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trying  作者: みうらいさお
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2/12

第1章『出会い』

ふと気がつくと、僕―会田悟(あいださとる)は、自分の家のソファに横になっていた。


「夢か……」


テレビを見ると、さっきまで野球をやっていたはずなのに、ゴルフの中継になっている。結構眠っていたらしい。


「あ〜あ……」


中途半端に寝たので気分が悪い。さらにあんな夢を見たので機嫌も悪い。僕はずっとぼーっとしていた。


ふと、玄関の方からガチャガチャと音がする。誰か帰って来たようだ。


「ただいまぁ。何、またテレビ点けっ放しで寝てたの?」


姉の真理(まり)だ。近くのT大に通っている。昔から男勝りで気が強く、小さい頃はよく泣かされた。


そんな感じなので彼氏はなかなか出来ない。まさに男女という……


「何か言った?」


この辺でやめとこう。


「それにしても休日に家でダラダラしちゃって。他にやることないの?」


「うるさいね。こっちは普段部活で疲れてんの」


「何オヤジみたいなこと言ってんの。まったく、暇してんだったらお見舞いにでも行ったら?」


「お見舞い?」


「剛君よ。ほら、この間怪我したって言ってたじゃない」


そういえばそんなことがあった。剛とは僕が幼稚園から一緒の、いわば幼馴染みだ。


サッカー部だが、この間の試合で骨折して、入院したらしい。お見舞いに行こう行こうと思ってはいたので、今日行くのも悪くない。


そして僕は剛のいる病院に向かった。途中、さっきの夢のことを考えていた。


(また見ちゃったな……)


僕は中学の頃、陸上部だった。入部当初、顧問の先生に言われた。

「いいか、短距離は多少才能に左右されるが、長距離は努力なんだ。頑張れば頑張るだけ速くなる。そしたら、一番にだってなれる」


その言葉を信じた僕は、頑張って練習した。そのかいあって、県大会まで進んだ。が、その予選の時だった。


金髪の男―高見総一郎(たかみそういちろう)がいた。奴は県でも有数の選手だった。レースでは、当然のように大差をつけられ、負けた。


途中まで奴のハイペースについて行こうてしたが、結局スタミナ切れし、最下位に終わった。


レースの後、奴は僕にこう言った。


「お前みてえに才能ない奴、頑張ったってしょうがねえんだよ」


さらに客席から「ダッセエ」と聞こえた。


それ以来、僕は頑張ることを止めてしまった。が、高校に入ってからも、陸上部に入っている。


何故なら、陸上が好きだから。なんてカッコいい理由じゃない。自分でもわからないが、なんとなく、惰性でやっているようなものだ。


そんなことを考えるうち、いつの間にか病院の前に来ていた。


(学校の真ん前なんだな)


見るとすぐ横手に、うちの学校のグラウンドがあった。


「すいません、草野剛の病室はどちらですか?」


「3階の一番奥の部屋です」


「どうも」


3階の奥……一際大きな笑い声がする。


(あそこか……)


部屋に入ると、怪我しているとは思えない元気な奴がそこにいた。


「よう、悟!!元気か?」


「お前程じゃないよ」


見ると足が上から包帯で吊られている。一応怪我人は怪我人らしい。


「なんだ、元気ねえな」


「ああ、ちょっとな」


「……また、あれ見たのか」


「まあ、な」


剛はどうやらすぐに察したらしい。こいつには何でもお見通しだ。


「ったく、いつまでも昔のことでウジウジしてんなよな!」


「わかってるよ。言われなくても……」


「まあ、元気出せや。過去のことだ、キッパリ忘れてな」


「怪我人が言ってもな……」


「ん?あ、そりゃそうだ!」


ガハハとまた大きい声で笑う。


「お兄ちゃんご本よんで―!!」


「ききたい―!!」


剛の弟と妹だ。6才の双子だ。さっきにぎやかだったのは、この2人の相手をしていたからだろう。


「わーったよ!読んでやるから!」


「じゃあ、俺そろそろ帰るよ」


「そっか。悪いな」


「気にするなよ」


部屋を出ようとすると、剛が呼び止めた。


「悟、何なら屋上に行ってみろよ。あそこから見る夕焼けは凄いんだ。悩みも吹っ飛ぶさ」


「ふうん」


特に急ぐ用事もないので、行ってみることにした。階段を上りきり、ドアを開けると……


「うわあ……」


そこには見たことないくらいに綺麗な夕焼けがあった。本当に空一面オレンジ色で、それはもう、テレビでしか見たことがないような景色だった。


(確かに、悩みも吹っ飛びそうだな)


十分に夕焼けを堪能したので、帰ろうとした時、視界に女の子が入った。誰だろう。患者の子だろうか?


年は同じくらい。背はやや低め。髪は肩の辺りまでかかっている。そして屋上の端の方で、じっと下を見ている。その顔はどこかかなしげだ。


(まさか……)


僕は嫌な予感がしてきた。しかし、それをなんとか打ち消そうとした。まさか、そんなわけないさ、ただ下を見ているだけさ。飛び降りようなんてことは……


と、その子は金網に手を掛けた。


(やばい!!)


やっぱり自殺か?どうする、誰か呼んで来るか?いや、そんなヒマはない!


「待って!!」


僕は彼女の方へ走って行って彼女を止め……ようとした。しかし、志半ばで転倒した。彼女はそれを呆気にとられた様子で見ていた。


それが、2人の出会いだった。




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