↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者: 済


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/26

18.壁と門

 後続の馬車列を待ちながら、数名の兵士と猟師の一人が川に降りて、狩る事の出来た大鹿の魔獣を解体している。ザクには、状況を報告する為に伝令を送っておいた。

 門の前では、怪我をした兵士の治療をしながら安全を確保している部隊と、猟師のリヨウと私を中心として村の外周の警戒と壁の状態を確認する部隊に分かれて行動していた。


「ここまで見てみたが、森に近い所で破損している場所は無さそうだが・・・。思った以上に、損傷が見られるな」


「槍殿は、何度か来られているのですよね?やはり、変わっていますか」


「ああ、何度か。それでも、一番近くて・・・三年前か。一応、騎士団は訓練と調査の為に、毎年交代で来るようになっていて、その報告書も都度確認しているんだが。外周の壁は確認の対象だから損傷があれば必ず報告が上がるし修理も行う。最近は、村の外周で魔獣の痕跡は見られないと報告が続いていた。それが、周辺の痕跡どころか壁まで傷つけられている。これから、人が増えることを考えると気がかりだ」


「そうですね。周囲、特に森の中で問題がないか早めに確認しておきたいですね。それと、先程の鹿型の狩りで思ったのですが、やはり私達が使う弓では簡単には仕留められないのが問題ですね。途中で倒した狼型なら通用しましたが・・・。少し大型の魔獣になると、今のままでは牽制程度にしか使えません」


「そうか。私も街で弓を新調したんだが・・・。早目に試した方がいいか。まあ、私の場合は基本から学び直さないといけないんだが」


「それなら、我々がお教えしますよ。ただ、しばらくは私達も弓矢に罠など試行錯誤が続くでしょうね。息子達も含めて皆で魔獣の狩りについて慣れる必要も出てきましたが。ところで、砦から移動の間では弓は使われてなかったはずですが、用意されていたのですね」


「街から砦に移動する間に何度か使ったが・・・昔の様に出来なかったし、ここまでの移動では、猟師の皆がいたので使う必要がなかったからな。ああ、魔獣の件は・・・ナダ老とも相談だな。我等の中で一番の経験者だ、何か考えが有るかも知れない」


「ナダ老なら、解決案が有るかも知れませんね。何度か故郷でも、それなりに魔獣と対峙したことが有るでしょうし。・・・そうだ、槍殿のお時間がある時に、先程言われていた弓を見せて貰っても?」


「問題ないが。そんなに珍し物じゃないと思うぞ。昔、この地で父と兄や他の猟師達が使っていた物を思い出しながら制作した弓と、騎士団で使っていた長弓に似せた物の二種類用意したが、皆が使っている物とそれほど違いがある様に見えないが?」


「そうですか、この地の猟師達が使っていた弓ですか・・・。ぜひ拝見させて下さい。何が切っ掛けになるかも知れないですから」


「わかった。そういう事なら、なるべく早く用意するよ」


 リヨウと話をしながら壁の損傷と森の様子を遠目に確認し、そろそろ後続も村の南門に到着する頃合いだろうと戻る事にした。




「2人とも、怪我の具合はどうだ?」


「ああ、槍殿。もう大丈夫ですよ。骨も折れていませんし、かすり傷ですよ」


「無理するなよ。まだ、これから働いてもらわないといけないからな」


「わかりました」


「今は休んでいてくれ。それで、後続はまだ見えていないな」


「急いではいるでしょうが、警戒しながらですから時間が掛かるのは仕方ないでしょう。まあ、もうじきでしょう」


怪我をした兵士達の容態を確認し、振り返って橋の先を見ながら話をしていると、村の外周の壁を共に確認していたリヨウが話に入って来る。


「先に門を開けて中の様子を確認しますか?」


「そうだな、門は開放しよう。外部からの侵入は無さそうだし怪我人も中に入れようか。念の為に、何人か連れて中の状態を探る事にする。済まないが、何人かここの確保と警戒の為に残ってくれ」


