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深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者: 済


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22/26

20.相談

「槍殿。着いたようじゃの」


 門の前で腕を組んで先を眺めていると後ろから声を掛けられる。


「ああ、ナダ老。先頭が丘を越えたところですから、今日中に村まで来るのは無理ですね」


「そうじゃの。あれだけの車列が道悪のところを通らねばならんのじゃ、速度も出せんじゃろうて」


「手助けしたいところですが・・・。こちらの護りを疎かにする訳にもいきませんから」


「しかたあるまいて。あちらも判っておろう」


 老人が横まで来て、丘を越えて来る第二陣の先頭が坂を下りだすのを見ている。


「どんな感じですか?」


「ザクも来たのか。・・・先頭が丘を越えたところだ」


「なるほど。あの様子だと着くのは明日になりますね」


「朝に着けば早い方かな?それだと、馬車の最後が着くのは夜になるな」


「こちらも、今日の内に荷降ろしの準備をしておかないといけませんね」


「どうじゃ、伝令を送って向こうの予定を確認してみては」


「足の速い馬で、向わせましょう。誰か!第二陣に伝令を頼む!馬の準備もしておいてくれ」


 さっそく、ザクが兵士達に声を掛けて準備をさせ、向う者に幾つかの指示を出し戻って来た。


「ラグ!主だった者とこれからの予定を再確認しましょう。ナダ老もお願いします」


「わかった」「うむ」




 第一陣の中でそれぞれの職に付く者の代表各が、広場に集まり車座となって話をする。先んじて話し合いをしており、話の大半が明日にも村に到着する第二陣についてになる。皆、自らの仕事を心得ており込み入った話というよりは、到着した馬車の荷を置く場所等の最終確認をしている。そんな中で、鍛冶師のバジジが太く短い腕を上げる。その場に居る者が自分に向いたのを確認してから、上げた手をドワーフらしいあご鬚に持っていき扱きながら話し始める。


「弓の件で話がある。猟師の皆にも聞きながら魔獣用の弓を制作しておるが、やはりワシの知識では限界がある。それにのう、時間も掛かりそうじゃ。どうであろう、代表殿に頼んで弓を作る専門の者を呼ぶか制作方法を手に入れて貰う事はできんか?」


 物作りに関しては、高い誇りを持つドワーフが弱音を吐くという珍しい状況になった。


「バジジ殿、魔獣の素材等も優先的にお渡ししているが、それでも上手くいかないか?」


「もともと、ワシは武具を製作する事を生業にしておらんからな。それでも、調整や修復はできるが、物が大型の魔獣にも通用する弓となると話が変わる。先にも言うたが、猟師の皆にも作り方を聞いたりして作っておるが、中々に難しい。時間を掛ければ、何時かは納得した物が出来るであろうが・・・」


「そうだな、我々には時間も余り無いのも事実だ。猟師の皆はどうだ?試作の弓を試しているのだろう」


 話を着ていたザクが、猟師の代表で来ているリヨウを筆頭に参加している何人かの猟師に確認を取る。


「よろしいですか?」


 ザクが了承したのを見てから、猟師仲間の顔を見渡しリヨウが代表して話し出す。


「バジジ殿の試作の弓ですが、前に使っていた物に比べてかなり癖がありますが・・・。対魔獣用の弓としては十分な威力がありましたが、その分壊れやすいと思います。魔獣と相対ししている時に壊れるのでは・・・。ナダ老は如何です?」


「そうじゃな。ワシとしては、魔獣の素材を用いて槍殿の弓が再現できれば良いのじゃないかと思うんじゃが」


「それは、いいですね!槍殿の弓は扱いやすく丈夫にできていました」


「なるほど。ラグ、あの弓は職人街の武具屋のオヤジが拵えた物でしたよね・」


「それで合っている。それなら、ザクは戻れば一度辺境伯に報告に行くのだろう。その時に、

オヤジに相談してみたらどうだ。ザクならオヤジの事も知っているだろう。・・・そうだ、その時に今回捕れた魔獣の素材を、持っていけば話が早くなるのでは?それなら、私も手紙をしたためよう」


「なるほど。私も面識はありますが・・・。そうですね、カルミア様が到着しだいそこのところも相談しましょう。先程、ラグが言った通り素材を持って行ってみましょうか。そうだ、リヨウは猟師達と魔獣素材の目利きをお願いします。バジジ殿には、如何いった製作の過程が知りたいのか手紙を書いて下さい。私ではその辺が判らないので」


