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学内格差と超能力  作者: 小鳥頼人
2巻 2科分裂編
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第13話 ①

「さて、高坂宏彰よ。ついに貴様の最期の時だ。この世に別れを告げるがいいぞ」

 沢口君と高畑君が俺の腕を掴んで仰向あおむけの状態で地面に押さえ込み、俺の前に立った富田君がビームを作りはじめた。

「こいつをまともに食らってみろ。相当運がよくないと、死ぬぞ」

 沢口君は表情を歪めて笑う。人間のそれとは思えない猟奇りょうき的な表情。

 こんな人間にやられるなんてまっぴらごめんなのに。

「まだ死にたくないんだけどなぁ……」

 しかし状況は万事休す。俺一人で魔法を操る三人からエスケープする手立てはない。

 あぁ、冥土ってどんな感じなんだろう。居心地がよければいいよなぁ……。

 俺は諦念ていねんして目を閉じた――……。

「――ああぁっ!?」

 魔法をダイレクトに食らい大声が――……俺ではない。

 悲鳴を上げたのは富田君だった。

「――あれ? 生きてる……」

 目を開いて映る光景は先ほどと同じく暗い公園だった。痛みも感じない。

 ただ、目の前で富田君がみぞおちを押さえてうずくまっている点だけが違っていた。

 何が起きたのか思考を巡らせようとすると――


「――やぁ宏彰。奇遇だね」


 聞き慣れた声が聞こえ、視線を斜め上の空へと向けると、そこにはいつもの三人が立っていた。

「た、太一!? 誠司、豊原も!」

 三人は沢口君たちを取り囲むようにたたずんでいる。沢口君たちは地面にひれ伏す俺に夢中で太一たちが近づいてきたことに気がついていなかったらしい。

「夜遊びかい? 俺たちも混ぜてもらおうかな」

「なにバカなことやってんだ宏彰。明日も授業あるんだぞ」

「す、助太刀、す、するよ」

「みんな……ありがとう」

 孤軍だった俺に救いの手が。あんたらマジ最高だぜ!

すんでのところで富田のみぞおちにチョップかましてやったぜ」

 誠司がドヤ顔でチョップの構えを作った。富田君がうずくまっているのは誠司の仕業だった。

「高坂宏彰!! 約束と違うではないか!! 隠し玉とは卑劣漢ひれつかんめ!!」

 沢口君は鬼の形相ぎょうそうで怒鳴り散らしてくるけど、もはやツッコんでほしいとしか思えない棚上げ発言に驚愕するよ。

「いやいや俺らは一緒に夜風に当たる約束をしててここに来ただけだぞ」

「そうそう」

「そ、その、と、とおり」

 ぬけぬけと嘘をく三人。すごいや。この場で今日の約束を守ってるの俺一人じゃんか。

「四人がかりとは極悪非道なり!! 恥を知れ悪漢あっかん高坂宏彰!!」

「そこまでして生き延びたいか! まるでウジムシ――いやゴキブリだな!」

「往生際が悪いですよ!」

「はじめに三人で攻めてきたのはそっちじゃないか……」

 先に三人で俺をリンチしてきたくせにこれ以上俺を悪人扱いしないでくれないかな。

「我々はいいんだよ。三人でいちにん――」

「あー分かった分かった。与太話よたばなしはいいから」

 誠司は手首を振って呆れた反応を見せたのち、

「お前らのビームの弱点は分かってるんだよ」

 さっき俺がそうしたように木の枝を二本拾って両手で構えた。二刀流だ。

「得意げに言ってるけど気づいたの俺だけど?」

 苦笑する太一も木の枝を一本握っている。

 ビームの弱点に気がついたということは、太一たちはしばらく俺たちがやり合ってる光景を傍観ぼうかんしていたってわけか。全く気配を感じなかったよ。

「お前らのビームは土、木、植物……つまり大地の力に弱い!」

 誠司は沢口君が放ってきたビームを木の枝で打ち消した。

 大地……そうか。だからさっき木の枝でビームを消失できたのか。相性相間(そうかん)は分かりかねるけど助かった。

「……ちっ。カラクリに気づきやがったのか……」

 沢口君は唇を噛んで苦虫を嚙み潰したような表情だ。

「く、食らえ……!」

 豊原が炎を沢口君の顔面めがけて投げ飛ばす。

「――あっぶな! 火傷やけどしたらどうしてくれる!?」

 寸でのところでかわした沢口君が血相を変えて怒鳴り散らす。火傷やけどって……そっちは俺を亡き者にしようとしてるじゃないか。なんかもうツッコむのも疲れてきた。命がけのはずなのに図らずもちょいちょい俺を脱力させにくるのが彼らのタチの悪い要素だよ。

「散り散りに動いても意味がない。対戦相手を決めよう」

 太一は役割分担を提案した。確かに闇雲に動き回るよりも相手を定めた方がやりやすい。

「俺と誠司で富田と勝負するから、宏彰は沢口、豊原は高畑の相手をしてくれ」

「了解」

「合点承知!」

「わ、分かった」

 三手さんてに分かれて各々(おのおの)沢口一派と対峙する。

「いつまでビームを無効化できますかね」

 ほくそ笑む富田君の手からは再びビームが作り出されてゆく。

 絶対に死ぬなよ、みんな。

「シューティングゲームでつちかった動体視力を舐めてもらっちゃ困るね」

 太一はそつなくビームを避ける。球技のせいで運動ができない印象が強い太一だけど、ボールさえ触らせなければ運動能力自体は決して低くはない。更には元陸上部で長距離専攻だったことも手伝ってスタミナ面も心配いらない。沢口一派にとっては一番厄介な存在だろう。

