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深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者: 済


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7.難民

「わたしが開拓村の代表となるカルミア・ファーンです。そして、彼が先発の隊を率いる事になった”槍”のラグです。今回、皆さんに集まっていただいたのは、村へ向かってもらう者達の順番を取り決めるためです」


 開拓村への移住計画を説明する為に、難民達の有力者を砦の一室に集めた。


「先にお知らせしている通り十日後に先発隊が村に向かい、その十日後に第二陣をわたしが率いて出発します。さらに二十日後に最後の第三陣は、第二陣と交代に砦に戻ってくる騎士ザクが率いて出発する事になります」


「代表様、私はこの難民を任されているブーンと申します。代表様に確認したいのですが、我等が送られる開拓村は一度魔物に襲われ滅んだと聞きます。そのような所で、本当に暮らしていけるのでしょうか?ここに居るのは、私のいた村と近隣の村から集めらた者達です。特に、私のいた村は敵の傭兵団に攻められて多くの者達を失いながら逃げて来たのです。これ以上、村の者達を失いたくないのです。」


「そうですか・・・。確かに、開拓村は約十五年前に一度滅んでいます。その時の事を、わたしは当時の報告書でしか知りません。知りたい事があれば、後ほど”槍”殿にお聞きください。彼は、村の生き残りですからわたしより詳しいでしょう。それと、村の安全ついては、当時よりも村の規模が大きくなる為、それに見合った数の騎士や兵の常駐を準備しています。また、何かあれば砦からの援軍もあります。なので、わたし達は貴方達を守る事を第一に考えている事を知って欲しいのです。騎士や兵士達の力を当てにして良いのですが、そのうえで基本は村事態と村の住人による自衛の強化が最優先となります。」


「では後ほど”槍”殿に話を聞く事にしましょう宜しいでしょうか?」


「ええ、差し支えありません。私で答えられる限りはお話しいたしましょう」


「お願い致します。それでは、申し訳ありませんが、代表様は辺境伯様のご子息とお聞きしていますが、辺境伯様からのご支援は頂けるのでしょうか?」


「ブーン!」


「騎士ザク!・・・構いません。当然の質問ですから」


 騎士ザクは、この老人が遠回しにわたしが頼りなく辺境伯(ちち)の力がどれ程当てに出来るのかと聞いてきた事が不快に思えたのだろう。わたしが止めなければ詰め寄っていただろう。


「わたしの力が未知数なのは事実ですから。御老人、当然辺境伯からの支援はあります。支援の内容は幾つも有るので今後会議を行う際にお伝えしましょう。また、先に伝えてあった”二年間の税の免除”これは、こちらの状況に応じて変わるように取り決めています。他にも懸念は有るでしょうが、その都度話し合っていきましょう。ここらは、先発隊の人事について話していきましょう。今のところラグと騎士ザクを中心に砦の兵が10人が決定で、それ以外に荷運びの者を難民の中から選んでいきたいのですがラグとザクはどう思いますか?」


「そうですね。ブーン殿、難民達の中から猟師をしていた者が、何人くらい同行できるのか確認したいのですが?」


「”槍”殿。私の村で生き残った猟師は引退したものとその孫がいるだけです。近隣の猟師だと一家族が私の知る限りいるだけです」


「そうですか。では、後ほど紹介して頂きたいのですが宜しいでしょうか」


「わかりました」


「荷運びを出来る者は選ばれているのですね?」


「先に代表様から文にて知らせを受けてから、10人を選抜しました]


「ブーン殿。馬車が使える方を何人かお願いしたいのですが?」


「代表様。それは大丈夫ですが、兵士の方々で御者を選ばれるとお聞きしておりましたが?」


「先発隊だけでなく、その後の2回も馬車の数を増やそうと辺境伯(ちち)に願い出ており、今準備しています。これで、少しでも老人や女性と子供への負担を減らせるでしょう。それに、こちらで準備した資材を運ぶ量を増やす事が出来ます」


「そう言う事であれば、時間は余り無いですが御者が出来る者を集めるだけでなく、指導をして使える者を増やす事が出来ればよいのですが」


「・・・そうですね。どうでしょう、カルミア様、先発隊には間に合わないでしょうが、次につなげる事が出来るでしょうから、砦の兵達にも指導を頼んでみては良いのではないでしょうか」


