ったじゃないか、制服の下にパジャマを着ていくって』


すっかり忘れていたが、今の強烈な衝撃で思い出した。

そしてパジャマの感触は昨日予想した通り、素晴らしい触り心地だった。


『どうだったかな?』

「い…いい感じでした」

『なら良かったよ』


そんなことを話していると、うめき声のような音が聞こえた。

どこからの音だろうと発生源を探すと、その音は竜崎から発せられていた。


「な…なんてハレンチな…」

「枕木、あなたが先輩をたぶらかしてこのようなことをさせるなんて…」

「え!?俺じゃなくて先輩が…」

『枕木君がどうしてもどうしてもって言うからね』

「そこまでは言ってないですよ!?」

「枕木、あなたを不純異性…不純同性交遊で職員室に連れて行きます」


竜崎は俺の腕を掴み、引っ張っていった。


「えっ、ちょっちょっと待って、助けてください先輩!」

『しょうがないなあ』


そう言って先輩は竜崎の腕を掴み、また制服の中のパジャマを触らせた。


『これで二人とも触ったからセーフだね』


俺にはその理論はよく分からないが、とにかく助かった。

竜崎も俺の腕を離し、先輩のパジャマを触っていた。


「…まあ今回は先輩の顔に免じてなかったことにしますわ」

(こいつ、先輩のパジャマ触れたからってコロコロ気分を変えやがって…)

(まあ助かったし、なんでもいいか…)

『ふふっ』


今日も楽しい一日だ──。

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