「ほらほら、もっともっとビーム投げないと当たらないよ」

「ちょこまかと鬱陶しいですね……!」

 太一の挑発を受けた富田君は苛立った様子で攻撃を続けるも太一には当たらない。

「……はぁ、はぁ……。こうなったら谷田さんに狙いを絞ります……!」

 冷静沈着スタミナお化けの太一相手では分が悪いと悟った富田君はターゲットを誠司一人に変更してきた。

「ふははは、この枝が目に入らぬかぁ~!」

 誠司は木の枝でひたすら富田君のビーム攻撃を無効化する。

 ――が。

「なっ!?」

 誠司が握っていた木の枝が粉々になってしまった。

「はははは! いくらその枝が俺たちのビームに強いからといっても無傷ではいられないのさ。防げば防ぐほどダメージが蓄積されるのは当然のことわりだろう」

 誠司の枝が粉砕されたことを見届けた沢口君が意気揚々と説明する。

「枝はもう一本あるんだよ――ってうっそ~ん!?」

 ほどなくもう一本の枝も砕けてしまい、二刀ともダメになってしまった。

「誠司!」

「太一、サンキュ!」

 太一が誠司を守るように自身の木の枝でビームを消滅させる。誠司なら運動神経的に避けられるとは思うけど、万が一当たったら大変危険だ。

「実質一対一ですね。しかもお二人には飛び道具がないので至近距離でないと僕に攻撃できません。どちらが有利かはわざわざ言葉にしなくとも分かりますよね?」

 自身が優勢となり、呼吸を整えた富田君は元の調子に戻ってしまった。

 誠司を庇う必要がある太一は木の枝を駆使するが、それもいずれは折れてしまう。しかも防戦一方だ。早く富田君のMPが切れることを祈るしかないけど……。

「――っ」

「ふん、お前の炎ごときじゃ俺のビームは打ち消せないぞ」

 一方、豊原対高畑君も明らかに豊原の劣勢だ。

 ビームの方が威力が強い上に炎では相性が悪いらしく、豊原の炎は高畑君のビームを多少縮小こそできるものの消滅はできていない。つまりは豊原も木の枝を装備する必要があるけど……あいにく近場にはもう木の枝は落ちていない。

「太一の言うとおり、もっとたくさんかき集めておくべきだったな……」

 誠司が悔しげに眉間にしわを寄せる。

 っと、よそ見してる場合じゃないや。俺の相手は沢口君だ。

「ナンバーワンは常に高みにいるのだ!」

 よく分からないことを口走る沢口君はうんていに登りはじめた。

「高い所に逃げようって? 甘いよ!」

 俺もあとを追うように登る。

「……ククッ、そーれっ!」

「うおっとぉ!?」

 沢口君は上から落雷のようにビームを落としてきた。その速度は今までの中で最も速い。

「物理の授業で習わなかったか? あらゆる物質は水平よりも上から下へと垂直に飛ばした方が重力で速く移動するんだよ。位置エネルギーの高さが違うからな」

 成績不振のはずなのにそういうところだけ知ってるのはなぜ……。

「くそっ、危なくて登れないや……」

 ひたすら上からビームを落とされるせいで登るに登れない。下からの攻撃では不利だし……俺も俺で劣勢の状況にある。

「ふはははは! 人数が増えても能力が使えない連中じゃ意味ないんだよ!」

 沢口君の火事場の馬鹿力的なパワーがえぐい。片手だけで棒にしがみつくなど困難なはずなのに強力な握力が沢口君の身体が滑り落ちることを許さない。まさに神業かみわざと言ったところか。

 乱暴だけど沢口君がぶら下がっているうんていを壊す強硬手段も考えられるけど、俺の能力では実現できるはずもなく。

「――あっ」

 太一が持つ枝も折れてしまった。いよいよヤバいな……。

「よし。飛び入りの礼だ。高坂宏彰だけじゃなくてお前たちも一緒にあの世へといざなってやろう。仲が良いならどこまでも一緒がよかろう」

 沢口君は俺ばかりか太一たちまでビームの餌食にすると宣告してきた。

「待ってくれよ! 太一たちは君の計画とは関係ないじゃないか」

 君の狙いはあくまでも俺個人だろう?

「この俺にたてついた時点で同罪だ。それに学科総会でも散々コケにされたしな」

 それは自業自得では……というのは置いておいて。

 せっかく太一たちが来てくれたのに、まだピンチだ……。

「人数だけ増やしてもしょせんは烏合うごうしゅうだったな」

 右手でうんていに捕まりながらも左手はフリーな沢口君は勝利を確信している様子。

 まずいな。太一と誠司は無能力者なんだ。頼りの木の枝も壊れてしまっている。

 俺だけならともかく太一たちを巻き添えにするわけにはいかない。

 沢口一派は揃ってビームを作りはじめている。

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