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35.エリオの従魔にトリミング

第三十五話「エリオの従魔にトリミング





 ガルドからのオッケーも出たので、、澪は店内の中央、少し広いスペースにしゃがみ込んで、エリオの従魔セオに対して、優しく手招きした。

 それに合わせて、ルーチェがセオに歩み寄り、何やら語りかけるように、見つめ合っている。


(みおのとりみんぐは最高なのよ、って教えてたのよ)


 良い仕事したでしょ、と言わんばかりに自信満々のルーチェが、澪の心中に声をかけて来た。ミオは小声で「ありがとう」と返して、セオを連れて戻ってきたルーチェの頭を優しく撫でた。


「よろしくね、セオさん」


 澪がいた世界の犬、それにそっくりの生き物従魔はみな、金色の瞳を持っている。そこだけが、澪の知る犬とは異なる点だ。

 アイリッシュ・セッターも本来は金色の瞳ではない。澪が見つめると、金色の瞳からその子の魔力の揺らぎが見える。澪はセオの体にスッと触れた。


【従魔毛並鑑定】接触

 痛覚閾値:無

 忠誠心:高

 主依存傾向:普通

 毛並:抜け毛少・皮脂多

 魔力回路:やや低速回転


 やっぱり、皮脂が多い状態だ。皮脂が多いとどうなるか? その皮脂を餌にする細菌が過剰に増えてしまい、増えた部分が皮膚炎になる。そう、犬の皮膚炎には様々な要因があるけれど、皮脂が多くて細菌が増えすぎた時にも、増えすぎた細菌が居る場所が人の目には皮膚炎となって視認できるようになる。

 魔力回路もなぜだか綺麗に回ってはいない。


【グルーミングEX】


 澪は慣れた手つきで藍色の鞄からコームを取り出し、セオの全身にコーミングを施す。スキルが自動で発動した。

 耳や胸元、腕、腹下、足の飾り毛が美しいアイリッシュ・セッターだが、細かい抜け毛が多く、飾り毛も絡みやすい毛質だ。

 エリオの手入れが良いのだろう、毛玉は全身コーミングしたところ、あったのは耳の付け根だけだった。

 澪はコームでその毛玉を優しく解きながら、口を開く。


「この位置は、耳をよく動かすから、毛玉になりやすいんです。放っておくとすごく固い、皮膚の根元に貼り付くような毛玉になっちゃいます」


 エリオが澪の手元を覗きにやってきて、毛玉を目視して、「これですか」と確認している。


「この毛玉ができると、従魔にとって何かデメリットがあるんですか?」


 澪はすかさず頷いた。流石は馬の手入れ用品を扱う人。手入れのメリットについて正確に把握しようとする姿勢が、素晴らしいなと澪は思った。


「まず、毛玉は常に毛がもつれて絡んで、引っ張られている状態なので、そこが痛くなります。それから、皮膚も引っ張られているので、赤くなったり、皮膚が弱くなって皮膚炎になったり、皮膚病になったりもします。毛玉は、従魔にとっての天敵だと思って下さい」


 澪が大真面目に答えると、エリオとガルドは声を上げて笑い出した。


「天敵とはな!! 毛玉なんぞ気にした事もないイングロンの連中にとっては、信じがたいだろうが……エリオ、ほら、魔力回路眼鏡を貸してやる。これを通して見ててみろ、凄い事が起こるぞ」


 ガルドはポケットから仕事道具でもある、従魔の魔力回路を可視化する片眼鏡をエリオに渡した。エリオはそれをお礼を言って受け取り、自分の右目に装着する。


 澪はセオの毛玉を丁寧にほぐし終わったところだった。

 これで全身のコーミングが完了する。抜け毛が多い犬種なのに、ほとんど取れてこないのは、主エリオの手入れが良いからだろう、

 だが、皮脂はなんとかしなくてはならない。


【魔力ブロー】


 コームを仕舞うと、今度は小型魔力ブロワーのノズルを片手に、魔力を流し込む。澪のイメージ通りに、セオの大きさに合った風量がブロワー体溢れ出す。ブローしながら澪は皮脂が強い耳の毛や、手足の先の飾り毛がサラサラになるかを触れて確認した。

 澪の予想通り、皮脂などの油分もブロワーによって飛んでゆき、重たい艶の毛質だったセオの飾り毛や皮膚が、サラサラになってゆく。


「す、すごいですね、これは。この魔道具は、ガルドさんが?」


 魔力回路が見れる片眼鏡を通し、エリオは自分の従魔の魔力回路がどんどん整って行くのを目の当たりにして、驚きを隠せずにいた。

 エリオはそもそも、セオの魔力回路に問題があると感じたことは無く、頼もしい相棒だと考え、大切にして来たつもりだった。誰よりも上手く手入れしている自信も、密かにあったのだが。


「いーや、この魔道具は俺よりすごい奴が作った特別製だ。俺でも真似できん」


 ガルドは少し悔しそうに返答した。そりゃ、神様製なのだ、ガルドが敵うはずもなし。それでも悔しそうにしているのは、神にも負けたくないという欲望の現れだろうか。

 澪は慣れた手つきでセオの全身にくまなくブロワーを当て、誇りや皮脂を飛ばしてシャンプー仕立てのような美しい仕上がりにしてゆく。

 途中、艶が出ていたものの、皮脂も強すぎて大きなフケや赤みがある箇所があったので、その位置を覚えておく。

全身ブローが無事終わってから、澪は魔力ブロワーを置いてスキルを切り替えた。


【皮膚再生】


 ふわんと澪の手のひらの内側が光り、澪はその温かい光をセオの乾燥した皮膚や、赤みのある箇所に優しく当てる。悪い所には、光がすぅっと吸い込まれてゆくのだ。そしてどんどん良くなっていく。


「ワンッ!」


 セオが、主人に向かって明るく吠えた。僕を見て! と言っているように聞こえるような、楽しそうな吠え声だ。セオの顔を見れば分かる。

 魔力を灯した金の瞳が爛々と輝き、魔力回路は美しくぐるぐると渦を巻いて元気に動いている。


「終わりました」


 今回は元々抜け毛も無く、毛玉も少なかったので簡単なトリミングだった。澪は朝飯前と言わんばかりに笑顔で立ち上がる。

 セオは主エリオの元へ行き、背中からもたれて主に甘えて見せる。エリオはそんなセオの背中や飾り毛に触れ、その感触をよくよく確かめていた。


「艶を出すために脂を使わなくとも、本来の毛だけでこんな風に輝くんですね!」


 馬の手入れと同じように考え、艶出しを使っていたエリオは、セオの持つ本来の被毛の輝きに驚きを隠せない。


「従魔は、後から艶を足す必要は無くて、自分から皮脂を出しているので充分なんです。ただ皮脂が出過ぎたり、少なくなったりすると、脂っぽくなって皮膚炎になったりもするので、要注意ですよ! セオさんは皮脂はちゃんと出てるので、サラサラの獣毛ブラシでのお手入れで合ってると思います」


 美しい飾り毛を纏うアイリッシュ・セッターが、みんなの前でくるりと回って飾り毛をひらりと踊らせて見せる。

その美しさに、みんなが笑顔になった。

すみません、昨日更新できず、本日更新となりました。


いつも読んでくださる方に申し訳なく。

これからも執筆はコツコツ頑張ります!!

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