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深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者:


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4. 任務

 街を出て、徒歩で北の砦に向かう。

何も無ければ明日の日暮れの前には着く筈である。

皆、動きやすさを重視した革鎧を装備し、背負い袋を担ぎ各々の得意な武器を携えている。


「なんだ、”槍”殿は短弓も用意しているのか?」


「先輩、無理に畏まらなくていいですよ」


「そうか、今まで敬称なんか付けて呼んだ事無いから気持ち悪かったんだよ。

で、短弓なんか何処で使うんだ。俺たちも今度の為に騎士用の長弓は用意したが?」


「開拓村に隣接する森で狩りする為ですよ。森の中だと長弓では取り回しが悪いんですよ。

村にいた時は、親に短弓の使い方を教わってました。ただ、自分も騎士に成ってからは長弓しか使ってなかったので、今回一緒に行く狩人達から教わろうと思っていますが」


「なるほど、森の狩用か」


 イーノ先輩が納得したと頷いていると、もう一人の騎士ザクが話しかけてくる。


「それなら我等も用意した方がいいですかね?」


「そうだな、砦に有る様だったら貰い受ける事ができるか聞いてみよう」


「自分も敬称無しで呼ばせて貰ってもいいですか?」


「気にしなくていいよ。なんだったら名前で呼んでも構わないが?」


「そうですか、ならラグさんと呼ばしてもらいますよ。あと、自分の事も呼び捨てでいいですから。

で、その弓バックの一式はラグさんの特注ですよね」


「ああ、職人街の武具屋で注文した。軽く試してみたが、特注だけに使い勝手は良かったよ」


「職人街の武具屋と言うと、ドワーフのオヤジの店か?それなら、物は間違いないな」


「イーノ先輩は、店の事知ってたんですね。」


「そりゃ、騎士をやってたら皆知ってるだろう。良い武具を用意してくれるが、気に入った者にしか造ってくれない頑固オヤジだからな」


「あのー」


「カルミア様何か有りましたか?」


 騎士達と話していると、まだ華奢な体に革鎧を身に纏う少年が話しかけてくる。


「”槍”殿は、森に狩りに入られるのですか?」


 私の横に並びながら、カルミア様からの話し掛けられる。


「カルミア様も敬称を付けづなくてもよろしいですよ。

初めは共に行く狩人に教わりながらになりますが、森に入って狩りをしようと思っています」


「そうですか、それではわたしも”ラグさん”と呼ばさして貰います。

それで、わたしも弓を用意するので森に付いて行きたいのですが?」


「お待ち下さい!」「何を言われますか!」


 それぞれの騎士からカルミア様に否定の声がかけられる。


「カルミア様、さすがにこの当たりの草原や森と違い獣や魔獣の強さも違います。

簡単に連れて行けるものでもありません」


「ラグの言う通りです。我ら騎士団の者でもあそこの森は入っていくのを躊躇します。

カルミア様も多少の武術の腕はあるでしょうが、さすがに今のままでは無理というものです」


「ですが、わたしも開拓村に行く以上はやはり森の事をもっと知りたいのです」


「カルミア様の言われる事もわかりますが、ここはご自重をお願いしたいです」


「イーノ先輩の言う通りです。今、カルミア様に何かあれば開拓村の今後にかかわります」


「・・・わかりました。今は自重します。

ですが、いつかは森に入る事を認めさせますから」


 カルミア様の言葉に私と騎士達は心配を隠せないのであった。


「森の話は一旦諦めます。ところで、開拓村の事で確認したいことがあるのですが?」


 カルミア様は、とりあえず我等の言葉を聞いて下さったようだ。しかし、無茶をしないよう開拓村に出発する前に騎士達と話した方がいいかも知れない。


「なんでしょうか?私で分かる事ならお話しますが」


「ええ、村の周辺の地図に書かれている川の事です」


「川ですか?確か計画時に説明していた通りですが」


 地図を思い出しながら確認する。


「”腐った川”と呼ばれていると報告を受けていたのですが?」


「はい。川と周囲の河原から絶え間なく何かが腐った臭いがする為、

当時の村人からそう呼ばれていました」


 私の答えを聞いてイーノ先輩が首を傾げる。


「そうだったか?何度か調査団として村周辺の探索をしたが気にならなかったが」


「臭いはするのですが、風がある時は散らされてあまり気にならないかも知れないですね。

ただ、臭いはずっとしているようで敏感な者は気になるようでした」


「そうなのか。報告書を私も見たが詳しくは記されていなかったと思うが?」


「何度か調べたはずですが、臭いだけで特に問題があったとは聞いていませんね」


 ザクも興味を持ったのか私達の話に入ってくる。私がザクに答えていると、カルミア様が当時の川の様子を聞いてきた。


「当時の村には、精霊の力を感じる事が出来る方は居られなかったのですか?

