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学内格差と超能力  作者: 小鳥頼人
3巻 修学旅行編
81/83

第1話 ②

    ☆


「この時間では修学旅行のグループを決めるぞ。グループは旅館の部屋割り、二日目の班別行動の二種類ある。班別行動のグループは男女混合でもOKだ。ただし同じクラス限定だがな」


 かくして。

 修学旅行についてのLHR(ロングホームルーム)がはじまった。

「誠司、質問いい?」

「なんだ宏彰」

 俺は教卓前に立つ進行役の学級委員に素朴な疑問をぶつける。

「このクラスに女子っていたっけ」

「……こんちくしょうめぇーーーー!! この無念どこで晴らすべきかぁーーーーっ!!」

 誠司は慟哭どうこくした。哀れなり。

「おい谷田。大声を出すんじゃない。隣の7組に迷惑がかかるだろ」

「すみません」

 教壇脇の椅子に座って誠司の進行を見守る2年6組担任の柴山しばやま裕伍ゆうご先生から注意を受けた誠司は、謝罪はしたものの納得していない表情だ。

 今の怒号は下手をすれば更に隣の8組まで届いた恐れすらあるな。

 ここで誠司の表情は阿修羅あしゅらからニッコリスマイルに変わる。情緒不安定かよ。

「しかぁし! 三日目の完全自由行動だけは、どこの誰とどこを回ろうが完全に自由! 他校のJKと回ってもヨシ! 観光中の外国人美女と回ってもヨシ! なぜならば完全自由行動だからな!!」

「自由の身になってもハメを外しすぎないようにね」

 誠司がただれた奇行に走らないか心配になった。

「ハメは外さないがそれ以外については外さない保証はない! なぜなら思春期だから! 追いかけるのはなにも白球だけじゃないってこった!」

「谷田、お前は俺とサシで回ってもいいんだぞ。おかしな劣情に燃えないように俺が徹底的に手綱たづなを握ってやる。鎮火役は任せろ。もちろん綱は首に巻いてやる。歯向かったら命はないと思え」

 確かに誠司を野に解き放つのは大変危険だ。ガチガチに縛るのが世のためだね。

「センセェ~。ジョークじゃないですかぁ~」

 自由行動の自由を奪われそうになった誠司は柴山先生の肩を揉んでご機嫌取りをしはじめた。

 遠足の時も先生と自由行動をともにしたらしいけど、彼は一体どこに向かっているのだろう。熱血陽キャイケメン教師と熱血陽キャルックス微妙高校球児のペアリングはどこの界隈かいわいに需要があるのだろうか。

「それに完全自由行動でも俺たちに女子のアテなんて……」

 ないと言いかけた俺の口が止まる。

 一応、俺は星川さんや遠藤さんを女子のアテとして含めても問題ないのではなかろうか……?

「オイ宏彰、男の余裕見せたるみたいなツラやめろ。ぶちのめすぞ」

「そんな顔してないと思うけど!?」

 握り拳を作った誠司が憎しみのこもった瞳で俺を睨むものだからつい怖気おじけづいてしまう。確かに口元がかすかにほころんでしまったけども。

 とはいっても所詮は2科。俺が彼女たちと行動をともにしてるところを1科男子に見られた日には、俺は無事では済まない。

「お前限定で忠告しておくが、ゆめゆめ不純異性交遊を犯すんじゃないぞ」

 おい、さっきJKとか外国人美女とか抜かしてた輩の台詞じゃないぞ。

「沢口君みたいなこと言わないでくれ……」

 沢口修平さわぐちしゅうへい

 柔道部員で8組の学級委員だけど突っ込みどころ満載の痛い人。高畑たかはたゆう太郎たろう君、富田とみたゆうすけ君とこれまた酔狂すいきょうな二人の信者を率いる厄介な一派の長だ。

 少し――いやだいぶ思考思想がイカれた人たちだ。もはやサイコパス。曲がったことが大好きで義理人情皆無。できれば極力絡みたくない。学級委員の仕事すら真っ当にこなしているかすらも怪しい、それが沢口君だ。

「たっ! 太一は蓮見さんと回るんでしょ!?」

 火種を太一に移そうとするも、

「雫は1年生だよ」

 あっさりと太一に論破されてしまった……俺の思惑はあっけなく崩れ落ちた。

 そうだった。太一の幼馴染の蓮見はすみしずくさんは1年生だった。彼女は俺を敵視してるので今思うと学年が違っててよかった。彼女の友達の南条なんじょうしおりさんはとっても優しい女の子なのに、あそこまで性格が違うものかね。