「槍殿。それなら、私が残りましょう」


「リヨウ、頼みます。あとは、残る人数は如何するか」


「それなら、もうじき解体作業も終わるでしょうから、上がって来た者達と残りましょう」


「わかった。・・・兵士からも何人か残ってくれ。解体した獲物も門の中に入れておいてくれ。それじゃあ、門を開けるぞ」


 私と数人の兵士で、外側から門扉を固定している落し棒を引き上げ、門を村の内側へ向け押し開いて行く。しばらく使われていない門扉は、軋む音を立てながら開門していく。

 人が通れる程度、門扉を開けたところで私を先頭に門を潜り抜ける。後ろには、兵士達とに仲間の肩を借りた怪我人と猟師達が続いてくる。


「よし。怪我人と付き添いの者は、門の横で待っていてくれ。残りの者は、別れて探索を開始してくれ。何があるかわからないから、くれぐれも警戒を緩めるなよ」


「了解しました。それでは、私達は左回りに移動します」


「よりしく頼む」


 こうして、二手に分かれて村の中を探索していく。




「槍殿は、この村の出身なのですね。やはり、懐かしく思うものですか?」


 私と共に移動している若い兵士が声を掛けて来る。


「ああ。だが、騎士になって、たびたび訓練や調査団の護衛で帰って来ているから、今はそれほど懐かしむ感じは無いな。それに、私が住んでいた頃に比べて、かなり村自体に手が入っているのもでかいな」


「そうですか。やはり当時のままとはいかないのですね」


「そのようだ。魔獣の襲撃で建物もかなりの被害があったらしい。多くが新しく建て替えられているから、建物に対しては懐かしく思う事はないな。それより、村を遠目に見た時のほうがあったと思う」


「そうなのですね。・・・しかし、それほどの被害が」


「ああ。君は、初めてここに来たんだな」


「はい。今、槍殿の話を聞いて、より危険を身近に感じました」


「そうか。それじゃあ、いい経験をしているな。ここまで種類が有り数も多い魔獣が出現する地は周辺の国でも少ないと言われている。君が生きて任務を達成して帰る事が出来れば、自らの実力を証明できるさ。」


「そうなのでしょうか?でも、自分は兵士として身を立てたいと思っているので、槍殿が言われた様に生きて任務の達成してみせますよ!」


 若い兵士が私と話しているのを、年配の兵士達は少し笑いながら温かく見ていた。

 村の壁越しに移動して行くと、何箇所かで崩される程ではないが、それでも外からの衝撃で傷んでいる所が見られた。これは、出来るだけ早く修繕と補強等を行った方がいいだろうと思われた。

 そうして、兵達と確認作業を行っていると、左回りで移動していた部隊と合流をした。


「早かったな」


「こちらは、北面以外は異常なかったですから。そちらは如何でしたか?」


「ああ。やはり、北の森に近いせいか思った以上に細かい損傷があった。今迄の調査報告では、ここまで損傷はなかったと思うが・・・。合流したところ済まないが、このまま北面を実際に見ておきたい」


「了解しました。全員で行く事も無いでしょうから、半分は南の門に戻ってもらいましょう」


「それでは、私の部隊はそのまま壁伝いに南に戻ってくれ。ああ、もし後続が到着しているようなら呼びに来てくれ」


「わかりました。それでは、我等は念の為、壁を再確認しながら戻ります」


「ああ、頼む。それじゃあ北面に向かうか。」


 ここまで一緒に壁の確認作業をしていた兵士達と別れ、合流した部隊と北面に向かうことにした。




「やはり損傷は、北門の周辺が特に多いな」


「ええ、北面の壁全体に損傷を見受けられますが、特に門とその周囲が酷いですね」


「村に人がいる訳でもないのに・・・森に何かあったかな?」


「判りませんが。私も調査報告には目を通していましたが、無人の村を襲撃するなんて話は聞いた事ありません」


「そうだな。村が壊滅した時と状況が違う、早めに森の調査をした方がいいな。それに、修復だけじゃなく補強と物見用の櫓も幾つか造る必要があるな」


「そうおもいます。槍殿の指摘通り、防衛の為に今日からでも取りかかった方がいいでしょうね」


「理想は全ての面に櫓を作りたいが・・・当面は、北と東を重点的に防御する事を考えないといけないか?」


「特に北門の防御を、早急に対応する必要があるかと」


「後続が到着したら相談しよう。まあ、ザクも直ぐに対策を練ってくれると思うが。兎に角、それまでは兵士と猟師を中心に警戒するしかないか。皆には、せっかく村に着いたところで無理を強いる事になるが」


「それも兵士の仕事ですから。それに、早めに片付ければ後が楽になりますから。今はょう我慢のしどころでしょう」


「そう言ってもらえると助かる」


 その後、皆で門や壁の修復について意見を出し合い櫓の設置場所を考えていると、一人の兵士がこちらに走って来る。どうやら、後続が到着したようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。