あと、冬に川が氷りずらいとか霧が出やすいとか」


 カルミア様は、かなり真剣に聞いてくる。

当時の村と何度か調査に赴いた時の事を思い出しながら答える。


「うーん。・・・うろ覚えなのですが、

当時の長老が火の精霊の力がわずかに川の水に含まれていると話していたような・・・」


「”槍”よ、それはおかしいのでは?火と水の精霊は交わらないものだと聞いている。

それなら水に炎の精霊の力が入る事は無いのでは」


 ザクが困惑気味に、私へ話しかける。


「確か、川を挟んで比較的に安全な森の奥にある泉から流れていたはずで、

どこにも火の精霊が影響するような場所もなかったはすだ」


「そうですね。イーノ先輩や私と騎士団であそこの泉の確認はしたはずです。

だから、長老の話が何かの勘違いじゃないかと思うのです」


 私の言葉に、イーノ先輩やザクも相槌を打つ。


「泉に行った騎士団の中には、私を含め何人か精霊の力を感知できる騎士がいたはずですが、

火の精霊の力はを感じた者はいなかったと記憶しています」


 頷いて、私もイーノ先輩の言葉に同意の意思を告げる。


「わたしの考えですが、その長老も騎士団の調査も間違っていないのではないかと思うのです。

なので報告書や臭いの件について、もう一度現地の河原を調査したいと思います」


「カルミア様は、何か気付いた点があるのですか?」


「うーん。あると言えばそうなのですが、わたしも本で読んだ事しかないので、

後は現地の調査が済んでからですね。ただ、報告書だけでは解らない事もあるので、

村に住んでいたラグさんに何か気付いたり思い出したりした事がないかと思ったのです」


 あまり力になれなかったのでは?と思いつつ、その後も開拓村の周辺の事等を皆と話しながら砦に向かうのだった。



 カルミア様から開拓村の事を聞かれているラグは元同僚の騎士だった。

出会ったのは、お互い騎士見習の頃だから10年以上の付き合いとなる。

まあ、武器の扱いの腕や騎士としての立場も先に騎士になった自分を直ぐに抜いたが。

それでも自分の事を先輩として敬ってくれる真面目なやつだ。

本来は槍よりも剣の扱いが得意だったが、

王国で不定期に行われる”祭り”の目玉である武闘大会に参加した際に、

得意の剣では称号を得られずに槍の称号が王から与えられた。

確か”剣””斧””槍”の総合で三番手だったらしい。

騎士団で行われた称号獲得の祝いの席で

「上には上がいる、おやじ殿と同じ剣で称号が取れると思っていたが、

まだまだ実力不足だったと鼻を折られてしまった」と笑っていた。

それでも、王国内だけで無く周辺国からも腕自慢がやってくるような大会の中で

称号を得られたのだ十分だろう。

ラグとしては、義父である”剣”の騎士と同じ称号を欲していた様だが。

それでも、称号に恥ずかしくない働きを今までして来ていた。

そんな彼が騎士を辞して新たに開拓村の復興事業に参加する事になった。

国王が王国内の戦争難民問題を解決する為に、

開拓村復興事業を辺境伯に命じられ、

辺境伯のご子息カルミア様が村の代表者として始められる事になり、

俺もザクと共に辺境伯に、カルミア様と村の護衛任務という新たな任務を命じられた。

どんな村を起こす事になるのだろうか、カルミア様には考えがあるようだが。

ラグと同僚のザクはいい奴らだし、

今までかかわりが無かったカルミア様も話して見れば仕え易いお方のようだ。

意外とこの新しい仕事は悪くないかもしれないと、前を行く三人を見ながら思うのだった。




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