第2章 4節 ネフィリム
「そんなテロ組織みたいな奴らが国家とは笑わせる。所詮はてめえらも俺たちマフィアと変わらねぇ。金の為に生き、運まで買い尽くしたら死ぬ」
「違う、違う!ぼくたちは理想をこの汚い金で買うんだ」
ぼくは被っていたテンガロンハットを投げ捨てて車の荷台に立ち上がると、数ターレルの硬貨をポケットから取り出して地面にぶちまけた。
「この金でゆめを買うんだ。その汚らしい金を再分配できる国を作るんだ。沢山の犠牲のもと……。懺悔しろ。その汚らしい手で理想を手に入れる物体と同じものに触れたことを……」
「懺悔しろ!!」
ぼくは腰のホルスターから拳銃を取り出し、瞬く間に全員の頭を拳銃で撃ち抜いた。
倒れ込む遺体、その血に穢れる硬貨。
全員が倒れたことを確認する。
ふとあの裏切り者が頭をよぎった。
「貴様、よくもぼくの理想を穢したな!」
車からおり、運転席から裏切り者を引きずり下ろして地面に叩き伏せる。
ぼくの腰にあったナイフを裏切り者の右手に突き刺す。骨に当たらないように、横向きにだ。グニャリと音をあげて舗装もされていない土まで刃先は貫通する。ダラダラと血は地に染み込み、裏切り者は激痛に叫んだ。
もう片方の手はきちんとぼくの左手でおさえ、ぼくはその眼に映るぼくの目を見る。
この裏切り者は、涙の出る鏡を持っている。
「その口にも?」
「いやだ!いやだ!いやだ!」
「子供みたいに泣きじゃぐりやがって!ぼくの心の穴を広げた代償は大きいんだ!」
ぼくは裏切り者の腰にあったナイフを引き抜き、その減らない口に押し込む。口を閉じて歯で抵抗するが、所詮は顎の力など腕力にはかなうまい。おそらく舌に当たり、貫通してずぶずぶとナイフは地に近付いていく。断末魔を突き抜いて、やがて裏切り者は死んだ。
声の代わりに血を出して……。
急にぼくは襟を掴まれ立たされた。
ぼくの目の前にはツァラトゥストラ。
「ばかっ!!」
右頬に平手打ちをくらう。
頬に少し遅れて熱さを感じる。
すごくいたい。
「なんで殺したのっ!」
「なんでっ」
ツァラトゥストラはそう言うと跪いて泣き崩れ、涙を流転の海に零した。
裏切り者の亡骸が可哀想に此方を見ている。やめて、ぼくを苦しめるのは。
『簡易転送装置装着者の心拍が停止しました。マテリアルプロトコルアドレス193.843.288、非常時ローディング対象を座標にローディングします』
な、なんだ?麻薬カルテルの一人、
大きいアンテナがついた機械を背負った奴の亡骸から声が……
ぼろぼろな私服には似合わず、比較的最新式のイヤホンをつけている。
今の音はイヤホンが外れた機械からだった。
梟を無理矢理目鳴かせたような音がして、目の前の空気をひきさいて大人が大人を肩車した程の大きさの機械の化け物が現れた。
機械の化け物の腕には回転式の機関銃がついていた。
「伏せて!」
ツァラトゥストラに頭をおさえこまれるとその直後機関銃の銃弾が数発、頭上をかすめた。
機械音を鳴らしながらこちらに間合いを詰めてこようとしている。
「こっち!」
ツァラトゥストラはさっき近くにとめておいたジープに乗り込む。
ぼくはそれを追いかけて荷台に乗り込み伏せる。
ジープはエンジンを蒸かして出発、ぼくは遠くなる銃音に安堵を覚えた。




