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深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者: 済


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5.砦

「皆、やつれた様子ですね。」


 わたし達は、難民用の仮設住居を横目に砦に向かう道を進む。


「侵略された村から王都を経てこの地までですから、皆疲労が募っているのでしょう」


「先輩が言われた事も有りますが、先の見えぬ不安もあるのでは?」


「開拓村へ出発するまでに、せめて移動の疲れを癒す事が必要ですね」


 騎士イーノと”槍”の元騎士ラグの会話を聞きながら考える。

早く開拓村に出発したいが、今無理をさせる訳にもいかない。

難民達の疲労等を考えるともう少し暖かくなってからの方が良いのだろうが、

次の冬の準備まで時間に余裕があるわけでもない。

国と辺境伯(ちち)から、当面の支援は約束されているが

現地での生活を考えると十分ではないと思う。

報告書や村に調査に行った者達から話を聞いているが、

わたしの計画で、冬までに村の衣食住を賄えるのかギリギリだろう。

それに、魔獣や獣の対策に防御機構を早期に構築しないといけない。

今、難民を見た限りでは戦える人間も限られているように見受けられる。

信頼できるのはラグと二人の騎士、あと砦から志願者の兵が数人か。

冬までに、難民のん中からどれくらい戦える人間が出てくるか・・・。

確か、難民の中に猟師を生業としている二家族いると報告を受けているが

初めての場所でどれくらい狩りが出来るのか確認をしないといけない。

やはり、時間との戦いになる。


「カルミア様如何されましたか。先程から何か悩まれているようですが?」


「うーん! やはり、難民達の村への移動は早めに行いたいと思っていたのですが、

この状況だと難民達にあまり無理はさせられないなと考えていました。

計画では、ラグと砦の兵達それに難民の中から選んだ者で先遣隊として赴いて貰い

その後、この場所で残った者たちには十日程で準備を行わせて村へ向かう予定でしたが、

少し計画の変更を考えないといけないかなと」


 わたしは、計画を口に出しながらその変更についてラグと騎士たちに問い掛けてみる事にした。


「確かにこの様な状況で無理をさせても良いことは余り無い様に思いますが・・・。」


「先輩の言われるのも確かですが、今後の事を考えると時間的に余裕が無いのも事実です。

油断していると直ぐに冬が来る事になる。

心苦しいですが、難民達には我慢して貰うしかないのでは?」


「ザクの言う事も事実なのでですが、難しいです。

このままだと準備をする時間も、計画より掛かってしまうのではと。

それでは、先遣隊を送る計画自体遅らせなければならないと思うのです」


「カルミア様、物資と非力な者を送る為の牛馬と荷車を準備しています。

出来れば数を増やす事を考えたいですね」


「そうです、ラグの言われた荷車を増やすのはいいかも知れません。

今は村で使役する事も考えて牛馬を集めていますが、

街や他の村から、返還する事を前提に馬車を借り受ける事も考えるべきですね」


「それでは、私の方から辺境伯に計画の変更と現地の状況を伝えておきましょう」


「いえ、父への報告はわたしが文を認めましょう。

イーノとザクには、難民の現状の確認、それと先遣隊に組み込める人を選別してください」


「先輩はカルミア様に付いて下さい。たとえ、領地内とはいえ護衛は必要です。

それで悪いが、ザクには私と来てもらいたい。

計画を変更するなら物資の確認と人選を私に付き合ってもらう」


「ああ、ラグさんの言う通りカルミア様の警護は先輩にお願いしましょう。

カルミア様、大丈夫だとは思いますが出来るだけ騎士イーノをお近くに置くようにお願いします。

先輩、お願いしますよ」


「了解した、ラグとザクも気を付けろよ。

難民はこの国の民とはいえ、辺境伯領にはまだ来たばかりだから何が起こるか分らんからな」


 これで、わたし達の仕事の分担が決まった様です。

ラグと騎士ザクから報告を受ければ、直ぐに父への手紙を書くようにしましょう。


「兄さん!ラグ兄さん」


 わたし達が仮設住居を抜け砦に向かおうとすると横会いから声を掛けられる。


「ラナ!」


「兄さん、やっとこちらに来たのね」


「ああ、さっき着いた所だ。」


「そうなのね。私たちは、三日前に問題なく着いたわ。

今は、新しい村の人達と準備しているところよ。」


「そうか、忙しくしているんだな。ところでローは?」


「あの人、他の鍛冶師と鍛冶場で働いているわ」


「じゃあ、ローも元気そうだな」


 ラグと声を掛けてきた女性は知り合いのようだ。


「えー、ラグそちらの方は?」


「カルミア様、すいません。私の知り合いで名をラナと言います。

ラナ、カルミア様に挨拶を」


「申し訳ありません!私は、ラナと言います。