「了解しました」「わかった」リヨウとナダ老がそれぞれに返事を返した。


「ザク殿、ワシも素材の確認に付いていこうと思う。手紙は、出発までに間に合わそう」


「それでかまいません。お願いします」


 ザクが了承すると、バジジは先に資材や素材を確保してある倉庫に向かった猟師達の跡を追う。


「リヨウよ、確か革にした物がそれなりにあったはずじゃな」


「ええ、余った物も多くあります」


「まてまて。それなりに良い素材を用意せねば相手が気を悪くするかも知れん。素材は厳選して持って行かせよう」


 バジジも加わり、騒々しく去って行くのを見届け残った者達で続けて話をする。


「なぁ、ザク。カルミア様へ話を通すのも必要だが・・・。この際、辺境伯にも相談しておけば良いのでは」


「そうだなあ、良い武具になるのなら興味を持って頂けるかも知れないな」


「そうだろう。魔獣の素材で出来た対魔獣用の弓は、村の為にもそれなりの量を作る事になる。村で獲れる素材で良い物ができるのなら、辺境伯の許可を得て騎士団や格村の防衛用に買い取って貰えるかも知れん」


「わかった。カルミア様の許しがあれば、戻った際に辺境伯への報告と共に話してみよう」


「ザクには余計な手間を取らせるが宜しく頼む」


「かまいませんよ。どちらにしても一度は報告に戻るんだから。後は、武具屋のオヤジが納得して弓を制作してくれるのか、それに弓を作るにしてもどれだけ時間が掛かるのか」


「そこは、稀な素材とザクの話術でオヤジを丸め込んでくれ。それに、製作に時間が掛かるのは仕方がない。できれば見本が一張でもあれば参考にしてバジジが作る助けになるだろうが、製作図の様な物があればそれで何とかしてもらうか」


「できれば製作図は先に貰える様にしよう。まあ、弓に関しては第三陣が出るぎりぎりまで待つことにするよ。無理なら・・・そうだな、完成したら如何にかして、ここまで届けて貰える様手配しよう。それにしても、オヤジを丸め込む話といい、難しい事ばかりな気がしてきたよ?」


 ザクが珍しく困った顔でこちらを見ている。


「それだけ、ザクを頼りにしているのさ」


「まったく、口ではどうとでも言えるだろうさ」


 少し投げやりに言うザクを見ながら思う。

 騎士ザクとは、騎士団に居た時にはそれ程の交流は無かったが、街から続く旅を経て騎士としての腕だけじゃなく、調整役や仲介者としての信頼も高まったと感じている。

 

「さて、弓の件はここまでにして他にも明日までに決めておく事は有るだろう。残った者で話して置くか」


 私がそう言うと、幾つか取り決めておく事や相談事が持ち掛けられる。それらを纏め、急ぎでない者は後日、カルミア様も入れて決めていく事で話が進んでいく。




 集まった者達が、皆それぞれの仕事に戻って行ったのを見送り、ラグと二人で先程の話について検討する事にした。


「先に話をしていた筈だが、意外と皆からの要望が多かったな」


「それだけ。皆が真剣に村の事を考えてくれていると思いましょう」


「そうだな。しかし、早めに栽培面積を広げたいと言うのは・・・。ザクは如何思った?」


「うーん・・・うれしい報告では有るのですが。農地の開墾する土地を確認している者からすると、今のままでは手狭になるとか?農夫達のやる気が出ている事は有り難い事ですが」


「ああ。先日から本腰を入れて調査していたんだが、農夫達が想像していた以上に土壌が肥えていて、さらに開墾しやすい土地らしい。それ自体はうれしい事なんだが・・・。しかし、広げるとしても本格的に川を越えて南に出なきゃいかんし・・・。そうなると、魔獣への対策だけでなく普通に獣への対応も必要になるし。当面は、自分達の食い扶持分の確保だけでいいと思っていたんだが」


「まあ、もともと南の開拓は計画どうりですから・・・。ただ、想像以上の広さですから」


「カルミア様には、着いて早々にうれしい報告が出来るな。ただ、広すぎて色々と悩ませそうだが」


「確かに、うれしい悩みでしょうが。ラグも言いましたが、ただ広げるだけでは済まない話ですから」


「そうなんだ。どういう形で護りを固めながら、安全に土地を確保できるかだからな」


「第三陣の為に、準備が出来次第に多くの兵士達を連れて砦に戻る事になりますし、そこで安全を確保して土地を広げるというのは・・・」


「そうなんだ。農夫達の気持も分かるんだが・・・。人手も少なくなるから、ここで無茶をして土地を確保しても如何なんだと思ってはいるが」


「最終決断は、カルミア様にお願いするしかないですかね?私達はその為の判断材料を出来るだけ多く纏めましょう」


「あまりカルミア様への負担は増やしたくないんだが・・・。そうだな、ザクの言う通り私達は、カルミア様を補佐する為に働くか」


 若いカルミア様に、村の事で多くの決断を任せねばいけない事に心苦しく思う。しかし、この村の代表として立ってもらう為には仕方がないか。

 この後も、ザクと話し合われた内容について精査しながら、カルミア様が率いる第二陣を待つことになった。

読んで下さり本当にありがとう御座います。

誤字脱字等が有りましたらご指摘していただくと助かります。


これからもよろしくお願いします。



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