第10話 「制服・下」
先輩のことを考えすぎたあまり、俺は次のテストで90点を取らなければいけなくなってしまった。
だが次のテストまでは残り一週間しかない、
ろくに勉強もしていない俺が果たして90点を取れるのか──。
「で、なんで私なんでしょうか」
「い…いや竜崎は勉強得意そうだから教えてもらおうかなと…」
「そもそもそのような状況になったのはあなたのせいです」
「それはもうおっしゃる通りで…」
最終手段として俺は竜崎に頼ってみることにしたが、
やはり難しそうだ。
「それに私としては先輩があなたから離れてくれればライバルが減るもの」
「そこをなんとか…」
「無理です」
その後も頼んでみたが、全く受け入れてくれそうにない。
確かに俺が勉強していなかったのが悪いのだ。
だがこのままでは俺は先輩と離れることになってしまう、
そこで俺は最終手段に出ることにした。
膝を曲げ、体を前に倒しながら手を床につける、
そして頭を地べたにぴったりとくっつけた。
つまり土下座だ。
「頼む、俺は先輩と離れたくないんだ…」
「頼れるのは竜崎しかいないんだ」
「…分かりました、そこまで言うのなら今回は手伝ってあげます」
「ほ…本当か竜崎、本当にありがとう」
「では今度の土曜日、私の家に来てください」
「えっ、そ…そんな俺は女子の家なんて」
「何を勘違いしているんですか、勉強するだけです」
「住所は後ほどメールで送ります、では土曜日の12時に待っています」
そう言うと竜崎はどこかへ行ってしまった。
それはともかく、俺は90点への階段を上ることができた。
やはり持つべきものは友ということだろう。
しかし竜崎の家はどんな感じなのだろうか…?
──土曜日
俺はメールで送られてきた住所へ向かっていた。
なんとか住所へ辿り着いたが、
そこにあったのは家というよりは宮殿であった。
(な…なんだここ、庭が広すぎるし、建物もかなりデカいぞ)
(こんな所が家なわけないだろ、俺を騙そうとしてるのか…?)
そんなことを考えながら門の前に立っていると、
使用人らしき人物が話しかけてきた。
「あなた様が、竜崎お嬢様のご友人ですね」
「は…はい」
「お嬢様から話は伺っております、ご案内いたしますのでこちらへ」
俺はこの使用人に案内され、部屋に入り、椅子で待っているように言われた。
待っている間、俺は部屋を見回してみた。
周りには高そうな壺に、高そうな西洋の甲冑…とにかく目に映る全てが高そうなものだった。
そうして待っていると、竜崎ともう一人、講師のような人物が現れた。
「竜崎、お…お邪魔してます」
「挨拶は結構よ、早速勉強を始めましょう」
「それはいいんだけど、その隣の人は…?」
「こちらはテミス講師です、今回あなたに勉強を教えるために特別にお呼びしました」
「ハロー枕木クン、今日はよろしくネ」
「あ…はいどうも」
俺はテミス講師との挨拶を済ませ、勉強を始めた。
まず、今のレベルを測るために、全科目の軽いテストを受けた。
「ど…どうでしょうか」
「オーノーこれはまずいネ、基礎がまずボロボロよ」
「えっ」
「でも安心してネ、ミーに教われば間に合うヨ」
「覚悟はできたかな、枕木クン?」
「は…はい!」
それからはテミス講師との地獄の勉強が始まった。
まずは基礎からガチガチに教えられ、
その後意味のわからないレベルの応用を教えられた。
だが、さすが竜崎が呼んだ講師というべきだろうか、
分からなかった問題がすらすらと解けるようになっていく。
そして──。
「オーもう、こんな時間ヨ、ミーはそろそろ帰る時間ネ」
いつの間にか18時になってしまった。
俺はもうクタクタだ。
「テミスさん本日はありがとうございました」
「ミス竜崎の頼みならノープロブレムよ、また何かあったら呼んでヨ」
そう言うと、テミス講師は帰っていった。
「つ…疲れた」
「さて、もうこんな時間ね。今日はこのあたりでお開きにしましょう」