「イーノの言う通りですね。すぐに兄に伝えて指導できる者を回して貰いましょう」


「あと、先発隊に農家の者が含まれていますが、他に武具の手入れができる鍛冶屋がいればよいのですが・・・」


「カルミア様それなら心当たりがあります。ザク、先日紹介したローは若いが腕は良い鍛冶屋だ。武具全体の調整なんかも修行中らしいから適切なのでは?」


「ああ、彼なら問題ないか。もし難民の中に鍛冶屋がいるのならもう一人ぐらい連れて行ければいいんじゃないですか?ブーン殿どうでしょうか」


「うーーん。たしか、ドワーフ族の者がいたはずなので、その者が鍛冶を生業にしていたはずですが・・・」


「それでは後ほど猟師と一緒に紹介して下さい」


「カルミア様、ブーン殿と話す事も有りますし私とザクで行ってきます」


「そうですか。では、ラグとザクにお願いします。もし、問題がなければ後日わたしにも紹介をお願いします」


 この後も、移住や防衛、そして人員の配属等を話し合いながら開拓村への計画を練っていく。

 それにしても、今はまだ軋轢等の問題は出ていませんが、複数の村から集められた人々ですから早めに融和と協調を作れる方法を考えないといけませんね。あと、防御柵や建築用の木材と材料を準備させていますが、村まで運搬する為の荷車も並行して作っていく必要があり、荷車を引く為の馬と牛を集める事、それに御者の教育と他にも課題が山盛りです。やはり、時間が少なく感じます。ですが、開拓村での生活を考えるとこれ以上遅らせる事もできません。冬になる前には、暮らしを安定させる事が不可欠です。なんとか、移住する皆さんに説明して協力をお願いするしかないですね。




 代表のカルミア様との初対面の挨拶と、その後に開拓村への移住について計画の説明と打ち合わせを行った。カルミア様は辺境伯の子息の一人と聞いて心配していた、若い貴族に時折見られる高慢さのないお方だった。しかし、我々難民の命を預けるには若過ぎるという思いも強い。さて、如何に皆を納得させ協力させるか・・・。

 打ち合わせを終え、”槍”殿と騎士ザク殿を難民達の居住地に移動する。


「”槍”殿には、後ほど落ち着いて開拓村の事についてお伺いしようと思いますが、まず猟師の所へ案内いたします。」


「ブーン殿、猟師の一家と言われていたが、どのような方なのです?」


「わたしと同じ歳の年寄ですよ。一度猟師を辞めていたのですが、息子達が行方不明になり孫達を猟師として育てる為に復帰しています」


「そうですか。年配の方では、先発隊に組み込むのは難しそうですね」


「いえ、本人は行きたがるのではないでしょうか。それこそ、孫達を鍛えるために率先して手を上げるのでは?」


「いや。しかし、開拓村の護りはしっかり固める予定ですが・・・。無理を押して何か有ると流石に・・・」


「まあ、一度会ってもらい、それから考えてもらえれば良いのでは?昔は腕利きの猟師でしたな」


「ブーン殿、孫との事ですがご子息は?」


「騎士ザク殿。敵の足止めをすると言って、自警団の者達と共に残りました。その後は・・・」


「そうですか」


「この話は、ここまでで・・・。もう直、猟師のナダの家に着きます」


 二年前にわしらの村は、連合王国に所属する傭兵団の侵略を受けなんとか避難した。しかし、わしらを逃がす為に村の護衛騎士や兵士達、それに自警団に属していた村の若い衆の多くが命を落とした。国境からは、少し離れた場所に在ったこの村でさえこの有様だ、共に逃げて来た他の村などさらに酷い事になっていたそうだ。戦域が広がるなかで、支え合いながらなんとか王都まで辿り着いた。しかし、避難してきた難民が余りに多く王都には入れず、その周りに仮の住居を建て生活をしてきた。先日、国からの御触れ(おふれ)で幾つかの村ごとに分けられ各地の貴族領に移住させられる事になった。それは、生まれ育った故郷に戻る事が出来ないという事なのだろう。わしらの村とその周辺の村が辺境伯領の開拓村に向かう事になった。そこは、十五年程前に一度壊滅した村だと聞いた時は、皆が悲嘆に暮れた。今、辺境の開拓村に近い砦の周囲でカルミア様が立てた計画に沿って、移住の前段階の準備をしているところだ。

 さてさて、カルミア様がわしら難民の移住をどの様に導いて行けるのか・・・。

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