兄さ・・・いえ、”槍”のラグと同じ開拓村の出身の者です」


「それは、開拓村を生き残った子供達の・・・」


「はい、私と夫のローは生き残りの者です」


「そうですか、遅れましたがわたしがカルミア・ファーンです。

こちらに来られているという事は、開拓村に行かれるのですね」


「はい、私たち夫婦は村に帰ろうと思います」


「それでは、これから一緒に村で生活するのですね」


「カルミア様、私達の紹介もお願いしたいのですが?」


「あっ!すいません。

ラナさんこちらに控えているのは、騎士イーノと騎士ザク。

共にわたしの護衛と村で警護を手伝ってくれる方々です」


「「これから宜しく」」


 騎士たちがそれぞれ挨拶を交わしていく。

ラナさんは、わたしや騎士たちからの挨拶に戸惑っているようです。

そういえば他の領の貴族や騎士は、あまり一般の方々と友好的に接しないと聞いたことがあります。

わたしは、辺境伯の四男ですし実母は商家の出身ですから、

兄達の様に貴族らしいかと言うと違う気がします。

そのせいで、辺境伯夫人(かあさま)からよく注意されましたが・・・。


「それじゃあ、イーノとわたしは砦に行きますがラグとザクは如何しますか?」


「私は、こちらの仮設住宅の様子をもう少し確認しようと思います」


「じゃあ、私が案内するわよ。ローにも兄さんが着いた事を教えたいし」


「そうか、なら案内を頼もうか。ザクは一緒に来るだろう」


「ああ、付き合おう。それではカルミア様、後程砦で合流いたします」


「わかりました。砦の者には、二人の事は話を通しておきます」


「宜しくお願いします。ということでラナ案内を頼む」


 そう言うと、ラナさんに連れられて住宅の方に歩いて行った。


「それでは、わたし達も砦に行きましょうか。兄にも到着した事を伝えないといけませんから」


「そうですね、先程の計画の件も話さないといけませんね」


 こうして、わたしと騎士イーノは砦に向かうのだった。



 砦の中を兵士に案内されながら中心に在る石造りの建物に入っていく。

建物の中では、騎士や兵士が忙しく働いているようだ。

そして、無骨な木製扉の前まで来ると兵士がわたし達の来訪を部屋の主に告げる。

扉が開けられ部屋に入ると、正面の執務机の書類の山に埋もれている兄が先に声を掛けてくる。


「カルミア、久しぶりだな。元気にしていた様だ。

取りあえずそこにに座ってくれ。」


 そう言って簡素なテーブルと椅子のある方を指さす。


「はい、兄さんも相変わらずな様で安心しました。

ところで、お仕事の最中なら後ほどお伺いしますが?」


「何を言っている、お前が来てくれたのだ書類に目を通すのは後でいい」


 兄は、本当に事務仕事が好きじゃないんだなと思う。

これ幸いと執務机から離れようとする兄を隣に立つ副官が押しとだめる。


「バジリオ様、今は挨拶だけになさって下さい。決裁を待つ書類がまだ有るのですから」


「いや、しかし」


「カルミア様申し訳ありませんが今しばらく御待ち願えませんか」


「はい、仕事が落ち着くまでこちらで待たせて貰います。

それと、待つ間に手紙を記したいので紙とペンをお借りしたいのですが?」


「わかりました、バジリオ様は座って書類をかたずけて下さい。

カルミア様、こちらをお使い下さい」


 そう言って副官が文箱を用意してくれる。礼を言って受取り手紙を書く準備を始める。

文箱の中には、最近手に入りやすくなった紙を取り辺境伯(ちち)への文を認めてゆく。

書いてる途中、執務机の方から何度か愚痴が聞こえたが聞かなかった事にした。



 副官に睨まれながら手元の書類を処理していく。

まったく、せっかく弟が来てくれているのに融通の利かない者達だ。

その弟(カルミア)は、テーブルで手紙を書いている。

おそらく辺境伯(ちち)へ向けて認めているのだろう。

その横顔は生母のミルミかあさんの面影を思い出す。

ミルミかあさんは、儚い印象に反して悪さをしたら追いかで叱る

良い結果を残せば、笑いながら褒めてくれる快活な方だった。

自分を含め兄達も「母」というよりも「姉」のように慕っていた。

貴族出身で正妻の母とも姉妹の様に仲が良かった。

その為、ミルミかあさんが亡くなった時に両親や兄弟も悲嘆にくれいた。

そんな辺境伯家を癒してくれたのが生まれたばかりのカルミアだった。

母はカルミアの事を特に慈しみ育て、弟もそんな母を実母の様に慕っていた。

それが、いきなり開拓村の再建計画にカルミアが参加すると表明した事は驚きだった。

母も驚きのあまり寝込むほどだった。

兄達も驚いたが、いつかは貴族家の人間として家を出ていく事にになるのが

早まっただけだと思う事にした。

なので、俺達兄弟はどんな時でも弟を手助け出来るように見守るのだ。

と、弟を見ていると横から咳ばらいが聞こえてくる。

ああ、わかっている手を止めてすまない。

ちゃんと仕事するからそんなにらまんでくれ・・・。















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