第3章 3節 雷鳴のズヴィカーク
何?誰に向かって言ったんだ。皇女?
「皇女とは?君達はどこに所属する軍?」
「皇女樣、私達をお忘れですか?私達ですよ。暫定フウイヌム帝国、空挺軍所属、特務部隊ズヴィカークです」
オッドアイの銀髪男がそう言うと同時に、雨粒に先駆けて近くで雷鳴が残響を奏でた。ぼくは少し雷鳴に怯みながらも考える。なんと、驚いたことに、帝国の残党は核攻撃を逃れて暫定国家を作っていたのか。ズヴィカーク……ヴァルの言っていたズヴィカークとはこの部隊のことか。なぜぼくを皇女と呼んだのか……人違いかな?ところでこのオッドアイの銀髪男、正体が気になるな。
「ねえ、君の名前は?」
「私はジークです。後ろの二人は、背の低い方がケイトで、高い方がメイベル」
「た、隊長!その紹介やめてくださいよ!」
"背の低い"ケイトがジークに反論する。ジークはそれを宥めている。
「ズヴィカークは隊長である私を含めて四人構成の分隊規模部隊なんですが、最近諜報を担当するヴァルという女がスシャーに捕まってしまって……」
「なんだって……?ということはヴァルは、ズヴィカークの一員だったの?」
「そうです。そして皇女樣、ヴァルをご存知なんですか?」
ジークは驚きのせいか、少し口を開いたままにした。ぼくは、座標Л五三二とヴァルの様子を伝えた。
そして、本題である。皇太子樣の居場所。まずはグラウンドゼロの場所を訊ねるか。
「ねえジーク。ぼくは核が投下された爆心地、ちょうど核が落ちた場所を探しているんだ」
「爆心地ですか……。爆心地、それが皇女樣が来られたと言われるЛ五三二の治安維持社支社、まさにその場所です」
なんだと。あの治安維持社の施設が爆心地だというのか……。よく千日であそこまでの施設を作れたな。そして何より、宮廷があった場所に会社をたてるとは罰当たりだ。
「じゃあ、利害は一致したね。ぼくが爆心地を探しているのは、爆心地付近で目撃された皇太子樣を見つけることが目的だから」
「ですから皇女樣、現時点での第一皇女、すなわち皇太子樣は貴方樣で御座います。現時点で皇女樣は、お産まれになられてから五千百二十一日、あと凡そ同じ日にちを経れば一万日、萬日憲法をお書きになられなくてはいけません。それに、私達ズヴィカークは、皇女樣を天帝派からもお護りしなくてはいけないのです」
ぼくは強く、ジークの胸を押して通り過ぎた。後ろにいるジークに話しかける。雨音にかき消されないように大声で。
「何を言っているのかわけがわからない。ぼくは科学や歴史の本は沢山読んだけど、ぼくの上官のせいでフウイヌム国や宮廷の本は読ませてもらえなかったから。ぼくは皇女樣なんかじゃないし、ぼくの名前はレイだ。もし君がぼくの事をそんなにも敬愛しているのなら、皇女なんて呼び方はやめて。ぼくはレイなんだよ」
「申し訳ございません。レイ……樣」
「いいよ、もう」
もうぼくは何をすればいいのかわからないよ……。いや、ちがう。自分を強く持たなくちゃ。ぼくがやるべきことは、ぼくを逃がしてくれたヴァルを助けることと、そしてこの事をツァラトゥストラに報告する事だ。
「ズヴィカークのみんな、ヴァルを助けに行こう」
一同が頷く。その頃にはもう、空も泣き止み晴天を見せてくれていた。