「おい宏彰、テメーいい加減なこと言って誤魔化そうとすんじゃねーぞ。ネタは上がってるんだよ。それも新鮮な状態でな。いさぎよく自首しろや」

「どこに自首するんだよ」

「1科の廊下に決まってるだろ! 大声で『ボクは星川遠藤と二股してましゅ~!』と懺悔ざんげしな!」

「貴様は鬼か!?」

 1科の廊下でそんなことを叫んだら針のむしろだっつーの。そもそも俺は誰とも付き合えた実績すらないし。

「なんか間違ったこと言ってるか?」

「間違いしかないんだけど?」

 自らの過ちに気づけないのが最大の過ちだよね。

「俺も女の子と奈良のビーチでアバンチュールしたいんだよおおおお!!」

「奈良県は海に面してないし……」

 そこはせめて京都にしておこうよ。

「谷田、高坂。お前らうるさいぞ」

「「すいません」」

 ほらぁ、誠司のせいで先生に叱られちゃったじゃないか。


「……結局このメンバーになったか」

 修学旅行のグループ決めの一つ、部屋割りが決まった。

「基本的に仲が良いメンバーで固まったからな」

「あ、安パイ」

 俺はいつメンと固まっている。

 他のグループも普段仲良しの面々で構成されている。2科は他者への差別思想がないのでグループ決めの時にあぶれる人が出ないところが素晴らしい。これが1科だったら「はい二人組作ってー」が悪魔の号令に感じていたことだろう。

「その方が盛り上がるし気まずさも感じずに済むからね」

「太一に気まずさを感じる繊細さあったっけ?」

 常に冷静沈着、飄々(ひょうひょう)としてて図太くてメンタルが強いイメージなんだけど。

「言うね。俺だって実は人間なんだよ」

「それは知ってる」

 誰も人外じんがいとは言ってないわ。

 俺は太一、誠司、豊原と同室だ。

 ちなみに班長は俺になった。班長は班別点呼報告に参加する役割を持つポジションだ。

「さて、お次は班別自由行動のメンバー決めだ」

 部屋割りがすんなり終わったところで次なる議題へと移る。

「こっちは極力就寝部屋とは違うメンバーにしたい。就寝部屋よりは一緒に過ごす時間は短いから我慢しろ。あと普段喋らないクラスメイトと親交を深めるいい機会にもなる」

 いつものメンバーで修学旅行中ずっと一緒にいるのもだれるし、いい案だ。

「てなわけで、班別自由行動のグループはくじ引きで決める。順番にくじを引いてくれ」

 事前に用意していたらしい、くじが入った箱を持つ誠司が次々と生徒たちにくじを引かせて班のメンバーが決まってゆく。

 ちなみにくじには班に加えて班ごとに一つ『班長』の記載が入ったものがある。それを引いた人は強制的に班長となる。

「ほれ、次は宏彰の番だ」

「ほいよ」

 6組の中で苦手な人はほとんどいない俺にとってこのくじ引きは気楽にのぞめるって感じだ。

 適当に一枚のくじを取り出す。

 俺は――D班か。班長の記載はなかった。

「やぁ、よろしくね」

「高坂君。こちらこそよろしく」

「ここでも宏彰と行動をともにすることになるとはね」

「同感。仕込みじゃないだろうな?」

 なんか一名これ以上親交を深める必要がない人物が混ざっているけどそれはそれ。

 俺ははやし君、谷川原たにがわら君、末永すえなが君、太一と同じ班になった。

 班長は谷川原君に決まった。よろしくお願いします。

「さて、これで各種グループが決まったわけだが……およ、およよよ……」

 百面相ひゃくめんそうの誠司は再び目に涙を溜めはじめた。なんなの、この人。

「これが1科なら女子と親交を深める絶好のチャンスだったのにぃーーっ!! ボクチャンくやちい!! 2科の我等が一体何をしたって言うんだよ!? ちょっとばかしルックスと社交性が足りないだけだろ!? こんなの学園の横暴だ!!」

 あーあ、また発狂してしまったよ。誠司の怨嗟えんさパワーは厄介だね。いつまで続くんだコレ。

「谷田」

「申し訳ありません」

 しかし柴山先生からガチトーンで注意を受けた誠司はすぐさま気を取り直した。

「せっかくの修学旅行もちょっとのおイタで台無しになる。全員肝にめいじて楽しむところは思う存分楽しみ、締めるところは引き締めろよ」

 うんうん、柴山先生のおっしゃるとおりだ。旅行とはいえあくまでも学校行事。ハメを外しすぎないように気をつけないとね。

「特に谷田――そして高坂。いいな?」

「ハイィッ!!」

「なんで俺まで……?」

 誠司のせいでとんだ巻き込み事故に遭ったのだった。

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