「助かったよ、竜崎。今日はありがとうな」
「…あなたがいなくなると先輩が寂しがると思っただけです」
「これでテストがダメだったら許しませんよ」
「はは…頑張るよ」
「ではこれを渡しておきます」
そう言うと竜崎は大量のワークシートを渡してきた。
「な…なんだよこれ」
「テミス講師から渡すように頼まれています、テストの日までそれで復習してください」
「テミス講師……俺、頑張るよ」
そして俺は家に帰った。
そしてテスト当日まで復習を続け、ついに──。
(この問題は…テミス講師に教えてもらったところだ)
(なんだこんなの簡単じゃないか)
俺は勉強の成果もあり、かなりの手応えを感じ、テストを終えた。
後は点数次第だ。それによって、今後の俺の学校生活が左右される…。
結果が出るのはもう少し後らしい。
テストが終わった日、先輩から連絡があった。
【先輩】 テストお疲れ様、結果が楽しみだね。
【まくらぎ】 自信はありますよ。
【先輩】 それは楽しみだよ、ご褒美の内容も考えておかないとね。
【先輩】 まあ、君の点数が出るまで僕は楽しみに待つことにするよ。
ドキドキする。果たして俺は90点が取れるのだろうか。
それにご褒美も気になる…。だがまずは点数を取らねば。
そしてついに答案が返ってきた──。
その日は風が強かった。
「ということで見てください先輩」
『ふむふむ…これは凄いね、ちゃんと点数を取れてるじゃないか』
『よく頑張ったね、枕木君』
「ま、俺にかかればこんなもんですよ」
『ふふっ、りゅりゅに感謝した方がいいね』
「もしかして俺が勉強したの聞いてたんですか」
『うん、そうだ、君にご褒美をあげないとね』
『枕木君はどうしたい?』
「どうしたい…って俺が決めていいんですか」
『うん、君が頑張ったんだからね』
どうしよう。
俺は悩んだが、選択肢が多すぎて決めきれない。
そもそもどこまで頼めるのかも分からないし…。
「ご褒美ってど…どこまでいけるんですか」
『僕ができることならなんでもしてあげるよ』
「えっ、たとえばキ…キスとかも…?」
それを聞いた先輩は少し笑いながら、
『いいよ』と言ってきた。
俺はドキドキして心臓が破裂しそうだ。
『さあ、どうしたいのかな〜?』
先輩がニヤニヤしながらこっちを見ている。
「お…俺は」
『うんうん』
「俺は…」
『うん』
「ひ…膝枕してほしいです」
先輩が少し驚いた顔でこちらを見ている。
「さ…最初に出会った時も膝枕されたし、またしたいと…」
『へえ、君は膝枕が好きだったんだね』
『いいよ、おいで』
「できれば女子の制服でやってほしい…です」
『……ふうん、つまり君は僕の太ももを直に感じたいわけだ』
「い…いや」
『いいよ、ご褒美なんだからね。じゃあ明日ね』
そして次の日──。
『君の要望通りスカートを穿いてきたよ』
相変わらず、先輩を見ているといつもドキドキするが、
ご褒美という特別感でよりドキドキする。
『はい、おいで』
先輩が自分の太ももを軽く叩き、俺を呼んでいる。
「じゃ…じゃあいきますよ」
『うん』
俺は先輩の太ももに頭を乗せた。
先輩の肌は柔らかく…温かかった。
どんな高級な枕だって先輩には敵わないだろう、そう思える気持ちよさだ。
『どうかな?今の気分は』
「最高です…う…うぐっ」
『泣かなくてもいいじゃないか』
「だ…だって先輩と離れることがなくてよかったって…」
「これからも先輩といられるんだって思うと…」
『君は僕のことが好きだねえ』
そう言うと先輩は俺の頭をまるで聖母のように優しく、優しく撫でてくれた。
俺は…幸せだ。
『じゃあこれからもよろしくね、枕木君』
そう言った先輩の顔は、天使のようでとても…とても綺麗だった。
そして俺はその言葉と膝枕の衝撃が合わさって…。
『あらら、気絶してしまったね』
『ふふっ、君らしいね』
俺と先輩の物語はまだまだ続いていく──。




